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リアル・デモンズ  作者: 滝沢龍我
1.魔界顕現編
3/4

3話 欠落

AM12:00


景光は、清王リヴァイアサンから魔物に対抗し得るであろう力、<ジョブ ウォーリアー>を取得したことで、まさしくRPGの主人公のように、自分に戦士としてどの程度の技能、能力そして使用できる<スキル>があるのか把握できた。


「この力、どうして俺なんかにくれたんだ?」


<<若造、貴様にその力をやったのは、蔓延る闇の従者を倒してもらうためではない。貴様、ゴブリンを殺ったと言ったな。だが生者の命を奪う局面に立った時、恐怖、自身への畏怖を感じなかったのではないか?>>


景光は背筋が凍った。父を殺されたからといって、あの時の自分の行動は尋常では無かった。ただ冷静に相手の動きをどのように止めて、死を与えるかの最短ルートを考えていた。そして、リヴァイアサンの言う、極限状態だからと言っても命を奪う、加害者となった時の怖さや不安など普通の人間なら感じるであろう感情を全く持っていなかったことに気付いてしまった。


<<図星だろうな。お前には特定条件下において人として持つべき、一種の理性が無い。それがこれから築かれるであろう、覇道を成す者への条件だからだ。貴様の民を守ろうとせん覚悟は人族としては立派だが、その覚悟が絶え間ない戦いにより薄れ、摩耗し砕かれた後、何が残るのか。何千年生きたこの我からすれば、多少見物であったからだ。>>


リヴァイアサンは、大きな口をゆっくり開け、広角をにたりと上げた。あの時ゴブリンが獲物を見つけた時の顔のように。


「・・・そうかよ。だけどな、この世にあってはいけない奴らなんだ。俺の大切な人と場所を奪われたこと。それを、他の無抵抗な人達に同じ思いをさせたくない。それだけだ。もし、この力に呑まれて、足を踏み外すして人を傷つけるなら、自分でかたをつける。」


「そうだな。もし、お前が躊躇するよなら、私がけりをつけよう。」

とアリシアは、自らの口を動かしてそう話した。


「!?アリシア!ちゃんと話せるんじゃないか!なんで今までテレパシーみたいなことしてたんだよ!?」


「?、お前がジョブを取得した際、私のいた世界の常識も、既知の情報として、得ているのではないのか?清王、どうゆうことか?」


<<ううむ。若造に会得の儀を行った際もそうであったが、本来あるべき形式とは大きく異なった。だうんろーどなどと、これまで口にしたことも無い言葉であったしな。おそらく、この世界と我らのアストラ世界での情報、技術、様式すべてが、何かあるいは何者かによって、異なるものに変換されているやも知れぬ。>>


アリシアは少し考えながら、続けた。


「確かに、あの門をくぐった瞬間に、自分の頭に痛みが走り、記憶を取り戻したかのように、この世界の成り立ち、技術力、人間が社会を形成していることなどが流れ込んできた。」


「門?待てよ!そもそもアリシアとリヴァイアサン、あと魔物も、どうやってこの世界に来たんだ?」


「落ち着け景光。今からそれを話す。私が王直属の部隊だと話したな。私達の世界では、エルフ、クレイマン、天使族、魔族、人族が地上を分かち共存している。人族には獣人、ドワーフ、竜人など、お前のようなただの人間以外も含まれている。太古の昔、全ての種族間で領土を争う大戦があったそうだが、今のアストラでは、血で血を洗う争いは減り、それぞれ条約を結んで、戦の規模も時代と共に緩やかに縮小してきた。」


「か、かなりファンタジーな世界なんだな・・・」


「だが、近頃魔物の動きが活発化し、裏で魔族が絡んでいることをつかんだ。エルフの王は他国よりいち早く情報を得るべく、私達の部隊を魔族の領地へ送り込んだのだ。そして巨大な城の中で、魔物を何らかの手段で製造、量産し、貯蔵していた。見ただけで吐きそうだった。魔物には食い物が無かったらしく、共食いまで始めていたからな・・・」


<<小娘、簡潔に話せ。>>


「す、すみませぬ。思い出してつい・・・。その後探索すると、多くの魔術師が、魔力で形成された、門を作っていた。そこに、従順な魔物が数え切れない程門をくぐっていったのだ。私達は対処すべく、門を閉じるため、魔術師に暗殺を試みたが、失敗し、私以外の者は全て魔物に食われてしまった。私は生き延びるため、門をくぐる魔物達に隠れ、こちらの世界に来たということだ。」


「・・・お前も大切な人を亡くしたようだな。すまない、俺だけが辛い思いをしたと勘違いをして・・・。」

景光は、アリシアの顔を見ることができなかった。


「よい。清王殿、貴殿は・・・」


アリシアと景光はリヴァイアサンを見る。リヴァイアサンの体から、光でできた雪のようなものが、天に向かってふわふわ浮いていく。その光が体から抜ける度、段々とリヴァイアサンは透過が進んでいた。


「リヴァイアサン!一体どうしたんだよ!?」


<<全く、話の長い小娘だ。我の質量を長く保っている程、この世は魔力を維持できんのだ。まあ、貴様らが来た頃には、すでに尻尾半分、消えかかっていたのだがな。>>


リヴァイアサンは、少しうとうとしながらも、景光にゆっくり近寄る。


<<若造。最後に覇道を開く為、生き抜くと信じて伝えるが、貴様に渡したオリジンスキルは、我そのものだ。人には到達し得ない領域まで力を引き上げ、更なる変身を遂げることができる。だが、一度開放すれば、現状の体力は全て持っていかれるだけでなく、意志が弱ければ、己を保てず、目に映るものを破壊する邪神となろうぞ。使い所と貴様の覚悟を忘れるな。>>


「ああ、ありがとう。・・・あんた、死ぬわけじゃ、ないんだよな?」


リヴァイアサンは、ゴブリンのにたり顔ではなく、優しく景光に微笑んだ。

<<はっ。元の世界へ帰るだけだ。小娘、こやつに付いてゆけ。お前が望むものも、この若造が鍵で間違いなさそうだ。>>


「はっ!このアリシア、全を賭してこの者と参ります。」


<<ふん。・・・良い、旅であった。>>


そう言い放つと、清王リヴァイアサンは光と共に消え、いつもの静かな池に戻った。

景光は、振り返り、まだ燃えている村を見る。


「アリシア・・・行くぞ。」

「ああ。私には、あいつらを探す能力と策がある。行こう。」


二人は、しっかりと、確実に一歩一歩踏みしめ、前へ、前へと進むのであった。


PM13:00


景光とアリシアは、森をさらに進み、上へ、上へ進んでいく。


「アリシア。一体どこに向かってるんだ?」

「魔物が現れる門を潰さない限り、奴らは沸いてくる。」

「つまり、お前が出てきた門があったところに向かってるんだな?でも、村を襲った化け物は後なのか?」


「スキル、<サーチ>・・・景光、私の手を。」


とアリシアは上から手を差し出し、森を下方を見ている。その視点からは、村を見渡すこともできた。

景光は、すこし怖々と、アリシアと手を合わせる。


キィーン

頭を刺すような感覚が生まれ、自然と目を閉じたが、すぐにその感覚も無くなる。

景光は閉じた瞼を開けた。


「これ、どうなってんの?」

「感覚共有だ。エルフ特有のものだが、このように私が感じたこと、見たものは、同じように映る。」


眼前の村には、人ならざる三本爪の足跡が子供サイズのものから、象ではないかと思う程

巨大なものもある。他には、破壊痕や、爪痕が、赤く浮かびあがっていた。

そしてその跡は、門の方角から下り、村へ向かうと、往復して、また門へと戻っているように視える。


「つまり、奴らは撤収したってこと・・・?」


「分からんが、お前の村を襲ったものも、今向かう方向、門付近のひらけた場所まで行けば見つかるかもしれん。このサーチ状態なら、見つけた敵をマークでき、カメラのズームのように標的を拡大して視覚に認識させることも可能だ。」


「俺にもそのスキルは取得できるのか?」


「これはアーチャー、アサシンの共通スキルだ。他のジョブで使った奴を私は知らないな。」


「そうか、俺にもウォーリアー専用スキルがあるってことか?」


「ああ。だかそれより、お前、ジョブを一時的に解除しろ。」


「え?折角リヴァイアサンから貰ったのに?」


「私は気配遮断スキルを常に発動し、魔力を感じ取られないようにしている。しかしお前からは、魔力がだだ漏れだ。奴らに気付かれてしまう。それに、通常の人間では、ジョブを発動中、体力も魔力も少しずつ消費される。」


「言われてみれば、なんか立ってるだけで、軽く運動してるみたいな疲れが出てる・・・気がする。」


「これからの先頭にも差し支える。私の言うようにしろ。呼吸を整え、ジョブアウトと言え。」

景光は、深く深呼吸を一度した。


「ジョブアウト。」


たちまちアーマーとコート、剣と盾は吸い込まれるように、首にあるペンダントに収納された。


「なんだこの飾り?全然気づかなかった・・・」


「私もこの指輪に本来のジョブと共に、アーマーと武器を収納している。上達すれば、今の私のように、ジョブ解除状態で、固有の使用可能なスキルを発動することができる。」


「そうゆうことか。またジョブを発動するには?」


「さっきと同様、会得の儀の際、心に決めた意志を思い描きながら、ジョブ、ウォーリアーと発すればよい。」


「・・・叫ばなくてもいいのか?」

「・・・知らん。したいようにすればいい。」


二人は森を更に登っていく。すると、なだらかな平地が見えてきた。

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