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指輪9  一時の離別

「あの…岡本さん、すみませんでした。とんだ迷惑を掛けたようで……。…もう…帰りますんで……」

 男と博志が睨み合う中、1人控えめな声で告げたのは真二。真二はまるで魂を吐いたような表情で背を向けると、小柄な体を更に縮こませて歩き出した。

「本当に…もう来ないで下さい、堀内さん」

 その言葉にびくりと肩を震わせると、真二はおずおずと振り返った。直ぐに剣呑な雰囲気を宿す博志の瞳と視線が絡み、恐怖に慌てて俯く。

「おう、博志っ!? 何ふざけた事をっ……」

「本当に…すみません、言う通り、もう来ませんので…それでは……」

「なっ…堀内!? お前もっ……!?」

「引き止める事ぁねーだろ、帰るってんだから」

「…っお前という奴は……っ!」

 すれ違い始める3人の言葉。どれだけ意思を纏めようと声を掛けてもそれを自ら拒否する博志達に、普段あまり表れる事のない怒りを剥き出しにする。

 やがて角を曲がり姿を消した真二に気付くと、男は愕然と立ち止まり事態の展開を呪った。

「…別に、あの人は関係ねーだろ。いても息苦しいだけだよ」

 その後ろで吐き捨てるように呟く博史。

 男はぎりりと奥歯を噛み締めると、体を反転させて手の甲で払うように博史の頬を叩いた。乾いた音と共に、その目が見開かれる。

「…え…な……」

「二週間分の頭に昇った血、さっさと冷ましておけ」

「は……」

 困惑しきった博史に呻くように告げると、苛立ちを隠す事なく乱暴に踵を返し家に背を向けた。

 どこへ、行くのだろう。俺は置いていかれるのか。

 妙な緊張でからからに乾いた喉を鳴らし、か細い声で男を呼び止める。

「何で…いくんだよ、俺はどうすんだ、放っとかれんのかよ……」

 自分は今泣きそうな顔をしているのだろうか。

 以外にも震えた自身の声に一人で驚いた。

「堀内さんの所へ行って来る。こちらが落ち着けば直ぐにでも連れて行くつもりだ、出来るだけ早く。だから…余り取り乱すな、中にいる絵美子の救難信号が酷くなる」

 相変わらず地を這うような声ではあるが、博史を置いて行く事に対して罪悪感を感じているのか纏う空気は幾分柔らかい。

 きつく止まりそうな息をほっと緩めると、それでも険しい表情で男を睨んだ。

「どっちにしろ…俺は奴を許さないかも知れないぜ。そん時は、お前さんが俺の考えを矯正かなんかすんのかい」

「さあな。未だ何も分からない。しかし…お前自身の意見や考えまでも私がどうこういう気はない。ただ、機会を作るだけだ。その上で許さないのは仕方のない事だ」

 背中を見せたまま、振り向かせた横顔に一切の笑みを浮かべる事もなく続く言葉。そこでぴたりと止まると、思い出したように真二を追う足を進め始めた。

「なっ…ああもう分かった行けよ! けどなぁ、俺ん所に戻って来ない時は承知しねぇかんな!」

 どうにも意思を曲げようとしない男に、博史は白髪雑じりの頭を掻き乱しながら怒鳴り付けた。大の大人のそのトーンは迫力のあるものだが、宣言する声はいじける子供のような妙な頼りなさが含まれる。

 男はくつりと喉を鳴らし口角を吊り上げると、後ろを見送る博史にひらひらと右手を振り、走り出した。

皆様お久しぶりです……っ!!

高校に入ってからは中々時間が取れず、あまつさえ小説を書く時間だけがありませんでした;

脳内でだけ話が進む進む…

これからも更新はまちまちになると思いますが、これからもよろしくお願い致します!!

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