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事件は部室に行く前で

 アリスがオカ研に入ることになってから、オカ研の部員数は増加の一途を辿っている。すげーよ、あいつの影響力は。ここまで来るともはや尊敬すらする。


 そしてそんなことを考えているとアリスお嬢がいる。相変わらず親衛隊の連中がいるな。部室に行くのだろうか?


 「アリスちゃんだ。部室に行くのかな?」「ちょっと見に行く?」芸能人かよ。ちょっとどこか行くってだけでこれだ。プライバシーもへったくれもないな。アリスも大変だろうに。とは思うが俺にできることなど何もない。何故なら関わればこの大学にいられなくなるだけじゃ済まなくなるからだ。


 さて、関わらずに行くか。と思っていたら、アリスと目が合う。やべえバレた。つかめっちゃ見てる。やめろ。お前に声かけられたらこっちは死ねリスクすらあるんだよ。だから見ないで。


 「春きゅんだーー!」アリスがこっちに近づいて来る。周りの人が一気にこちらを凝視してきた。こいつら恐い。


 「ああ、山本さん。こんにちは。これから授業があるので僕はこれで。」俺は目を合わせずにそれだけ言って通過しようとする。「ええ。なんでそんなよそよそしいの?いつもは”アリス”って呼んでくれるのに。」な・・・


 周りの視線が痛いとはまさにこのこと。めちゃくちゃ冷たい視線を浴びている。俺は小声でアリスに「バカ。お前と仲良くしてるのバレたら周りの男どもに消されるんだよ。お前も知ってるだろ?」「えーでも

私が誰と仲良くしようが関係ないじゃん。それに嫉妬して春きゅんにひどいことするような人は私絶対に許さない。」アリスは周りに聞こえるようにわざと大きい声でいい、周りの奴らを見渡す。周りの奴らもそれで怖気付いたのか、視線をこちらから外してくれた。


 みんなアリス大好きすぎるだろ。今はアリスがいるし、そう言うこと言ってくれたから大人しくしているが、俺が一人になったら何されるかわからない。「ありがと。とりあえず俺は授業あるからこれで。」さっさとこの場から消えないと後々恐い。なるべく学校内では穏便に済ませたい。ん?アリスちゃん何やってるの?僕の腕を掴むのはやめてくれるかな?


 「何の授業出るの?私今日は授業ないから一緒に行く。」周りと俺が凍りついた。これはやばい。いよいよテロ起こるかもしれない。


 「いや、アリスも大変だし俺が取る授業なんてつまんないよ。そうだ暇なら部室行ったら?」「えー。だって春きゅん部室来ないじゃん。先から避けてるけどそんなに私のこと嫌いなの?」アリスが上目遣いで聞いて来る。


 周りが鬼の形相を浮かべてる。やばい。アリスと仲良くしてもアリスを泣かせるようなことしても消される。どのみちアリスにバレた時点で俺の大学生活はジ・エンドだったってことか。


 「き、嫌いなわけなじゃん。でも授業はつまんないだろ?部室なら神田もいると思ったからさ。」頼むよ。引き下がってくれよ。俺の精神が持たないから。「えーーー。じゃあ授業終わったら絶対部室にきてくれるって約束できる?」そんなのできるわけねー。でも今は・・・「わかった。後で行くよ。」「わー。待ってるからね。絶対だからね。」アリスはパッ〜と天使のような笑顔を見せてくれるが、周りの人たちは悪魔のような顔で俺を見て来る。


 終わった。俺の学園生活。物理的な意味で。俺は一生授業が終わらなければいいのにと願いながら、授業に臨んだ。


********


 ”やばい。大変なことになった。助け求む。”


 俺は神田にヘルプを出した。このままでは俺の学園生活が物理的に終了してしまう。その前に神田に手を打ってもらう。俺が言ってもダメであったから、なるべくなら彼女の方から事情を説明してもらい納得してもらうしかない。


 神田、俺の授業が終わるまでに連絡をくれ。さもないと俺が俺でない何かとかしてしまう。「これ何?」

「ああ、それは春樹くんだったものだよ。」みたいな会話になりかねない。私はただ平穏に過ごしたいだけなのだ。だから助けて。


 ”どうした?” 来た。救難信号が届いた。


 ”アリスに校内で遭遇し、部室に来るように言われた。今、部室にいるもしくは行く用事があるなら神田の方から俺が部室に行けない理由を説明してほしい。さっき俺から言ってダメだったからお願い。”


 ”わかった。善処する。”


 ふー。これで一安心だ。今日もぐっすり寝ることができる。明日からも大学生を続けられるぞ。いやー生きてるって素晴らしい。


 テレレレレン。もう神田から連絡が来た。部室にいたのだろう。アリスに話をしてくれたんだろう。彼女には頭が上がらない。今度飯でも奢ってやろう。そう思い俺は携帯を開いた。


 ”ごめん、無理だった。とりあえず終わったら連絡して。部室までたどり着けないと思うから迎えに行くよ。”


 部室までたどり着けないってどう言う意味なの?人が多すぎて通れないからってこと?それとも俺が俺でないものになるからってこと?


 大友春樹。19歳。リア充になりたくてこの大学に入り過ごして来たが、まあリア充とはほど遠かったけど、悪くはない人生だった。


 俺はとにかく授業が終わらないことを祈り、念じ続けた。しかし無情にも授業終了の鐘が鳴り響く。終わった。


********


 「あ、迎えに来ちゃった。」神田さん、可愛く言えば済む話ではない。アリス様、その家来たちも直々に

参られた。


 「春きゅんお疲れ。」アリスの笑顔とは対極に後ろの御付き様たちがものすごい形相で睨みつけてくる。

へへへ。何これ。


 「あ、アリスしゃんおちゅかれしゃま。か、神田さん、ちょっといいかな。」俺は付き人たちに怯えて、赤ちゃん言葉になる。「ごめん、無理だった。」神田が真っ先に謝ってくる。「いや、いいんだ。それよりもあの後ろの連中なんだよ。めちゃくちゃ殺意剥き出しで見て来てるんだけど。俺どうしたらいいの?」神田はしばらく熟考する。神田俺のために。しばらく考えた後、親指を俺に突き立て満面の笑みを浮かべてきた。あ、俺終わったなこれ。


 「春きゅん、とりあえず授業も終わったし部室行こう。」アリスさんやめてください。腕掴んで来ないでください。本当にやばいですから。


 「アリス、腕掴んだりしないほうがいいぞ。はしたないとか思われたりするかもしれないしさ。」「ええー。別に大丈夫だよ。私達の仲じゃん。」おお。まじでやめて。本当に明日から学校行けなくなるどころじゃ済まないから。神田は俺と一切目を合わせようとしない。頼むフォロー入れてくれ。


 この場をどう切る抜けるのが最適なのか?彼女に直接事情を話しても「私がいるから大丈夫だよ」で終了させられてしまう。なら恋人としていっそのこと振る舞うか?アリスが選んだ男であれば、俺に直接危害は加えない・・・はずだ。


 なぜならアリスを悲しませるようなことをしないのがあいつらだからだ。それを利用すれば。ただリスクもある。そもそもアリスがその作戦に乗ってくれるかわからないし、この場で急に恋人として振舞って周りが信じてくれるとも思わない。ではどうする?手はないのか?


 「春樹くん、ちょっと。」神田からの急な呼び出しが。「どうした?」「アリスちゃんを味方につける以外は君の死・・・学園生活に未来はないと思うんだ。」おい、今、死つったぞ。「だからアリスちゃんにいっそのこと告白しちゃえば?」な。とんでもないこと言い出しやがった。まあつい数秒前はそのとんでもないことを考えていたわけだが。


 「それはほらあれだろ?」「いや、この場で告白しちゃえばどっちに転んでもいいじゃないか?むしろフラれれば、君に被害を加える必要はなくなるしね。」確かにそうかもしれないけど。


 こいつらは知らない。アリスのことを。確かに見た目は可愛い。アイドルやってますつっても信じるレベルだ。だが、こいつは決定的に女性アイドルにはなれない。なぜなら男だからだ。しかも俺の高校の同級生。


 無理だろ。どう考えても。こいつらは今のアリスしか知らないが、俺は高校の頃からのアリスを知っている。だからこそ、アリスとは末長く関係を続けていきたいと思ってる。唯一の友達にして同級生。それをこんな形で壊す形になるのであれば俺は死ぬことを選ぶ。ふっ。俺は覚悟を決めた。神田もそれを悟ったのか何も言わない。


 俺はアリスにそっと笑顔を向ける。みんなまたな。俺は地面を見つめる。地面がどんどん大きくなる。そして次の瞬間。


 「アリスちゃんと仲良くしてすみませんでしたあああああああああ。」俺の誠心誠意を込めた土下座は校内に響き渡ったのであった。

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