第41話 前 蜜の味がするもの
ケイリから髪の魂を取り出した後、カイルからケイリへの恐怖心を取り除いた。
我々は生き物ではない。だから、摂食する必要もない。だが、死神がリンゴを食べたがると同じ、我々にも好物がある。それは、蜜の味をする甘いものだ。
ケイリの前の契約者とその妹君は孤児だった。契約者はケイリと同じ、対償を恐れ、私を召喚しようとしなかった。盗みを働いても、私を頼ろうとしなかった。しかし、契約者は病に苦しむ妹の姿を目にして嘆いてた。そんな時、私は契約者に話をかけた。対償さえ払えば私が契約者の妹君の病気を治すと。契約者は同意した。だから、私は契約者の妹君の病気を治した。対償として契約者は右手の人差し指と親指を失った。
スリ現場が見られ、契約者は痛め付けられた。元気になった妹君は契約者の負担を減らすために、自身の容姿と才能活かし、歌手として金を稼いていた。あの頃の契約者は本当に幸せだった。しかし、その幸せも長く続かなかった。帰りが遅い妹君を探すために、街を走り回った契約者が目にしたのは、裏路地で衣を纏わないまま泣いていた妹の姿だった。怒り狂った契約者はまた私の助けを求めった。妹君の忌々しい記憶を消すことと、妹を泣かせた罪人に相応な報いを受けさせることを願った。私は罪人に不死身に近い体を与え、痛覚を除く感覚と五感を奪った。契約者は歯と味覚を失った。食事の喜びを二度と味わない契約者のために、妹君は食べ物を食べ易くしたり、自分が咀嚼した食べ物を契約者に食べさせたりした。
契約者が私との最後の取引は、妹君を復活させることだ。私は契約者のすべてを差し出すと提示した。契約者は承諾した。私は契約者の妹を蘇らせ、契約者のすべてを奪った。契約者のすべてとは何か。それは、契約者が一番大切なもの、即ち、契約者の妹だ。が、それでは契約者の願いに違えることになる。だから、私は契約者の妹にとって大切なものを奪うことにした。妹君の一番大切にしてるものは契約者なので、二番目と三番目、つまり、妹君の声と美貌を奪った。妹君はショックに耐えきれず自分の命を絶った。契約者は私を呪い、妹君の後を追った。
そう、私が求めるのは人間の体や魂ではない。私が求めるのは蜜の味がするものだ。一度でも私の力を求めたら、人間は私を頼ろうとなる。人間の力ではどうにもならないことも、諦めがつかなくなる。
ケイリ、あなたの甘い蜜、いつ味わえるでしょう。




