お嬢様、厳しすぎます
はあーーー。びっくりするぐらい休みの日ってやることないよな。はあーーーー。
だが俺はこの時間が嫌いではない。人生においてダラダラするという行為の中からでしか、本当の自分というものは見つけられないと思っている。
最近はなんだかんだあいつらとの付き合いもあり、意外と何かしていたような気がする。だからこそ、一人のダラダラする時間とは必要なのだ。
そんなことを考えていたが、今日は夕方にアリスとご飯に行く約束をしている。神田も誘ったのだが、断られた。だから結局二人で行くことになった。なんやかんや高校を卒業し、あいつが女になってからもこうやって付き合いがあるのだから、すごいと思う。他の高校の同級生なんて会うこと・・・そもそも友達がいなかった。あ、でも浪人してるあの子とは会ったな。誰だったけ?
気づけば時間も17時を回っていた。やべ、18時に駅集合だった。俺はて早く準備し、駅まで向かった。
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17時55分完璧すぎる時間だ。俺は辺りを見渡す。アリスは・・・来ていないようだ。俺は携帯を開いて連絡が来ていないか確認する。すると突然画面が見えなくなる。
「だーれだ?」「誰だってアリスしかいないだろ。」
「正解!待った?」後ろから俺の正面に回って上目遣いで聞いてくる。うわ、この感覚久しぶり。可愛すぎるだろ。彼女よりも先に彼氏ができたらどうしよう。
俺は目をそらして「いや、今来たとこ。」恥ずかしくて思わず目をそらしちまったよ。
「そっか!よかった!」アリスが満面の笑みになる。だからやめろそれ。変に意識するから。「じゃ、じゃあ行こうぜ。」「うん!」
俺らはとりあえず駅から歩いた。
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「おい、あの子超可愛くね?」「芸能人かな?」周りが超俺らを見てる。やばいよ、この視線に耐えきれないんだけど。
「ねえ、何食べよっか?」「え?ああ。」ぶっちゃけ俺の中ではアリスというよりも大河の頃の認識が強くある。だから連絡してる時は大河と連絡してる感覚で行くからよく行った思い出のラーメン屋に行くつもりであった。
しかし、こうやって面と面を向かって会うとアリスとして認識するのだ。だから俺の中ではよく知ったやつと連絡しているのだが、会った時は別人が来ちゃったみたいな感覚になる。そこにギャップが生まれるのだ。
だから大した意識もせずにくるのだが、まずいよな。周りが「え?あんな可愛い子いるのにちょっとおしゃれなお店にも連れてってあげないの?」みたいなことになりかねん。となると・・・
「あ、ああ。あの店でも入ろうか。」俺は目の前に見えたたかそうな店を指差してそう言った。
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「御注文がお決まりの頃、お伺いいたします。」「はい。」あわわわわわわ。なんかとんでもなく場違いなところに来てしまった。メニューが前菜?は?何これ?なんか日本語なんだけど日本語ではない言葉で書かれているんだけど。
「春きゅん、大丈夫?このお店すごく高そうだけど。」「ええええ、ああ、だ、大丈夫。好きなもの頼んでいいからな。今日はアリスにお礼するつもりで来てるからさ。」「先から声震えてるよ。」
2万円持って来たけど足りるかな?こんなとこ入るんじゃなかった。「今からでもお店変える?」「いや、いいよ。たまには高いものでも食おうぜ。」もうここまで来たら腹をくくるしかない。ん?コース料理?
コースなら7千円ぐらいで頼める。つか最低の価格のコースで7千円かよ。単品で頼んでもやばくね?
つか何の料理なんだよこれ。フランス?
「お決まりでしょうか?」「ああああ、はい、あ、アリスは?」「私はメインのこれで。春きゅんは?」
「じゃ、じゃあ同じので。」「かしこまりました。」全く決まってなかったから同じものをつい頼んでしまった。
「ルナお嬢様、大学ではいかがお過ごしですかな?」「はい、とても楽しく過ごしておりますわ。」「それはそれは。」ん?聞いたことのある声だな。つかルナお嬢様?俺は行儀悪いとは思ったが振り返る。白いドレスに身を包んだショートヘアーの美女と感じの良いおじいさんがいた。何だ気のせいか。俺は前を向く。
「どうしたの?急に後ろを振り返って。」「いや、知り合いがいたと思ったから。」「え?知り合い?神田さんのこと?」
「「え?」」同時に声が合わさった。「「え?」」そして同時に振り返る。「「えええええええ」」
「お客様、店内ではお静かにお願いいたします。」「「はい。」」そして同時に注意される。
「ほっほっほ。お嬢様、ご学友の方ですかな?」「え、ええ。まあ。」神田は戸惑ったように返答する。
「お嬢様とか・・・」俺は笑いをこらえるのが必死だった。「春きゅん、それは失礼だよ。」アリスが小声で注意してくる。「だってあの神田だぞ。あの神田がお嬢様。ププッ。」「笑うのは良くないよ。それに神田さんがお金持ちなのは当然だよ。神田さんのお父さんはうちの大学の学長だし。」「え?」俺は振り返る。何やらすごい殺気を放ってらっしゃる。
「春樹さん、アリスさんご機嫌よう。こんなところでお会いできるなんて嬉しく思いますわ。」
喋ったら殺すとでも言わんばかりにギロッと睨みをきかしてくる。ひい。
俺はその後怖くて何を食べたのかも覚えていなかった。でもとても少なかったということだけは覚えている。
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「ではお嬢様、私はここで。ご友人の皆様、お嬢様をよろしくお願いいたします。」そう言うと、タキシード姿がやけに似合う老人は去っていった。
「ええ、またよろしくお願いいたします。」笑顔で神田が手を振り見送る。
「やあ、春樹くん。先ほどはどうも。」神田は笑顔だが目が笑っていない。「ほら、春きゅんが笑うから
神田さん怒らせちゃったじゃない。神田さんごめんね。気悪くしちゃったよね。」「いや、山本さんが謝ることはないよ。」
「すみませんでしたああああああ。」店の前で音速で俺は土下座をした。「いや、流石にそれはやめてくれ。それよりも二人はどうしてここに?」「いや、春きゅんがせっかくだから高い店行こうって。」「まあアリスには感謝してるからな。」俺は恥ずかしさを誤魔化すために目をそらしながら言った。
「そっか。でもここじゃ量が少なくないかい?」「う、うんちょっとね。」アリスは俺に気を使ってくれて一番安いもの選んだ。おしゃれではあったが少し物足りないというのも事実だ。
「実はこの近くに美味しい焼肉屋があるんだ。山本さん好きだよね?よかったらいまからみんなでいかない?お金なら、そこにいる男性がみんな払ってくれるだろうし。」神田さん、そんな目で見ないでください。俺が悪かったよ。
「で、でも・・・」アリスがこちらをチラッと見る。「ああ、行こうぜ。俺もまだまだ食べ足りないしな。アリスのお礼もきちんとしたいしな。」「じゃあ決まりだね。」
二次会で焼肉屋に行くことになった。とても楽しい時間だった。3人で2万5千かかってダッシュで家までお金を取りに戻らされたが、二人を満足させられることができて僕は幸せです