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歌声がつむぐ選択肢  作者: 一桃
12/66

双方遠慮した結末って

書きたらず、書いていてUPする賞です。

明日は金曜日、サラリーマンにとっては少しだけ嬉しい人が多いのかも。


体力温存、あと1日。

        ※


 ブレーキがかからない乗り物、それがソフィアがアセスに下した評価で、その乗り物は恐ろしく見た目が綺麗なので、想像以上の馬力を備えているらしい。


 サナレス・アルス・ラーディアが、自分のラバースであるリンフィーナのために、婚約者に添えた男は、とうていソフィアの言うことを聞くような器ではなかった。


「あんた……、人からの願い事とか聞き入れたことないだろう?」

「願いーー、それは交渉という意味ですか? 私は常に交渉には応じますよ」

 やっぱりダメだとソフィアは肩を落としていた。


 サナレスを探したいと願い出たとしても、この男は受け入れない。双方交換できる利害関係が一致しなければ、彼は気まぐれでも起こそうとはしない限り動こうとしない性質だ。


「貴方はどうしてそうも、サナレスを追いたいのです?」

 逆に問われることになり、ソフィアは自分の気持ちを見つめ直す。


「ーー私は約束した……。私の思いを晴らすためにサナレスは私が思うように動くと……。ーーそれを見届けたいからだ」

 そう。見れていないから、サナレスは何をやっているのかわかったものではない。


 ふんとアセスは冷たい目尻の端を少し上げる。

「貴方はサナレスが約束したことを破るような人だと思っているのですか?」

「ーーいや。それはない……」

 アセスは吐息をついて自分を見つめる。


「だったらそのようにサナレスの後を追い回さなくともいいのではないか、と私は思いますけれど」

 言われてみればその通り。

 けれどソフィアとして覚醒してから、自分はずっとサナレスの存在を近くに感じたいと思っており、リンフィーナの人格がこの体を支配していたとしても、サナレスが近くにいることで精神が安定していた……?


「それはーー、リンフィーナの意識が私に流れ込んでいるからだと思う。このサナレス至上主義のリンフィーナが、私に考えを押し付けてきているのかも……」

「自信なさげですね」

 アセスは更に何かを考えながらこちらを見ていた。


「それってつまり貴方は明確な理由もわからず、サナレスを探したいと私に懇願していると言うことなのでしょうか?」

「懇願などしていない!!」

 断固として否定したが、アセスは彫刻のような顔に冷笑を浮かべた。

「だって願っているんでしょう?」


 そして意外なことにアセスは、こちらに譲歩してくる姿勢を見せた。

「指紋委員会の決議如何で私も動きます」

「それは?」

 詰め寄ったソフィアの顔から目を逸らせながら、アセスは考えているようだった。


「ラーディオヌ一族総帥の立場を追われることになり、もう一度処刑台に立たされることになるのであれば、貴方が望むように私はサナレスを追おうと思います。ーーけれど、サナレスとリンフィーナのおかげで、もう一度ラーディオヌ一族の総帥の権力を取り戻せるのであれば、もっとすべきことがあるのです」

「すべきことって?」

「アルス家として望まれることだと判じています。だからその時はーー」

 アセスは自分の髪の一房を掴んで、それを彼の方に引き寄せて口づけした。


 全身がカァッと火照るほどキザな仕草だ。

 ソフィアは後ずさろうとしたが、アセスの行動は洗練されていて速く、腰に回された手を振り払えない。


「その時は、私のそばにいるのか、サナレスを探したいのか、貴方が決めればいい。幸い貴方が私を選ばなくとも、リンフィーナではないのですよね?」

「そうだ……」

「リンフィーナに選ばれなければ流石にこたえますけれど、貴方が私を選ばなくとも一向に構いません」


 そうは言うが、リンフィーナの人格が自分の気持ちにどう作用するのか、ソフィアですらわからなかった。優柔不断な娘リンフィーナは、いったいどちらのそばにいたいのか、ソフィアにだって皆目見当がつかないのだ。


 サナレスも、そしてアセスも、リンフィーナの心に従うのだろうな、とソフィアは思った。でもそれって、過去のジウスとヨアズによく似ていて、ソフィアとしては意味がわからないと思った。


「それでいい。ーーけれど他者の意思を尊重し、結局成り行きに任せてしまった三角関係がかつてあったけれど、誰も救われなかったな……」


 人の国である王都に連れてこられ、王子2人に求婚された。

 けれどジウスもヨアズも、互いに遠慮しあって、結局自分が幸せであればそれでいいなどと各々の役割を勝手に決めてしまったのだ。


「私の本当の幸せなんて、理解せぬままに……」

 ソフィアはどちらの皇子にも興味がない。

 ただ銀の森でひっそりと、育ての親である龍と暮らしたかっただけだ。ただ今まで出会わなかった人という同族が珍しかったし、ひたすら人の国の食べ物に魅了された。


 常に飢えていた。

 自分で狩りができないと、何日も食料がなくて飢えていたのだ。


 だから王宮に連れて行かれ、何不自由なく人として食事を与えられた時、ソフィアは狂ってしまったのだ。


『私の妻になれば、一生楽に暮らせるようにする』

 それってずっと、食いはぐれないと言うことか!?


『私の妻になれば、この国の王妃になり、最高位の権威を手にするだろう』

 それってとても美味いものを一生食べられると言うことなのか!?


 ソフィアは幼すぎて、2人の双子の皇子の言葉に誘惑され続けてしまった。


 今も同じ状況だ。

 サナレスとアセス。

 アルス家の血筋に、ソフィア自身興味を持ってしまっている。


 サナレスは決して自分の気をひかない。

 リンフィーナの気持ちですら、彼は奔放にする有様だ。


 アセスもリンフィーナの気持ちに任せると言う。

 優柔不断すぎて、任せていては進展しないとソフィアは思った。


 なんだか過去に戻り、モヤッとした選択肢に迫られているようで、ソフィアはううっと唸ってしまった。





感想、足跡、コメント、評価、ブクマが次の活力に。

何卒反応よろしくお願いします!


偽りの神々シリーズ紹介

「自己肯定感を得るために、呪術を勉強し始めました。」記憶の舞姫

「破れた夢の先は、三角関係から始めます。」星廻りの夢

「封じられた魂」前・「契約の代償」後

「炎上舞台」

「ラーディオヌの秘宝」

「魔女裁判後の日常」

「異世界の秘めごとは日常から始まりました」

「冥府への道を決意するには、それなりに世間知らずでした」

「脱冥府しても、また冥府」

「歌声がつむぐ選択肢」

シリーズの10作目になります。


 異世界転生ストーリー

「オタクの青春は異世界転生」1

「オタク、異世界転生で家を建てるほど下剋上できるのか?(オタクの青春は異世界転生2)」


 異世界未来ストーリー

「十G都市」ーレシピが全てー


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