第59話 後 好意
「やっと起きた」
「ケイリ?」
「あの……カイル兄さん。私、このパーティーに居てもいいよね」
『主人様よ。そんなドキドキしなくても』
「もちろん。というかケイリがいないと困る」
どうやらちゃんと記憶を消したみたい。
『もちろんだとも』
「……あのね、カイル兄さん……」
「どうしたの?」
「……あの、カイル兄さんは……メアリーさんのこと、ど、どどどっ…どう思っているの?」
「メアリー? とっても頼りになると思うよ。メアリーってそんなに言葉が多いわけじゃないが、誰かが言わなくてはならない言葉を言ってくれたりするんだ。本来であればこれはリーダーである僕の務めだ。だからメアリーにはいつも感謝してる。価値観も正しいと思うし。魔術師としての実力も申し分ない。うち、いや、僕には勿体ない素敵な仲間だ」
ミセリア、これはどういうことなの? カイル兄さんまたメアリーさんのことがまた好きじゃないじゃないか!
『主人様よ。私には仲間を褒めてるとしか聞こえないが。女性としての魅力について一言でも言ったのか?』
でも、好意を抱いているように見えるよ。
『あのね、主人様。私は好きになったきっかけになる記憶を消しただけ。好意を抱かせないようにするには、メアリーに対する記憶全部消さなければならなくなるぞ』
でも……。
「ケイリ?」
「あひっ、うん? ど、どうしたの?」
「ケイリもメアリーに負けないぐらい素敵だと思うよ」
私はカイル兄さんの幼馴染なのよ! 何年も一緒にいた私がメアリーさんと同じくらいでしかなかったの?
私は昔カイル兄さんと……あれ、思い出せない。あれ?
『主人様……だから、その記憶はもう……』
あれ? 私、カイル兄さんとどう出会ったの? いつからカイル兄さんって呼ぶようになったの? 血が繋がってもいないのに?
「ケイリ? どうしたの?」
「うん? どうにも、してない、よ?」
「じゃあどうして泣いているんだ?」
「私、泣いて……」
思わず部屋から飛び出した。カイル兄さんは私を追うとして転んだ。私は振り向かず全力で走った。
過去よりは未来。記憶がなくとも、私がカイル兄さんのことが好きだという気持ちは変わらない。分かっている。……分かっているのに、涙が止まらない。なんて私がこんな目に。心が締め付けられるような……。苦しいよ。お父さん、お母さん、助けてっ!




