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ギルドマスター

ジライ草の採取を終えギルドに報告したら、ギルマスの部屋の前に連れてこられた。

…いやいや、何でだよ。


…この町に来て冒険者登録してから二週間程ずっと薬草系のクエストしか受けていない。

ちゃんと毎回生態系が崩れない程度に数百本採っているのだが…一気に持って行くと依頼が無くなって困る、とか?

初級回復薬に使う薬草なら幾らでも需要はある。

とすると一体何の用件だか。


クロナさんは、ギルマスの部屋の扉をノックした。

すると、重厚な男の声が響く。

 

「入れ」

 

先に、クロナさんが扉を開けて中に入る。

続いて入れという意味だろう。

彼女のアイコンタクトを受け、俺も部屋に入った。

部屋の主たる男はそこはかとなく風格漂う大男だった。

ガタイが良く、体に残る無数の傷痕から昔は冒険者だったと思わせるナイスミドル。

 

「やあ、キラ・サウィン君。私は、冒険者ギルドスファイア支部のギルドマスター、【アンガー・ディゼバラン】だ。急に呼び出して済まないな」

 

ギルマスが“ただのEランク冒険者“の俺の名前をフルで呼んだよ。


本当に何事だ。


と、またクロナさんからアイコンタクトが飛んできた。

 多分

『目上から挨拶されたら返さないと、失礼ですよ』


経験上、そんな感じの事が言いたいのだと推測した。

だが、直ぐには言葉が出てこない。


…目上、せめて同等の相手からの挨拶なら返さないといけないことくらい重々承知だ。

それも辺境の地とは言えど、ギルドを統べるギルドマスターだ。


だが、俺の内に渦巻く感情は、その程度のことも否定する。

何故なら俺にとっての『目上』とは、同時に『格上』という意味を持つ。

俺の昔の感情の残滓はしぶとく生きている。


『弱者』の相手などする必要はない。なんなら_____してしまえ。

と。


だが。




「いえ、お気になさらずに」


俺は多分、この地で過ごす為に

平穏な日々を愛するために今までの自分を捨てようとした。

そうだったんじゃないか?


数秒空いたであろう間を気にせず、ギルドマスターは落ち着いた物腰で俺に席を勧めた。



「では、君はそこへ座ってくれ」

「あい」


あっヤベ…

うっかり返事が適当なニュアンスになってしまった…

だが、それを彼が気にする素振りはない。

俺の知っている『ギルマス』はこの程度のミスでも背骨に剣を叩きつけたぞ。


なんて寛容なんだ…

なんてな。


俺たちは机を挟んで向かい合う形で座っている。

目の前のギルドマスターは、落ち着いた雰囲気を繕っているものの、

机の下では軽く貧乏揺すりをしていた。

視線もたまに何も無い空間を行ったり来たりしている。


ふむ…これは。


横目で見ると彼女…クロナさんは笑顔をひきつらせているが、無視だ無視。



「それで、本題の前に…一応だ。君は薬草や野草全般の知識には詳しいかな?」

「それなりに」

「情報源は?」

「…基本は王都の図書館ですかね」

俺が薬草に詳しいか?

どこで調べたか?


その質問は出自の正確な情報が欲しいということ、というのは言うまでもない。


「いや、単刀直入に聞こう。君は、これを知っているか?」


ギルマスは、緑に淡く発光する小さな果実と、真っ白で光沢のある枝の入ったボトルを取り出した。


「リカビス…とプロミネ、ですか」

「!!」


一方は俺が魔界(簡単に言うところの魔物が湧きまくる異世界)に遊びに行ったときに散々見た、

リカビスという花…の果実だ。

通常より随分小ぶりで、光も薄いようだけど。


プロミスは魔界に生息する【トレント】という樹木の魔物の亜種の枝を指す。


「随分博識のようだ」

「お褒めに預かり光栄です。しかしどうして?」

「…必要なんだ。この二つの素材…成るべく新鮮なものがな。

だが高ランクの魔物を好んで狩りたがる冒険者なんていないだろう。しかも極稀にしか入手出来ん。

見た目や構造は植物だ…だとしたら産出される場所が無くてはおかしいのだが」


高ランクの魔物?

何故魔物の話をする?俺達は今、魔界に生えている花の種の話をしている筈だ。


「そのリカビス…の実って普通に花から取れますよね」

「はあ?」

「は?」

「…花って何処で?どんな?」

「あーっと、魔界に咲いてる…発光する白い花弁の…?」

暫く沈黙が続く。


「魔界………だと…何故お前…いや」

下を向いて何か考え込みながら独りごちるギルマス。

と、突然机に両手を叩きつけ、立ち上がって叫んだ。


「なんっっっっっっだそれ!!!!!!!」






驚かすな。

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