初ミッション
みなさんお元気ですか?俺です。突然ですが人っていつ大人になるか知っていますか?
成人した時?お酒やタバコを始めた時?いえ、女の子に責任を取らされる時です。終わったわ。
確かに胸は触った。だがあれは事故だ。100%俺が悪いかと言われたら、そんなことはない。
そう思いつつも俺はオカ研へ向かう。昨日の件で責任をとってもらうから来いと黒ローブに言われたのだ。
責任って何?お付き合い的な?お付き合いしてくれないとゆるさないんだからね//的な?
いや、俺たちそもそもお互いのことよく知らないし。あ、でも取れって言うならとるよ責任//
気づいたらオカ研の前に着いていた。入るか。失礼しまーす。俺は覚悟を決めて入った。
「やあ、待ってたよ」黒ローブがいた。
「は、話ってなんだよ//」俺は少し彼女と視線を外してそう聞いた。
「別に大したことじゃないんだ。昨日の件で少し謝りたくてね。ちょっとびっくりしたからといって大人気なかった。すまない」
なんだ、そんなことか。てっきり今後の話をされるのかと思った。
「いや、俺の方こそ、悪かった。」
俺が謝ってからほぼ同時に「ただ!」と強く強調してきた。
「触られた、という事実はあるんだよなあ。」
くっ、それを言われたら俺にはどうすることもできない。
「な、何が言いたい。」
「まあそう身構えなくても良い。君にはある依頼をお願いしたい。しかも報酬つきだ。悪くないだろ?」
「依頼?」
「実はとあるアニメの限定フィギュアの発売イベントがあってね。どうしても手に入れたいのだけれど、その日はどうしても外せない用事があってね。それを君に買ってきてほしいんだ。報酬はそうだなー。これぐらいで」彼女はピースサインを見せてきた。
「もし君が買ってこれたら報酬として2万円お渡ししよう。どうだい?悪くない話だろ?」
にっ2万だと?たかがフィギュア買うだけで2万円?うますぎる。
「話がうますぎるな。何を考えている?」
「君の時間を奪うんだ。当然タダとは言えない。あとは2万円を君に渡してでもそのフィギュアが欲しいだけさ。それに君には断ることはできないはずだよ。」
確かに。俺に断る理由はない。つかできない。もはやこれは脅迫である。
「もし俺が買ってこれなかったら?」
「簡単な話さ。次学校に来た時は女子からも相手にされなくなり、名実ともにボッチになるだけだよ。」
俺はなんとしてでもそのフィギュアを手に入れることに決めた。
決戦の日は訪れた。天候は晴れ。絶好のフィギュア買う日だった。俺は事前の情報でこむということを
聞いていたので、始発に乗ってイベント開催地まできたがこの混みようはなんだ?
すでに人が100、200、いやそれ以上にいるかもしれない。朝6時だぞ?こいつら何時から並んでんだよ。
イベントはたくさんのアニメのグッズなどが販売されるため、彼女から依頼されているアニメフィギュア、
魔法少女ココナッティ目当てのやつが全てではないと思うが、限定100体の販売しかされないらしいから
油断はできない。
俺は会場に入るまで、軽食を食べながら時間を待つのであった。
朝9時。ようやく閉ざされていた門が開かれる。いよいよ決戦の火蓋が切って落とされた。
さあ、戦争の幕開けだ。狙うはただ一つ。魔法少女ココナッティのフィギュアのみ。俺は全力で目的地まで
向かった。
「ただいまをもちまして、魔法少女ココナッティの限定フィギュア完売となりました。」
突如のアナウンス。そして早すぎる死の宣告。
終わった。俺の大学生活の何もかもが。名実ともに真のぼっちが確定した瞬間だった。
あいつになんて言えばいいの?どんな顔で会えばいいの?
「あれ?春きゅんじゃん!」聞き覚えのある声、そして春きゅんはやめろ!バカップルって思われる
だろ?
「山本・・・」
「アリスでいいよ。どうしたのこんなところで?アニメ好きだったっけ?」
「いや、アニメのことはわからんが友達に頼まれてあるフィギュアを買いにな。でも俺が買う前には売り切れちゃって。」
「ふーん。なんのフィギュア?」
「魔法少女ココナッティ」なんかこの名前呼ぶの恥ずかしいな。
「ココナッティなら今日来てる知り合いが持ってるかも。」
え?今なんと?知り合いが持ってる?
「まじ?譲ってもらうことできるかな?お礼はもちろんするからさ。」
うん聞いてみるねーとアリスは知り合いに電話してくれる。
やはり持つべきものは友だな。高校の暗黒時代をくぐり抜けてきただけのことはある。
まあ今やかたやリア充美少女になっちまったけど・・・
「うん、わかった。じゃあ待ってるね。うん。はーい」電話が終わったようだ。
「どうだった?」俺は恐る恐る尋ねる。
「いいってさ!」
「まじ?じゃあお礼するね。何がいい?」
「じゃあ今度私と デートしてよ。」
「え?デート?」意外つか予想外の展開キタコレ。
「うん。デート。それでフィギュアあげるよ。」
まじか。ぶっちゃけ俺としては構わない。
が、しかし、世間はどうであろうか?
男子学生にもっとも不人気となった理由はこいつに彼氏扱いされたことが原因だ。
大学の連中にバレたら音速で俺の人生(物理)が終了しないだろうか?
「わかった。ただ、大学のアリスの知人には誰にも言わないでほしい。俺の人生がかかってるから。」
「え?何があるの?ま、まあいいや。じゃあ決まりだね。約束したからね。お、ちょうど知り合いが近くまで来たみたい。ちょっともらってくるから待っててね。」
そういって彼女は知り合いのところに行ってグッズを交換し、魔法少女ココナッティのフィギュアをくれた。
「じゃあ次の日曜日、よろしくね。詳しいことはまた後日連絡するね。」
こうして俺は自分の名誉(笑) を守るため、元男の子で高校の同級生のアリスとのデートを取り付けた。
人生初のデートが男の娘になったがそんな細かいことは気にしていられない。
「おおー、流石だね。」フードで顔は見えなかったが、彼女は満足そうだった。
「うんうん、ちゃんと僕が欲しかったものだ。ありがとうこれは約束の報酬だよ。」
彼女はそう言うと封筒をくれた。中身を確認する。まじで2万入っているやん。
「いいのか?」恐る恐る尋ねる。
「ああ、もちろん。その代わりと言ってなんだけど、今後もこういう依頼をお願いしてもいいかな?もちろん報酬はきちんとお支払いするから。つっても君に断る権利はないと思うけどね。」
俺はいつになったら解放されるんだろう?まあバイトもしていないし、うまいから別にいいんだけどね。本音を話せば絶対に断れないからやるしかないんだけど。
「わかった。なんかあったら呼んでくれ。」
そうだ。依頼をお願いするのにいちいち君を探しに行くのは大変だから、連絡先を交換しないか?」
まじか・・・ついに俺のアドレスに女子のアドレスが・・・
まあ元男の子のアドレスも入ってるからそれもカウントしていいなら二人目かな。
「そうだな」こうして彼女と俺は連絡先を交換した。
「ありがとう。これからはよろしく。そういえば自己紹介がまだだったね。」彼女はそう言いながら
フードを下ろす。
「僕の名は神田レイ。よろしくね。」神田は俺に笑顔で言ってきた。
「ああ、大友春樹だ。よろしく。」
目の前にいる黒髪、ショートの美女に俺は驚きを隠せなかった。
めっちゃ美人じゃねーか!
そして誰もいなくなった部屋に一人。
「大友春樹君か・・・」
一人の女性が携帯を見て、何か文字を送信した。
「これからはよろしくね。」外は降るはずではなかった雨が降り始めるのであった。