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歌声がつむぐ選択肢  作者: 一桃
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変わらない思い

こんばんは。

仕事とフギュア造形に夢中になり、このところ小説がお留守になってました!


リペイントは簡単ですが、小説のキャラを粘土から造形して色塗るってところまでやると、まぁまぁ時間がかかります。そんな毎日です。

        ※


 ゾゾゾゾ……。

 冥府の番人の二人組を思い出したソフィアはそれだけで寒気がした。けれどアセスという男が言うことが本当なら、事態はもっと深刻だ。


 人差し指で額をグリグリしながら、まとまらない考えを整理しようとするが、それ以上の嫌悪が悪寒になって襲ってくる。周囲の温度がマイナス何度になっているのかと錯覚するほど下がっているように思える、心に体感がある。


 それは疫病も流行るし、国と国が戦争にだってなるはずだ。

 目に見えない亡者が、すでにこの国に流れ出てくる門が開いて閉まったと言うことだ。


「おまえ、今すぐ殺してやろうか?

 この際責任を取ってもらいたい気持ちで、ソフィアは真剣に提案した。仮死状態になる方法を模索するなど生ぬるい。どうしてサナレスがこの男が処刑されるのを止めてしまったのかと、サナレスにだって掴みかかりたい気分になった。


「リンフィーナではないとしても、彼女の口からそういう発言をされると、やはりあまり嬉しくはない……」

 おまえの気持ちは聞いていないよ。


「何が急務かってことを認識してほしいだけだが……」

「そうか」

 アセスは苦笑していた。先ほどから冥府へ戻る手段を模索しているアセスに対して、せっかちな男だと思っていたけれど、今となってはその行為自体が、何を悠長なことをしているのかと尻を叩きたいぐらいの気持ちになる。


 ーーいや。

 しかしソフィアは思いとどまった。


 この世界など滅んでしまえばいいと願っていた。

 この男が冥府の管理者を冥府から吹き飛ばして別次元に飛ばしてしまった。そして世界の歪みはもう止められないところにまで来ていると言うのであれば、放っておけば自分が呪った世界は滅亡するのではないか、と思った。

 何もサナレスを意のままに扱わずとも、この世は自ずと滅びに向かっているーー。


 ほくそ笑んだソフィアは、アセスに真向かった。

「まあいい。監視者よりも、今はサナレスを追おう。おまえも探すのを手伝え」

 ころっと意見を変えたソフィアをアセスは無言で見つめてきた。そして喉を鳴らして失笑する。


「ーー貴方、わかりやすいですね」

「はぁ?」

「急いだ方が良さそうです」

 どうにもこいつは苦手だった。

 素直というか、全ての反応に率直で、歪み切ったソフィアの正反対を行く存在だと思ってしまった。


「私は予定通り冥府に向かいます。貴方が付いてくるかどうかはもう一度言いますね、ソフィア貴方の勝手です。でも一つだけ言いますね。今サナレスはこの世界を是正して統治することをお考えでしょうが、冥府による影響があることも彼は視野に入れています。私が冥府で仕事できなければ、たぶんそれは後に、サナレスの仕事になるんでしょうね」


 ぐの音も出ないほど黙ったので、無口なアセスと二人でいる空間はしんと静かになってしまった。


「さて、先ほどの話に戻るのですが」

 どの話に戻るんだよ、とソフィアは眉間に皺を寄せる。


「貴方はとても表情豊かですね。まるでリンフィーナのように見えることがあります」

 何を言っているのかとさらにイライラと口をへの字にしていたが、アセスは相変わらず優雅に微笑んでいた。


「先ほどの話って!?」

「私のことを、今すぐ殺してやろうかって話ですよ」

「は?」

「考えたのです。確かに貴方が言うように、冥府の監視者が不在なのであれば、この世に起きる災厄を止めるには冥府に行って、今すぐ冥府の監視者を呼び戻す、それができないのであればその代わりを果たすと言うのが、今できる現実的な状況打破ですよね」


 きっとソフィアは、このとき間抜けな顔をさらした自覚がある。

「はぁ?」


「刻一刻と迫るこの世界への災厄を防ぐには、それが一番手っ取り早いと、貴方が教えてくれたのではないですか? 私はもう少しだけ漠然と、冥府を変えなければならない。それからヨアズの後継が必要だと言うぐらいだったのですが、ヨアズの寿命より差し迫った脅威があり、私がその引き金になったということは理解しましたので」

「で、どうして殺せって話になる?」

「急ぐからです」

「おまえ、この世に戻る未練はないのか!?」


 アセスはなぜか笑っていた。

「いえ。例えばもし、貴方が私を本気で殺そうとしても、リンフィーナはそれを半減させるでしょう。その可能性に賭けます。彼女は私を殺さない」


 確信めいた言葉に、ソフィアは絶句した。

 なんて自信だ。呆れるほどこの男はリンフィーナの意識を感じている。


「この薬品まみれの薬剤を調合し、仮死状態を作るより、リンフィーナを内在する貴方に半殺しにされた方が早いし……、確実でしょう」

「ーー何が確実だって?」

 もしリンフィーナが目覚めず、自分が思うままにアセスの命を奪ったなら。

「死ぬんだけど?」


「そうなった時は、どちらにしてもリンフィーナは私よりサナレスを選ぶということなので、きっぱり諦めます」

「諦める? 死ぬって? え?」


 アセスは手を伸ばし、自分の髪に触れる。いやリンフィーナの髪に触れているようだった。

 頬にかかる髪を彼の手が伸びて、くすぐったい感覚と共に耳に掛けられた。


「先ほどはすみません、貴方の容姿に全く興味がないなんて言ってしまい……。反省しております。長い髪の手入れって、本当に大変なんですね」

 髪の手入れなどと、アセスは訳のわからないことを言ってくる。

「貴方の銀色の髪はいつもとても私にとって、綺麗で……眩しいくらいです。リンフィーナ、私は貴方にいつでも、ーー初めて星林の神殿で出会った幼少時代からずっと、そばにいてほしいと求めてしまっています」


感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー

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