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来訪

宿に戻り、扉の鍵をかけ、【アイテムボックス】から今日買った品等を床に並べた。


「ここにないものは直接取りに行くとして」


まずはポーションやら解毒薬やらの調合だな。

鉱石の精錬はイメージを決めてからの方がいいだろう。


薬草の中から、リネン草、ジライ草、そして攪拌(こうはん)棒を取り出す。

ジライ草は、昨日余ったもの使った。

攪拌棒は、見た目はただのガラス棒だが魔力をよく通す素材で出来ている。

次に、水を入れたコップに薬草を沈めて潰す。

最後に、因子が混ざり合う事を意識しながら、棒に俺の魔力を込めれば…


薬草が薄く青白い光を放ち、水と同化しながら色を変えていく。



出来た。『解毒薬』。

評価は最高に値する。俺の鑑定眼に狂いはない。


序でに今の調合は、水の状態を確かめるための試験的な物だ。この町の井戸からとれる水の純度は高い。

殺菌さえすれば大丈夫だ。本命を作るとしよう。




*




最後に出来たポーションを【アイテムボックス】に収納し、床に転がる。



『上級ポーション』と『魔力回復促進剤』を合計二十本程。

上級ポーションとは相場50万シル程度の回復薬だ。

材料は下級、中級と同じなのだが、大切なのは込めた魔力量だ。

大体魔力の数値が二十五万の魔導師が全力で魔力を注げば漸く上級ポーションと言えるくらいだとか。

大陸魔力平均は五千。一般人の十倍の魔力を持つ人間すら早々いない。

え、俺?

取り敢えず自分でも阿呆みたいと思うくらいの魔力保持している、とだけ。

更に、それだけの魔力を原液と完全に融合させるには普通、大変な労力を要する。

…あ、つまりな。上級ポーションは値が張るってことだ。

俺が作る。儲かる。

正直需要はあまりないが、保険とばかりに購入する中堅冒険も少なくないので、定期的な納入を知り合いに頼まれていた。


「…ふぅ」


十数分同じ姿勢だった為に腰が痛いが、まだしたい事がある。


骨董屋で買ったあの人形騎士…






「エラい物買ったな」


人形騎士を見て、溜め息をついた。

この人形は、昔とある国の地下で暮らしていた国の研究者が生涯をかけて作り上げた遺物だ。

その研究者は秘密裏に国の資源でこっそり商売や魔道具の製作をしていた。この人形も国家の保持する資材で作られたものらしい。

研究者の知恵と実力は国の中でも飛び抜けたものであったという。それは、昔の国の中でも最も発展していた国の技術を以てしても届かない程に。

なお、彼と彼の属していた国はとある事件により滅び、この人形は現代に転送された。


つまりコレ、本当にぶっ飛んだ品であることに間違いない。

…何故こんな情報を知ってるか?調べた。

つっても調べたのは歴史だけで、人形の能力とかは調べていないが。んなことしても楽しくない。

ということで、早速人形を動かそうと思う。

人形の中央にある窪みにある微小な宝石に手を触れて魔力を流す。

説明に血を垂らすとか書いてあったがその必要は無いのでスルー。


すると、ゆっくりと窪みが塞がってきたため手を離した。人形の作り物の目がぎょろりとゆっくり一回転した。

その目を次は左右に徐に動いた後、視界俺を捕らえたらしい。起き上がって敬礼をした。


「今日からお仕えいたします、我が主よ」


おお…喋った。

それに騎士っぽい雰囲気出してる。今まで相対した、実力派の騎士のオーラというか。

鑑定結果を見ると、現在の主はキラ・サウィン。と書いてあったので正常に稼働している。

あ、そうだ。


「よろしく。俺はキラだ。お前は、どう呼べばいい?」


意志のある人形なら、名前を付けてやる方がいいだろう。


「主よ。私に名はありません。ですが主より名前を賜うことより確固とした契約とすることが出来ます」


騎士は無表情に答えた。

…契約の結び付きだ?よく分からないが、もう契約は成立しているんだろう?

だが、代名詞だけというのもアレだ。


「じゃ適当に決めるか」


「…適当って」ボソッ


なんか独り言ているが仕方ない。呼び方とか余程のものでない限り何でもいい気がする。

じゃあ人形だし…ドールとかでいいかな。


「よし。お前の名前はド「うおああぁああああああぁぁぁぁぁキラッッ!!」っ…ラギ「助けておぇええええ!!!」…」


いきなり何だよ!これはラギアの声だ。というか、大声がここまでデカい奴は一人…いや二人しか知らない。


「ドラギ…素敵な名前を頂いて感服ですっ…」


「あ?……あぁ」


…途中で遮られたからドラギ、と聞こえたのか。

面倒くさいからそれでいいと思う…が、なんだかなぁ。


「おうい、キラー!!!」


ガキッ




振り向くと、窓の近くの壁からには氷で出来た刃の先が飛び出ていた。

まあ、自分に到達したとて絶対当たらないけどな、あんなの。

窓を開き、下の光景を見た。

ラギアが焦った様子で走り、それを二人組の男達が追いかけている。

大剣を振り回している禿頭の大男と黒髪のひょろい奴。

一人はさっき飛んできた氷魔法の使い手だろう。

現に今も氷魔法と思しき詠唱をしている。


「…なにが?」


耳ざといラギアは離れた俺の呟きを捕らえたらしい。


「俺がよくわかんねえ店で風魔法避けてー!すっ転んでー!よくわからない紙に触ったら…うおっ、あぶねえってやめろ!このオッサンたちに追いかけられて!最悪!!」


はぁ。語彙力だけではなく説明力も問題だ。

関わりたくない。

何がどうして俺が厄介そうな事に足突っ込まねばならない?

てことで



寝るか。



窓を閉めた。

窓側の壁に障壁を張って、なんとなく疲れたのでベッドに寝ころび、目をつむった。


「うるせえさっさと捕まっちまえ…」



「おい、キラ!寝るな、見捨てるな!!ひでぇえー!!!」




…耳が良い。


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