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第59話 前 過去

もっといい方法?

 『左様』

 「皆、ごめん。ちょっと考える、時間が、欲しい」

 「分かった。明後日クエスト受注するから明日までにしてよ」

 「うん」


 そのもっといい方法というのは?

 『主人様もご存じの通り、私の力を使うのに、代価が必要。主人様も渋々ながら決断した。私と契約していかければ、主人様とその仲間達が死んでいた。要するに、主人様には今後も私の力が必要になるであろう。仲間達と約束を交わしたとしても、いずれは約束を破り、追放されるであろう』

 一理ある。けれど、約束しなければそもそもパーティーに居られない。

 『居られるだとしたら?』

 どうやって?

 『簡単よ。仲間達の私の記憶に関する記憶を全部消せばいい』

 ……。

 確かにそうだけれど……。あ、でも、まだ代価が要るよね。今回くらい免除してくれない?

 『主人様よ。安心するが良い。今回の代価は体ではない。記憶だ』

 記憶?

 『そう。主人様のカイルとの子供の時の思い出が今回の代価だ』

 そんなのいや! カイル兄さんとの思い出は私にとってかけがえのない宝物なんだよ。それに……カイル兄さんのことを好きになったきっかけだったあの思い出を忘れたら……。

 『案ずるでない。記憶がなくなっても、感情は消えることはない』

 例えそうだとしても……。

 『主人様よ、御主は未来より、過去を選ぶのか』

 ……でも、カイル兄さんは自分で召喚獣のことを気付いていたし。例え召喚獣に関する記憶を全部消したとしても、また気付いたら意味ない……じゃない?

 『仰る通りだ。されど問題にはならない。疑わないよう、全員の記憶を書き換えばいい。主人様が私を召喚した時のことを消去、主人様が元々左利きだったように改竄する。さらに言えば私は自ら主人様の仲間達の記憶を覗いて私のことを想起されないように書き換える。それなら問題ないのでは』

 記憶、私の大事な思い出。でも、そう、過去よりは未来。

 ミセリア、おまけ一つつけてくれる?

 『おまけ?』

 そう。皆のメアリーとカイルが付き合ってることに関する記憶……加えて、カイル兄さんとメアリーのお互いのことを好きになったきっかけや思い出も全部消して欲しい。

 『よかろう。取引成立だ』

 ちょっと待って、明日皆と会う時にして欲しい。

 夜、私は一睡もしなかった。カイル兄さんとの思い出を泣きながら噛み締めた。一夜が短過ぎるくらい。人間ってそんなに涙流せるんだとも思ってた。

 

 じゃあ、ミセリアさん、お願いするよ。


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