持ち運びできるミイラ?
こんばんは。
楽しみで書いています。
お付き合いよろしくお願いします。
小説家になりたいなぁ。何だかこのなろうで叶った気分。いろんな方が立ち寄ってくれるんですよね。
※
声を無くすほど驚いているナンスに対して、勝手知ったる傍若無人になったソフィアは、さっさと身支度を整えていた。
「ナンス、久しぶりだな。わたしはリンフィーナではないからな。言い出したらきかないことぐらい、おまえはわかっているだろう? 自己紹介した方がいいかな?」
ナンスはつかの間絶句していたが、ごくと息を呑んで状況を把握してきた。
頭は悪くない。
「もう慣れましたけどねーー。リンフィーナではない人、この状況で普通私に全てを任せて、アセス様を放っておきますか!?」
「アセスなどどうでもいい。私はサナレスを探したい」
他人のために自己主張を弱めることなど知らないソフィアは、望むままを口にしてそれを実行しようとしていた。
「探して、どうされるんです?」
ナンスは大体において口が悪い。無理やり取りつくろって丁寧な口調で対話してきていても、彼は数秒前明らかにチッと舌打ちして、自分の行動を非難していた。
「ーーどうする、とか多分貴方はわからないんですねぇ。貴方ってたぶん、サナレス殿下が好きなだけだ」
生意気な小僧にそう言われ、ソフィアは口の端をひきつらせた。
「この世の価値を決めているのは私だ。私がサナレスに会うことを望むなら、サナレスには価値があると言うだけのことだ」
好き嫌いでこの世は治らない。
むしろ好き嫌いで狂っていくのだと、馬鹿な小僧に教えたくなった。
人が人に好悪をつけた時点で、世界は変わるのだ。
出会いという不確かな壊れかけた歯車を回す。
「それで、どうやってここを出たらいい?」
「そんな策もなく、貴方ずいぶん偉そうですよね……。助けてほしいと言えないんですか?
「助けてほしいだと? アセスが死んだ今であれば、全て崩壊させて出てもいいが、犠牲者は最小限にとどめてやろうと慈悲の心で聞いているだけだ」
最悪全部壊して出ていくだけ。
そう言うと、ナンスは幼顔でこれでもかというほど渋い顔をする。
「まず……ね。アセス様……死んでませんって」
こいつもかと、ソフィアは項垂れた。
最近、冥府に行っていることを軽んじている者が多い。
旅行気分なのか?
冥府はそこらへんの観光スポットとは違うのだけれど、とソフィアは思った。
アセスは生と死の間にいる。限りなく死に近いところに、自ら出向いって行ったのだ。
戻ってくるという確信は、いったいどうやって生まれるのだろうか。
「魂が抜けた肉体が維持できる期限には限りがある。人も生物なんでね。腐敗させないようにする技術は過去から研究されていたようだが、ミイラって言ったかな? それって見た目だけ腐敗しないようにってのが大半で、魂は戻る先を失っていった」
だからアセスが戻るなんて考えても無駄なのだと思うソフィアの横で、ナンスはどうしてか嬉しそうに顔を輝かせた。
「ミイラ! さすがはアセス様!!」
ナンスはアセスが先ほどまで匂いを嗅いで分別していった薬品を机の上に並べ直して、大きくうなづいている。
「やはりアセス様は、戻られるつもりです」
ソフィアにはわからなかったけれど、ナンスは「貴方もいいコトを言うじゃないですか。サナレスから事前に知らされていたんですか?」などと満面の笑だ。
「アセス様、ずっと防腐剤を調合していらしたようです。自らの体が腐らないように」
「はぁ? あいつは仮死状態になる薬を調合していた」
「いえ。違いますよ。仮死状態になるのは、もとより処刑されると推定されていたので、その先で自らの肉体がどう腐らないかという薬を調合していたんです」
織り込み済みかと、ソフィアは唸った。
ナンスはアセスが処刑台に向かったことでさえ、承諾しているのだ。そしてその先を、二人で考えていたらしい。
「無茶しすぎなんですよね。普通ミイラになる計画立てるバカっている?」
ーーいや、と思った。
このサイコパスならあり得ることだと思ってしまえるほど、ソフィアのアセスに対する印象がゆがんでいた。
「このミイラ、私は連れて行かない。おまえ何とかしておけ」
「いえ。アセス様はリンフィーナ様と共にいることを望まれておりましたので、身代わりを用意して、この身体は私が運び、貴方に同行させていただきますよ」
一緒に行かないなら、何のためのミイラですか?
と言ってくる。
ミイラって移動手段なかったはずだけれど、ナンスは最近腕力も鍛えているから大丈夫だと、訳のわからない理由を行った。
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「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢
「封じられた魂」前・「契約の代償」後
「炎上舞台」
「ラーディオヌの秘宝」
「魔女裁判後の日常」
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「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」
「脱冥府しても、また冥府」
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