お買い物
現在、俺は骨董屋のような店で品物を見ている。
路地裏の一角、見るからに怪しい見掛けだった。
店主も胡散臭そうな老婆だが、こういうところにこそ良い品があったりなかったりする。
当初の予定から外れているが、ほんの数分や数時間寄り道しても良い。
それで売りにでている品に片っ端から【アナライズ】というスキルで鑑定しているが、
まぁ、やはりというかガラクタや子供の玩具が多く、魔道具や薬も無いわけではないが効果がいまいちだったり劣化していたりする
…が、『解呪の首飾り』という、余程強力な呪いでなければ打ち消してしまうというアイテムをさっき見つけた。
俺には不要かも知れないが、一部は喉から手が出るほど欲しいであろう代物だ。
あらかた売り物を鑑定し終えた後に交渉しよう。
『【鑑定結果】
名前:不滅の便箋
詳細:便箋に筆記、描画をした後に水に浸すと、再度水に漬けたり燃やそうとするなど何があっても形や状態が変化しない。』
…凄いなこれ。
店に入ってから小一時間程で、商品の殆ど鑑定を終わらせた。
欲しいと思ったのは『解呪の首飾り』と『不滅の便箋』。そして…
『【鑑定】
名前:血縁仕えのからくり騎士
詳細:小さな騎士の外見の人形。胸に空いた穴に血を垂らすと、自我をもって動き、行使者に付き従う。未だ主はいない。』
これは面白そうだろう。
人形使いの動かす人形は見たことあるが、自我のある人形なんて考えられない。
少なくとも現代の技術で作られた物ではないな。
俺でも真似できないと思う。こればかりは是非とも手にしたい。
この三品以外にめぼしい物は無かったが、果たして幾らぐらいするだろうか。
どれも、オークションに出品すれば途方もない値がつくこと間違いなしだ。
それでも払えないことは無いだろうが、可能な限り安く買い叩きたいのが本音だ。
「48000シル」
「え?」
「はん。ここの売り物の値はワシの言い値さね」
よ、ヨンマンハッセン。この店主、道具の効果分かってないで置いてる?
価値を解っててその値段にするのは馬鹿だ。いやそうなのか?
「何だい。払えないんなら置いてきなよ」
「え?いえ、買います買います」
店主が『本当にこんなガラクタに金払うなんて』なんて軽笑しているが。
店を出て、俺も店主を嘲笑した。
結果、薬草採取の報酬から差し引いても少し余るくらいの金額で、恐ろしく希少であろう物を三つも手に入れてしまった。
あの老婆店主の嬉しそうな表情……ふん。知らなきゃ何も言われまい。
そして漸く、素材屋に到着した。
この街には幾つかの素材屋があるのだが、ここには初めて足を踏み入れる。
他の店と同じように、魔石は低純度のものしか無いだろうが…薬草や鉱石、媒体ならば使えるものもあるだろう。
また鑑定タイムが始まってしまう。
腰が痛くなりそうだ。
なかなかどうして此処の薬草は新鮮な上に質もいい。
これなら効能の高い薬が出来そうだ。
鉱石の方も、採掘したままのものを置いているのでその分安い。
更に他の金属も少量混じっているし、俺は自分で精錬できるから得になる。
流石はこの町で一番だと名を売る店である。
この町の素材屋は此処しか無いけどな。
一旦伸びをしてから、薬草と鉱石の中で、高品質の物を二つないしは四束ほど選る。
これでいいだろう。そう思って伸びをしようとした時にふと、誰かが背後に立つ気配を感じ、振り向く。
「おや……お客さん、かなりの目利きですねぇ」
この店の店員の制服を身に纏う金髪の少女が立っていた。
俺が振り向いた事で一瞬顔に驚きを浮かべたが直ぐに張り付いたような微笑みへと変わる。
「自身でも素材採取をしていますからね」
「なるほど…」
軽く微笑み返しながらも、少女に【マーキング】する。
…こいつは町の中ではずば抜けた魔力を持っている。そして気配を絶つことに優れている。
彼女が驚いたのは、気配を悟られない筈なのに背後に立った彼女に俺が反応してしまったからだろう。
自制しているとはいえ、俺がこの店に来て漸く気付いたほどだ。
少なくとも、一般人ではないだろう。それどころか…
…今見たもの以上のことを調べはしない。
「あ、お邪魔しましたね。では」
「ああいえ、丁度終わったところでした。会計お願いします」
「はい。では………………14900シルです!」
会計を済ませ、店から出たあと深い溜め息をつく。
用心しておいて損はない。
辺境のこの町で、人々は互いの身分や過去を探ることを暗黙の了解として禁止している。郷に入っては郷に従え。
俺もその通りにしている。
いや、探る必要なんて無いのだ。
___俺の望む暮らしの実現を邪魔する可能性があるならば、それが誰でどんな相手だろうが潰す。それだけだから。
よし、宿に戻って作業やら人形の起動やらを試すかな。