おいおいラギアさん!
「ちゃーっすクロナさぁん!」
キラと分かれた後にギルドへ向かい、何の用も無いのにクロナさんに話しかけている男を押しのける。
クロナさんも困ってるみたいだし、いいよな。
「おい、何すん…チッ」
俺の顔を見ると、そいつは去っていった。何でだ?
クロナさんがホッとした表情をしてる気がするし、まあいいか。
「ちょっといいかー?」
「ラギアさん、有難う御座います。持て余していたので助かりましたよ」
うんうん、やはりお礼を言われると気持ちが良いぜ。
特にクロナさんみたいに綺麗な人には、な?
「いやー、ははは!美人に礼を言われると照れるぜ!」
「はい、それで用件は何でしょうか」
…しまった!考えたことが口に!クロナさんが営業スマイルと言う名の無表情になった!
いや…これはもしかすると照れ隠しかもしれない。
そ、そうに決まっている。
「そうそ、Dランク昇格の試験受けたいんだけどよー」
気を取り直して、本日の用件。
今朝の依頼でDランクへの昇格試験を受けられるようになった。
やっぱり、魔物討伐は報酬もポイントも高くていいな。
キラも魔物討伐、やればいいのにな。
普段の動きや雰囲気の感じが気配を消すのを意識したような感じなんだよな。
昔見た『アサシン』っつうヤツ?アレっぽい。
力が無いにしても戦闘では役立ちそうだ。
それに、あいつは運動神経が悪いわけでも、魔力が扱えないわけでも無いことは分かったんだ。
昨日のレックラビットの依頼だって…やろうと思えば出来たはず。
闘いが嫌いなのか?
…ありえねーよなー。
キラに関しては妙なところが幾つもある…ような気がする。
あんまりあいつの言動とか覚えてねえから、何が変なのかは分かんねえ。
「…試験の手配をします。ギルドカードをお渡しください」
「あ、はいはーい」
おーっと、余計なことを考えてた!
ギルドで行動する際には基本的にギルドカードが必要だ。
だから、俺はいっつも言われる前にカードを出す。
クロナさんはそれを覚えてくれてるから、要件を伝えた後にいつも通り俺がカードを出すのを待ってくれていた。
う、悪いことをした。
…俺の特徴を理解してくれてるクロナさんマジ女神!!!
そんで、キラのことだけど。
自分は自分で他人は他人。
だから気にしすぎちゃいけないって昔、耳が痛くなるほど
教えられたという記憶が蘇ってきた。
「…手続きを終えましたので、今日の午後二時頃に受付に来て下さいね」
その言葉に返事を返し、クロナさんから手渡しで。手渡しでカードを受け取った。
後で頬ずりするぜ。
さあて、暇になったことだし少しそこらをウロウロしてくっかな。
結構金入ったし、買い食いして回ってもいいかもな。
様々な店があるのを一目して思う。
「…ん?何だ?」
町を漫ろ歩いていると、明らかに挙動不審な男が、小さな飲食店の前を彷徨いているのが目に入る。
なんとなく観察していると、暫くしてそいつが扉を五回叩き、爪先で一回扉を蹴った。
なんじゃありゃ?と思って見ていると、店の扉が開く。
男は店の中に入っていく。
…うーん、何をしていたんだ?すごく気になるぜ。
あれは合い言葉みたいなモノか?
もしかして、地元民しか入れない隠れ家みたいな店、だったりすんのか…?!
おうおう、興味沸いたし、俺も入ってみるか!
さっきの男と同じように、扉を五回叩いて一回蹴る。
すると、冴えない顔をした青年が扉を開く。
「ちわーっす」
「なっ…!?」
ん?いきなり凄い驚いてっけど、初見だからか?
うーむ、やっぱ知り合いとか限定のお店だったのか。
まあいっか。
今日から俺の顔知ってもらえば良いだろ。
「じゃあ初めまして失礼するぜ」
「待て待て待て、止まれ!何者だ貴様は!!」
んー?何だってんだ。