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歌声がつむぐ選択肢  作者: 一桃
18/66

遺言

こんばんは。

この話「敗れた夢の先は……」を呼んでいただいていないと、わかっていただけない。


長編です。私が書いているもの全て、つながった世界観です。


せめて読み順に番号振るかなぁ。今回からの後書きに番号つけてみます。

         ※


『おまえが革命軍を率いるなら、私は陰にひそみ協調しよう』

 太母ラァが言ったことは、サナレスにとって何も魅力的ではなかったけれど、ルカとレイトリージェの忘れ形見となったロイの存在が大きく、結果サナレスをその場に引き止めることになっていた。


 一人目立たずに行動することに慣れていたはずだが、集団の中に身を置くと言うのも、楽に身を隠せるものだ。


 アルス大陸ラーディオヌ一族の王都タロを焼き払ったサナレスは、お尋ね者になっており、完全にラーディオヌ一族を敵に回していた。追手はおそらく呪術師たちになる。


 ま、アセスがいないとなると三流呪術師ばっかりだ。

 しかもアセスの私兵は、過去アセスのラバースに死滅させられており、今のラーディオヌ一族の兵力は大したことはなかった。


 何もルカやラァに護ってもらう必要はない。

 そう思いながらも革命軍に留まったサナレスは、軍議に参加するよう誘われた。


「ロイ兄さんが呼んでる」

 サナレスの部屋の扉を無造作に開け放ち、頬を膨らませた少女は、腕を組んでこちらを睨んでいた。

 ルビィは夜這いをかけてきたあの日から、彼女をからかったことを怒ってしまっている。サナレスは吐息をついた。


 行くと返事した覚えはないが、状況把握は大切かもしれないと、サナレスは重い腰を上げる。

「そうか。案内してくれるか?」

「ロイ兄さんに頼まれたから! ーー仕方なく案内してあげる!」


 ついと視線を逸らして目を合わせようとしない少女の反応が幼くて、サナレスは目を細めた。柔らかな白金が覆う横顔は、面影がムーブルージェに、唐突に怒り出す感情の激しさはレイトリージェによく似ていて懐かしい。


 軍議場所は暗い階段で地下に降りた。

 地下はラァによる結界が張られているのだとルカが説明していたかな。だからラーディオヌ一族に狙われるサナレスにも地下での暮らしを勧めてきたくらいだ。


 残念ながら日の光が照らないところに、好んで行く性格ではない。

 暗いところにいるだけで、性格まで暗くなりそうだとサナレスは鼻を鳴らす。


「やはり地下なんだな……」

 ぼやくとルヴィは「定例だ」と言った。


「若い娘が革命軍などと……、もっと楽しんだらどうなのだ?」

「あなた、ラーディア一族の貴族でいて、女が楽しめるなんて思ってる!? そう思ってるならガッカリなんだけど」

 なるほど、とサナレスは納得する。


 ラーディア一族は偏見に塗れた王族貴族が領地を占める。呪術を疎んじ、女性を蔑視するという、わけのわからない偏見が世襲制度から残っていた。


「あんたのこと、少しだけ良いと思ったところは、王族らしからぬ王族だったってことなんだから、これ以上ガッカリさせないで!」

 暗い廊下を慣れた足取りで進んでいくルヴィの小さな背中に、レイトリージェの人生が見えた気がして、サナレスは問いかけた。


「公爵家を継ぐものでも、同じように不遇なのかな?」

「それはレイトリージェ様のこと? つらくなかったら死なないわよ。ラーディア一族で、死にたいとか言って他人の気をひく女の人は割と見てきたけれど、レイトリージェ様は本当におつらかったのだと思う」

「……。私にもっとできることがあったのだろうか?」


 ルージェは一瞬立ち止まり、振り返ったかと思うとこちらをまた睨んできた。


「できること、なかったよ。だって貴方は、生きている人のことより、死んだ人をずっと求めていたんだから、きっと何もできなかった!」


 自覚があるからこそ。結構こたえる、きつい言葉だ。

 でもその姿勢はムーブルージェがサナレスを一人にしてこの世を去ってから、一貫して変わらずにいたので、まさかレイトリージェが死ぬとは思ってもみなかった。


「私、レイトリージェ様が死ぬ前日、話したんだよね。たぶんレイトリージェ様、私に遺言を刻んで行った。右も左もわからない子供だったけれど、今ならその遺言の意味、わかるんだよね」

 ルヴィは後ろ手に手を組んで、こちらを見詰めてきて、「聞きたい?」と冷たく笑った。


 サナレスは歩みを止めた。

感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

1「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

2「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

3「封じられた魂」前・4「契約の代償」後

5「炎上舞台」

5と同時進行「ラーディオヌの秘宝」

6「魔女裁判後の日常」

7「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

8「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

9「脱冥府しても、また冥府」

10「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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