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第7話 サクセスバイオ

 社会人になって5年目、経済新聞やニュースはほぼ毎日チェックしているけれど、サクセスバイオという社名は記憶にない。

 有名な会社だったら恥ずかしいな。そう思いつつ正直に聞いてみる。


「サクセスバイオか……。聞いたことないけど、どんな会社なの?」

「バイオベンチャーです。新興市場に上場して4年目ですから、一般的な知名度はまだまだ低いですね」

 よかった。そんなに有名な会社じゃなかった。


「バイオベンチャーってことは、製薬会社?」

「そのとおりです。画期的かっきてきなガンの治療薬を開発したことで株価が上昇して、株式市場では話題になっています」

 画期的なガンの治療薬。その言葉がひっかかる。


「そんなすごい薬を開発した会社なのに、知名度が低いってのは変な話だね」

「ええ。まだ開発しか、してませんから……」

 少女が意味ありげな笑みをうかべる。この言葉の意味、わかりますか? そう問いかけられてる気がした。


「開発しか……ってことは、まだ販売してないってこと?」

「そうです。まだ販売していないから利益は出ていません。費用ばかりがかかって赤字の状態ですね」

「でも画期的なガンの治療薬なら、すぐにでも売って利益を出せばいいのに……」

「販売したくてもできない事情があるんです」


 わけがわからなかった。そんなスゴい薬なら需要ははかりしれない。多くの命が救われるし、会社だって大儲けできるはずなのに。

「牛上さんは、副作用ってご存知ですか?」

 その言葉は大きなヒントになった。


「薬は開発できたけど、副作用があるかもしれないから販売できないってこと?」

「それだけではありません。薬を販売するには、効果や副作用の有無について、公的機関の厳しい審査をパスしなければならないんです」

 そういうことか。たしかに薬を開発できたらすぐ販売、なんてことが許されたら、世の中は金儲け目当てのインチキ薬や強い副作用をもつ危ない薬でいっぱいになってしまう。


「つまり、サクセスバイオが開発した薬は、販売するための審査を受けている最中なんだね?」

「そのとおりです。そして、審査をパスして販売できれば莫大な利益を手にできる。という思惑おもわくで、株価は大きく値上がりしているんですよ」

 少女がスマホを操作してサクセスバイオの株価チャートを俺に見せる。


「思惑だけで、こんなに上がってるのか……」


 驚きのあまり思わず言葉がもれた。サクセスバイオの株価は、ここ1年で約3倍になっていた。


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