第33話 後 乙女
おばあちゃん、助けて! そうだ、でもまあのおまじない! でもまあ、えーと、でもまあ、何?
「ケイリ、会わせたい人がいる」
「誰?」
「会えば分かる」
カイル兄さんが会わせてくれたのは四十代くらいの女性だった。
「カイル兄さん、この人は?」
「私の息子は蛭に感染された水を飲んだ。私は息子、いや、息子の皮を被った蛭に殺されかけた。私はあの生物を許せない! 川の水を飲むだけであんな化け物になるなんて理不尽だ! どうして、どうして私の息子はこんな目に! あの忌々しい蛭を全部、一匹残らず根絶やしして!」
悪意、憎悪、負の感情ではあるがとっても強い。
カイル兄さんはどうしてこの人を会わせてくれたのかな?
帰り道でカイル兄さんが話してくれた。
「ケイリ、このような悲劇を生まないためにも、僕達が頑張らないと。ランクが上げても、上がらなくても、やることは変わらない。僕は騎士じゃないが父から騎士の精神を受け継いてる。冒険者は単なる人助けの手段にすぎない。冒険者の肩書きが人助けの妨げになったら、僕は迷わず冒険者を辞める。ケイリ、僕の側にいて、僕のサポートしてくれないか?」
正直、あの女性のことはどうでもいいけど、カイル兄さんが、私を必要としてる。この気持ちはなんでしょ。今無性にカイル兄さんを抱きしめたい! 触りたい! 手を繋いたい! 心臓がパクパクする! 私、生きてる!
「あ、あのね、カイル兄さん」
「どうしたの?」
「ちょっと、疲れた」
「休む?」
「ううん、あのね、カイル兄さん、えっとね、お、お」
「お?」
「おんぶ、おんぶして、欲しい、だけど…。ダメ?」
「いいよ、お安い御用だ、と言いたいところなんだが、革鎧とは言え、結構硬いんだ。だから、よいしょ」
「ちょ、カイル兄さん?」
「うん?」
嬉しい! あ、やばい!
「違うのよ! 私は軽いけど、アイテムが重い!」
「うん? アイテム含めても全然軽いよ。ケイリ、ちゃんと食べてる?」
「食べてる、よ?」
ずるい! お姫様抱っこずるい! だって、顔がこんなに熱いのに、恥ずかしいのに、顔逸らしても隠せない!
気ついたらもう自分の部屋に戻ってた。幸せ、本当に幸せ。カイル兄さんと2人の時間はいつも幸せ。どうしたらこの幸せを保てられるの? そう、メイさんが入った時からすべてが変わった。2人ではなくなった。でも、カイル兄さんの足を引っ張ってるのもまた事実だし。
私、頑張らないと! 変わるの、カイル兄さんのサポートできるように!




