第42話 後 伝染
「村長、これはなんの真似だ」
「勇者様が…勇者様がいけないのですよ! 勇者様が報告しようとしなかったら我々もこんなことしないのに」
「村長!皆!こんなのおかしいんだよ! なぜ別の方法を考えようとしない。僕だってこうして生きてるじゃないか。思考を諦めなければもっといい方法を思い付けるはずだ」
「勇者様もこの村の出身であればきっとそんなセリフ吐けないはずだ。我々だってこんなことしたくてやってた訳じゃない! 最初は勇者をうまく騙せなかった。正直ホッとした自分が人を殺せずに済むのだからなぁっ! 村にこんな沢山の人がいるのに、自分が選ばれるはずがない。自分とは関係のないことだと思った。運がいいと言うべきか、私は魔物になれずにすんだ。けど、感情というのは伝染するものだ。子供作らなくても、いくら無関係を装っても、知っている人が魔物になって、殺されたと知って悲しまない訳がない。結局、どんなに人と距離をとっても、村の一員に変りはないんだ! 毎朝元気よく挨拶してたあの子も、悪戯ばっかりして私を困らせたあの子も。死なせていい人なんて一人もいないんだ。魔物になった娘に手をかけられなくて、息子と妻が殺された人だっているんだ。確かに、勇者様の言う通り、十年もあればもっといい方法が思い付けるかもしれない。でも、万一なかったら?なかったらどうする」
「それでも! そうだとしても、人を騙し、殺していい理由にはなれない! 万一なかったら? 思考を放棄してどうする!」
「勇者様はさ、綺麗事並べてるけど、本当は根に持ってるだけじゃないのか!」
「違う!諦めさえしなければ今度みたいに犠牲者を出さず…」
「そんな方法がある保証なんて何処にもいないっ!」
「例えば国に報告して国家魔術師協会に助けを求めば…」
「そんなことしたら全員実験材料になる!勇者様はまだ若い。まだ何も知らないのだ」
「カイル、もう何を言っても無駄だ。ここから逃げる手段だけを考えよう」
「どうやらそのようだな」
「逃げる? 皆、勇者様を逃したら我々はどうなるのか、わかっているよね!」
「魔法生命体だけを攻撃するんだ」
「わかったよ。でもこの数やばくない?」
「何とかして包囲網を突破するんだ」
「何とかしてって」
「勇者様、助けて頂いて本当に感謝している。どうか、我々のために死んでください」
大丈夫。いざになったら召喚獣に頼めばいい。私には強い召喚獣がついている。




