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第37話 後 操り人形

宴か。初めてかもしれない。皆カイル兄さんを見て本当に嬉しそうにしてた。

「勇者様、来てくれてありがとう」

「本当、勇者様が来てくれなかったらどうしようかと」

カイル兄さんも嬉しそうで何よりだ。カイル兄さんも人の役にたちたくて冒険者になったし。

おかしい。カイル兄さんにお礼を言った人は沢山いたけど、カイル兄さんを応援する人は一人としていなかった。これはどう考えてもおかしい。だって、これから魔物を討伐しに行くのに、応援してくれる人が居ないんだなんて。普通は『来てくれてありがとう』より、『魔物討伐頑張ってくださいね』でしょ。まるで、カイル兄さんが来た時点で問題が解決したような言い方。村長もそうだった。まるでカイル兄さんが聖剣を手にしたらすべてが丸く収まるような口振りしてた。

やめよう、そういうの考えるのを。私、嫌な女だ。嫌なことばかり考える。

「どうした? ケイリ、浮かない顔して」

「カイル兄さん…ううん、なんでも、ない」

「そうか。何があったら言って」

「うん」

それにしても、聖剣って本当に綺麗だね。輝いてる。何だか無性に聖剣を手にしたくなった。聖剣ってなんか人を魅了する力でもあるのかな。

「ねぇ、カイル兄さん」

「ん?」

「や、やっばり何でもない!」

「変なケイリ」 

どれくらい重いのでしょうね。暗い洞窟に入ってもはっきり見えそう。私も聖剣が欲しい。

え? なに考えてるの、私。聖剣は選ばれし者しか使えないし。そもそも、私も剣が使えないから色々苦労してるではないか。それに、この聖剣は呪われてるのよ。あれ? 私の今の気持ちって、もしかして、呪いのせい? 

ぐっ、急に胸が苦しくなった。息が、出来ない…。

「どうした?」

「急に、胸が…」

カイル兄さん、すごく心配そうな顔してる。それより、村人の皆を…やはり、私が今どうなってるのが分かってるんだ。早くカイル兄さんに伝えなくちゃ。

「カイル兄さんっ!」

「アシュリー! 早く来て! ケイリが」

「カイル兄さん、聞いて…」

「何?」

手が、勝手に、聖剣に…まさか、ダメ!手が勝手に聖剣を抜いて…。

「ケイリ?」

ダメだ、絶対にカイル兄さんを刺すなんてしない! しないのよ! きっと勇者補佐の皆もこんな風に操られてた。いや、私は負けない! 絶対に。でも、この状況、どうすれば…手を抑えるのが精一杯だ…手が言う事を聞かない、足も自由に動か無い以上、どうする事も…いや、まだよ。首が動く、動ける。私は首を聖剣に当て、喉を…。


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