第二章第二話 初デート(?)は疲れ果てたから
「あのな、なんでお前に避けられてるのがよくわからないけど。」
村の近くの森の中で、歩きながらアイツはそう言う。
今日は、色々と採集して、それで村人たちと旅の用品を交換するために森に来た。アイツと二人で。
昨日契約やらされたあと、アイツが村長たる人物のところまで連れてて、これから旅に出ると告げ、相談した。
村長はとても優しいおじいさんで、祖父のことを思い出し、少し泣きそうな気持ちになった。
その後はやはり硬いパンとたぶん野菜で作ったスープで晩ごはんご馳走してもらって、アイツと同じ部屋に案内された。
文句言おうとしたが、
「この部屋を貸してくれるために、一家族がバラバラにされて他の家で世話になってもらってるぞ。それでももう一部屋頼めるのか?」
とアイツが耳元で囁いた。
「じゃあ外で寝る。」同じ部屋とかありえないし、なんなら自分が出ていくだけでいいだし。
「好きにしろ。あとで戻ってきても笑わないからな。」
ネズミやGがいない、寝れそうな倉庫などは、この村にはないとほんの少しあとでわかることななり、
仕方なく部屋の隅で壁に向って休むことにした。
もちろん、眠れなかった。
アイツの寝息が憎たらしく聞こえてくるから、余計に色々と気にしてしまって、何回も寝落ちそうだけど、起きてしまった。朝までずっと繰り返してて、寝なかったのに更に疲れてしまった。
朝ごはんも、眠くて、あまり食べ易いではないあの硬いパンは一口もかけられず、
これからずっとこんな生活しなきゃならないと思うと…瞼が重くなった。
森へ行って、果実やツタや薪を拾ってくれば、寝袋などと交換してやると村長が昨日言ってたので、今日はそのために森でささやかな探検。
睡眠不足にお腹ぺこぺこにとなりにアイツ。こんなにも辛いのは初めてかも。
死なないらしいけど、さすがに眠くなるから、これからはどうにかして睡眠はちゃんと取ろうと密かに決めた。
「避けてない。考えすぎ。」
もう頭を使わせないでよ。
「いや、絶対避けられてる。駅のときもそれで暴走したろ?」
言いながらアイツは落ちている薪を拾って、用意された袋に入れる。
「ノーコメント。」
「コクといては避けるってどんなプレイ?」
「そもそも告白じゃなかったし。」これだけは伝えなければ。
「もう、大好きすぎるよショウさまぁ♡」
アイツがくねくねしてキラキラの目でこっちを見やがった。
もう殴っていいよね。例えば傷が分かりづらいお腹へストレートを入れてみるとか。
「痛っ!」手がすごく痛いけど。
「筋力がないくせに人を殴ろうとしたからだ。」そして手が取られて、
手の甲に柔らかくて温かい何かが優しく落ちてきた。
その時。
手がいきなり離されて、拾った素材がたっぷり入った袋に押し付けられて、
アイツが剣に手を付けている姿が見える。
「落ち着け。たぶん野獣だ。」
どこのハンターだよアイツ。落ち着けと言われても、昨日まで高校生やってたから無理。武器とかがあってもありえない。
カサカサと、アイツの前の茂みが激しく揺れる。次の瞬間、黒い影が飛び出した。
「狼か!」アイツが剣で影を止めた。そういえばうちの生徒会長さん、剣道部と掛け持ちだと聞いた気が。なるほど、少しは本物でもそれらしく使えている。
「血が苦手ならあっち見てろ。」
「どっちの血なの?」
「戦ってみるけど負ける気がしない、お前を守るためだからな。」
なんか違うし…経験値が多めにもらえるだけでは?
と色々考えだしたら、初めて聞く音たちは少ししてやんだ。
「もしもーし?やられた?」
そうならちょっと嬉しいかも。イケメンがやられたのはもったいないけど、これから静かに暮らすためには一人の方がずっと楽だもんね。
「バーカ、そんなわけ無いだろう。」
チッ、そんな上手くいかないことが多すぎ!
「皮とか剥いてみるから、こっち見るな。警戒してもらいたいが、いいか?」
またまたハンターモードになってるアイツ。
「いやだけど、やるしかないよね。」と落ち着いて周りの音や気配などに集中してみた。けど、いつもとどう違うのかわからないので、悔しいけどあとで聞こうかなと思えてしまった。