サークル勧誘
入学式が終わってから1週間が過ぎた。
ぶっちゃけ高校の同級生にして唯一の男友達からの衝撃的なカミングアウトのことで、リア充のことなど何一つ考えられなかった。
この1週間を空白の1週間と呼ぶことにする。
とりあえず今日から授業が始まる。大学は高校の頃までと違い、決められた単位の中で取りたい授業を選んで受けることができる。
と言ってもどんな授業があるのかわからないため、今日からの1週間でなんとなく授業にあたりをつけ、来週からの1週間で授業の申請をするのだ。
だから実質はガイダンス程度でまともに授業は行われない。
俺はある程度、授業は自分の興味があるところで考えている。楽単だの何だの存在しているかもしれないが、そこは大学に入ったのだからきちんと勉強したい。
性格的には真面目なのよ、こう見えて。
まあそんなことはどうでもいい。今日学校に来たのは重要な事があるからだ。
そう、それはサークルの勧誘だ。
サークルはこの大学生活に置いて重要なものとなる。
ここでリア充エリート人生イージーモードになるかどうかを大きく左右すると言っても過言ではない。サークルに入らないなんてもってのほか。
これを機会に俺はリア充街道に乗ろうと思う。
完璧すぎる自分の計画に身震いしながら俺はサークル勧誘が行われている地下食堂へと向かった。
春なのに今日は冷えるな。薄着しすぎちゃったかな?
地下食堂。そこではサークル勧誘の洗礼がすでに始まったいたのである。
あるサークルではもので釣り、またあるサークルでは可愛い女性の先輩の色仕掛けなども。
えっ?なんの勧誘?これはあとでいってみよう。
その光景に新入生はタジタジの者もいれば、もうサークルに入ることを決めている者もいる。
「ねえ!そこの君!ぜひともうちのサークルに入ってよ!」
「ずるいぞ!そんなとこよりもウチに来なよ。」
何やら随分人気な奴がいるな。もう引っ張りだこかよ。こういう奴がリア充になるんだよな。いけすかねぜ。
リア充になろうとしているが他の奴がチヤホヤされるのは許せん。
どんないけすかねえやつかと思い、見に行くと。
「いや、私サークルには入る気なくて・・・」
俺の高校の友達で元男の山本さんだった。
勧誘に断られた先輩たちは残念そうにしていた。ここでこいつが男だってバラしたらどうなるだろうか。
まあ俺にそんな勇気はないからしないけど。
「お!春きゅーーん!」
春きゅんってなんだ。つかこっちくるな。知り合いだと思われるだろうが。
「春きゅんこんなとこで何してるの?」
「サークル見てるんだよ」
俺は目を合わせずに答える。
なぜかって?
周りの人たちが鬼の形相でこっち見てるからだよ。違うんです。高校の友達なんです。そもそもこいつはおとry
「君、アリスちゃんと仲良いんだね。二人はどういう関係なのかな?」
爽やかでオシャレな先輩が笑顔で訪ねてきた。
なんでだろう。笑顔なんだけど目が笑っていない。つかこいつアリスっていうの?芸名か源氏名かよ。
「いや、こいつとは・・・」
「彼氏でーす!」
俺が答えきる前に山本さんが答えた。
周りが唖然としていたが俺はそれ以上に驚愕していた。
「「ええええええええええ!」」
地下食堂中に男子学生の声が響き渡った。
そして俺はサークルに加入することはできなくなった。