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夏合宿 前編

「よし。これで準備はバッチリだな。」いよいよ今日は夏合宿の当日となった。もう覚悟を決めていくしかない。神田とも約束したしな。


俺は待ち合わせの東京駅に向かう。東京はこんな日でもいつもと変わらず混んでいる。


何も変わらない毎日。俺が夏合宿に行くことを知っている人物はここにはいないのだ。こうして俺は死んでいく。うわあああああああああ。


「何してるんだ君は?」後ろからドン引きされたような感じで声をかけられる。「神田か。おはよう。」

俺は差も何もなかったかのように平然と挨拶をする。「おはよう。早かったね。まだ先輩たちは来ていないようだ。」

 

「そっか。まあいたとしてもわかんないけどな。」まあそうだねと彼女が笑って返す。神田は今の所、普通そうだ。

意外といつもの神田である。まあ疑惑があるだけで確定してはいないし、確定してところでってのもあるしな。


「集まっているな。魔の者どもよ。」後ろから声がする。振り向くとそこにはオカルトからかけ離れた今時の大学生って格好をした、4人組の女性がいらっしゃった。


「先輩方。おはようございます。」先輩まさかの全員女?しかもみなさん美女揃いで。俺はこの合宿に呼んでくれた神田のことは今度から神様だと思うことにした。


「彼があの6人目の人かい?」一番長身ですらっとした体型の黒髪ポニーテールの人が尋ねてくる。


「そうです。彼が幻の6人目こと、大友春樹くんです。」「あっ、どうも。」俺は緊張してまともに会話も

できないためさらっと挨拶を返す。


「おー。君が!私はこのサークルの部長を務めさせてもらってる、田辺くるみだ。よろしくな。」


えっ?田辺先輩?女性4人組できたわけだから、当然と言えば当然だが、まさかの女性?疑惑とは言え女性でアリスのファン?

俺はいよいよ何が何だかわからなくなってきた。

 

********


俺らは東京からバスに乗った。毎年、長野でオカ研は合宿するらしい。大学の合宿所があるのが長野で、

そこなら安く旅費を使えるし、人家もほとんどないし、周りに迷惑をかけることもないからだという。


バスに中では二人席であるので、俺と神田が隣同士で座った。


「先輩って女の人しかいないんだな。つかそれでアリスのファンとかありえるか?それにアリスのファンなら真っ先に俺に対して嫌悪感を抱くはずだし。」


「確かにね。仮にファンならアリスちゃんに彼氏って言われてデレデレしてる不届き者って情報は入っていてもおかしくないしね。」


「おい、彼氏じゃねーし。」俺は間髪入れずに突っ込む。


「とりあえずは様子を見ていこう。」

神田はそういったが、どうだろうか?実際この線はなさそうだと思う。

俺はだんだんと田んぼが増えていく景色をただ見るのであった。


********


「よーし着いたな。1年生は初めてかもしれないが、ここが合宿を行うところだ。」

 

夕陽が綺麗に見えた。移動って大変なんだね。あはは。

駅に着いてから、ひたすら2時間ぐらい歩いて着いた。オカ研って文化部だと思っていたが油断したよ。

 

俺らは息を切らしながら、建物を見る。まあ歴史のあるところだから多少は古い感じがしたが、今はそんなところではない。一刻も早く休みたい。俺らはぞろぞろと中に入ろうとする。


「みんな疲れているのはわかるが、各自部屋に荷物を置いたらここに来るように。新入生の紹介と、

合宿をするにあたってその他諸々の話をするからな。」


「はあーい。」みんな力無い返事で返す。部長はなぜこんなにも元気なんだ?入るサークル間違えてるだろ。

「じゃあ各自後ほどな。」


********


「みんな集まったな。とりあえず自己紹介でもしようか。つっても私は軽く言ったけど。部長の田辺だ。

唯一の3年だから年齢だけで部長になってる。とりあえずこの3日間はよろしくな。次は副部長の亜美。」

部長に言われ、大人しそうな人が出てきた。緊張しているのかモジモジしている。


「高橋・・・」え?なんと?ほぼ聞き取れなかった。「ほら亜美。それじゃあ新入生に聞こえないだろ。

もう少し大きな声で。」部長が促す。


「は、はい。高橋亜美です。2年生で一応副部長です。よ、よろしくお願いいたします。」顔を真っ赤に

しながら自己紹介した高橋先輩の勇姿を目に焼き付けた。よくわからないがこれが萌えとうやつだと思った。


「じゃあ次は私が。2年の飯田かなです。よろしく。」随分ぼーっとしてそうで大丈夫かなという印象を受ける先輩だった。


「じゃあ最後は私だねん。2年の小山由美でーす!趣味は読書と映画鑑賞でーす。よろしくね!」

オカ研にいるとは思えないほどリア充オーラがすごい方だった。あれ?ここオカ研だよな?みんななんか

オカルト興味なさそうなんだけど。一番オカルトを研究してそうなのが神田か。


「1年の神田です。オカルトに興味があって入りました。よろしくお願いいたします。」簡単な挨拶で神田は終える。


そしていよいよ俺の番だが。

自己紹介は肝心だ。これでリア充になれるか分かれる。だが俺は肝心なことを忘れていた。リア充街道は

終わったと。だからもう適当に挨拶する。


「1年の大友春樹です。神田さんにこの合宿に来るよう言われ、気づいたらこのサークルに入ることに

なっていました。オカルトとか全然わかりませんがよろしくお願いいたします。」俺は簡単に挨拶を済ませた。


神田がこちらをずっと見ているような気がするが、俺は目を合わせない。怖いから。


「これでみんな自己紹介は終わったな。ということで日が完全に落ちる前に夕食を作ろう。今日はカレーだぞ!」


部長が張り切っている。なんだこれ?これは本当になんのサークルなんだ?

俺らは外にある調理場に向かっていった。


********


「お、大友さん。こ、これ皮むくのお願いいします・・・」「わかりました、亜美さん。置いといてください。」

「春樹、米が炊けそう。」「あ、今見に行きますね。」「春ぴょん、春ぴょん。これきれないよー」「どれですか?あ、これはこれでできますよ。」

 

俺はカレー作りに勤しんでいた。先輩たち作ったことあるんじゃないのかよ。もはや俺しか作ってないんだけど。

「春樹くん頑張って。」神田はレタスをちぎりながら言ってくる。つか田辺先輩と神田は料理できそうなのに火起こし&サラダ作りっておかしくないか?適材適所だろ。


********


 「ごちそうさま。」「みんなおかわりはまだまだあるからな。遠慮するなよ。」「やっぱりみんなで作る

カレーは美味しいね。」後半は先輩たち、つくれなーいとか言ってほぼ俺が作ったんだけどな。


「さすが幻の6人目。完璧な手際の良さだったぞ。」田辺先輩から褒められる。「ありがとうございます。」

「春樹くんがほぼ作ったようなものだし、遠慮せずに食べてくれ。」いやー、もう実は3杯目なんだよな。


「そういやオカルト研究会なのにオカルトっぽいことはしないんですね。」オカルトっぽいことってなんだ

よと思いつつ質問をしてみた。


「まあそうだよな。オカ研だしな。サークルっぽい活動はしてないよな。」田辺先輩が戸惑ったように笑う。

「今のオカルト研究会はオカルトに興味がある人が集まっているわけではないんだ。」え?なんでこの人たちオカルトやってんの?みたいな表情がバレたんだろうな。田辺先輩は戸惑った表情で話を続ける。


「先代の先輩たち、つっても私よりも一つ上の先輩なんだが、今の4年生の先輩が3年の時に部員は2人しかいなかった。人がいないからサークルとしては認められないと学校側からの通達があってね。部員集めをすることになったんだ。

でもただでさえ、ニッチなところだからね。そうそう人なんて集まらなかったんだよ。

だからオカルト好きでない人にも入りやすいサークルを目指した。人が入って、それからオカルトの良さを伝えていけばと。

それでみんなが楽しめるようなイベントをしたり、オカルトとは全く関係ないところの切り口で人を集めたんだよ。

そこで集まったのは私や今の2年メンバーだね。15人ぐらい集まったかな。」


なるほど、だからオカルトに興味がなさそうなメンバーばっかりなわけか。


「でも今は・・・」

 田辺先輩は少し視線を落とす。

「そう、残ったのは見ての通り。先輩たちは人が集まったからオカルト研究会の本来の活動を戻していこうと思ったんだ。

でも、オカルトとは関係ない楽しいことをするためにみんな入ったようなもんだからね。今さら受け入れられなかった。

だからみんな辞めてしまった。」


「先輩はなんで残ったんですか?オカルトに興味があるわけではないんですよね?」

田辺先輩は戸惑った表情で答えた。

「私?私はまあ、先輩たちにお世話になったからかな。」


そう言うと田辺先輩は立ち上がり、「そろそろ時間だな。みんな片付けて、終わったら解散だ。明日も

色々あるから楽しみにしておいてくれよ。」

はーい、とみんなそれぞれ片付け始める。


今のメンバーはオカルトに興味がないが、サークルには所属し続けている。

何故、そこまでしてこのサークルを続けるのか?

考えてもしょうがないか。妙な詮索はやめよう。


俺は料理同様に片付けもほぼやらせていただいた。

そして神田からミッションを頼まれていたが、完全に忘れていた。あ、明日から本気出す。

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