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歌声がつむぐ選択肢  作者: 一桃
19/66

出会いが全て

こんばんは。

日常通り、更新しています。


オタクシリーズも、ここまでくると描きたくなり、わちゃわちゃ書きます。順番は後書きのとおりです。

        ※


 こんな時の仕草だけ、妙に大人びて見えるルヴィは、後ろ手に手を組んだままこちらをふりかえり、上目づかいにこっちを見てきた。


 聞きたかった。

 どうしてレイトリージェが自害したのか。


 でも。

 聞かなくともその理由を知っている冷淡な自分は、自分が傷つかないように興味がないふりをする。


 真実は伏せていれば幸せなこともある。

 聞かなければ、好き勝手な解釈ができるので、問わない方が幸せなのかとも思う。


 けれどサナレスは自分に厳しかった。


「聞かせてもらおうか?」

 淡々と自分の罪悪と向かい合おうとした。


 感情をむき出しにしてきたルビィは、想像した通りの言葉を繋いだ。


「あんたのせい」

 想像通りすぎて、サナレスは微動だにしない。


「あんたがムーブルージェ様だけだと言っていたのに、別の女に心変わりしたって」

 やはりレイトリージェは気がついていた。

 その鋭さに敬服する。


 サナレス自身気がついていなかったことだ。


 ムーブルージェを失い、ルカも側に居なくなり、生きる意味を見失ってラーディア一族に鎮座ちんざし続けたと言うのに、リンフィーナという赤子の命をこの胸に抱き寄せた時、再び人生が動き出した。


 サナレスすら気が付かなかったのに。

 レイトリージェは最後に会ったあの夜に気がついた。


 サナレスがムーブルージェ以上に、リンフィーナという命の子育てにのめり込んでしまったこと。

 ルカとレイトリージェの子供であるロイの時はそうならず、リンフィーナであるからサナレスの心が動いていったことに彼女は気がついていたのだ。


「そうか……。本当にわたしはわがままな男だ」

 ムーブルージェ以外を拒絶した自分が、初めて違う人に側にいて欲しいと思った。

 けれど自分の気持ちに正直なサナレスは、後悔したくないと思っていた。


「それでお前は、わたしを敵視するのか?」

「レイトリージェ様はそう望まなかった。ーー私なら、レイトリージェ様が叶えられなかったことを叶えられるかもしれないっておっしゃられてーー、私に期待されていた」


 レイトリージェは、彼女の姉ムーブルージェに生き写しな彼女なら、自分の気持ちをひくとでも思ったのだろうか。


 勘違いだ。

 でもルージェはそれを間に受けた。


 容姿は確かに、過去を彷彿ほうふつとさせてくる。

 少なくともサナレスは、過去の印象の積み重ねで、彼女を目で追ってしまう。ルージェにムーブルージェを重ねてしまう。


 昨夜は心を奪われているという意識すら持たないまま、その人に夢中になってしまいそうになった。


 歌っていると特に錯覚する。


 生体がつむぐ声と音感が似ている。

 天使の歌声。初めてフェリシア公爵家で、サナレスは天使が歌う声を聞いた。それが出会いだった。振り返った時にそこにムーブルージェがいた。


 でも過去の記憶、感情は上書きされていた。

 サナレスが他の女性のことを考えた時に泣き出す幼い赤子が、サナレスを過去から現実に引き戻してきたのだ。

「むーー!」

 自分だけをかってくれと、リンフィーナは正直だった。


「あー!」

 初めて彼女が発した言葉とも言えない発話は、声なのに音だった。

 全身がザワザワと反応した。


『妹として養育してもらえないか?』

 その後ジウスが発した声は、今ではもう言霊になっている。

『御意』

 サナレスは引き受けたのだ。


 大神ジウスの銀色の髪に絡みつきながら、関節すら判別できない柔らかい手を、真っ直ぐに伸ばしてきた、魅了眼のリンフィーナ。


 蒼い目を持つ小さな生命に、サナレスは出会った。

 二人の出会いは、サナレスの原動力を決める。時を止めた絵のようで、目をつむるといつでも鮮やかに蘇ってくるのだ。


 完全に魅了された。

 出会ったその瞬間にといえばドラマチックだが、自分がリンフィーナに対して積み重ねてきた感情は、どうやらもう刹那的せつなてきなものではないらしい。


 孤独だった自分の髪の毛を無造作につかむ赤子の手。

 完全にこちらを信頼してくる、透明な青い眼差し。


 それに彼女は、自分がいなければ生きていられない命だった。


 サナレスは過去に生きることに絶望し、自分の命を捨ててしまいたいと思いながら命をながらえてきたというのに、なぜか「つなぎたい命」がここにある。


 自分が育てなければ彼女はどうなってしまうのか?


 火がついたように泣くし、すぐにでもこの世を諦める。

 サナレスは自らの中に力が湧くようになって、前をむき始め、

 ーーそして、リンフィーナを愛した。


感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後

5「炎上舞台」

5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」

6「魔女裁判後の日常」

7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

9「脱冥府しても、また冥府」

10「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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