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第33話 前 瞳

昨日も蛭、今日も蛭、当然、明日もまた蛭。


 「ケイリ、考えてることは分かる。でも、ランクアップ出来たとしても、僕はここで蛭を狩るつもりよ。お金やランクのためではなく、ここに生活する人々のために」


 そんなこと、もう考えないようにした。今気にしてるのは…。


 「ケイリ、このバカタレ! こんな簡単に蛭を倒せるんだから自殺なんて考えてんじゃないわよ!」

 

 どうやらアシュリーさんが私に対する印象は自殺したがるかわいそうな人に変わったらしい。メイさんは…。私の勘違いじゃなかったらメイさんはあたしのことを嫌ってる。メアリーさんは相変わらず何が考えてるのが分からない。


 私は別に死にたいわけではない。ただ、生きるのが疲れただけ。なのに、未だに人間関係に悩まされなければならない。


 「蛭の繁殖期が過ぎたら国境に行く予定。あそこの魔物は非常に危険で攻撃的と聞く」

 「呆れた。新首都で蛭を倒せるチームは他にもいるじゃない。別に私達がここに残らなくても。ヒーローごっこに巻き込まないで」

 「メイ、酷いな。一匹でも取り逃したらまた上流に戻って産卵するぞ。想像できるのか、大切な人が突然野獣のようになって、長い舌でお前の血を吸い尽くすのを。こんな悲劇を産まないためにも、一匹も多く倒すのだ」


 すっかり元通りになった。そう、私が戻る、いや、来る前のように。そして、カイル兄さんの隣に座るのが私じゃなく、メイさんとメアリーさん。


 「蛭はあの子達の餌にはなれないのに…。はあ、分かったよ」


 正直蛭とかどうでもいい。他人のことを気にする余裕が今の私にはないのよ。


 昔、当たり前のように、カイル兄さんの隣にいるのは私。暗い気持ちになっているのは私だけ。ダメだ、もう何のために生きているのがわかんない。ここから逃げたい! 私だけ別の世界にいるのはいや。誰が蚊帳の中に連れててよぉ! カイル兄さん、助けて! 昔のように。


 「そうか、それは楽しみだな」


 昔のようにはならない。もうカイル兄さんの瞳に映るのは私だけではなくなった。私はカイル兄さんしかいないのに、カイル兄さんにとって私はただこのパーティの一員…。


 私、自殺しようとしたんだよ! 私を見て! そのために自殺しようとした訳じゃないけど…、私を、見てよ…。


 「…り、ケイリ、聴いてる?」

 「うん? 何?」

 「頼りにしてるって」

 「う、うん」


 はあ、人間は何のために生きているんでしょ? 虚しい。


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