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第二章第一話 アイツが…

やる気が全くない。

でも、このままこの洞窟みたいな場所にずっといても意味がない。

いくら命の安全が保証されていても、

洞窟の中では居心地がね…

と思うと、やはり、出てみることにした。


立ち上がって通路に入ろうとした時、いきなり周りが白く光りだして、眩しくてなにも見えなくて、つい立ち止まった。

目がチカチカして気持ち悪くて、シア寄せながら決めた。

これから出会う変な現象はすべてあのインチキ死神のせいにする。そうしないときっとやりきれないと思う。


しばらくしてたら目が治って、今自分がいるのはただ普通の草原のど真ん中だと気付いた。

どこまでも続く青空に眩しい太陽に爽やかなみどり。

「やはりあれの仕業だった!もう少し普通にしてくれたらよかったのに!」

都市育ちの私にとっては綺麗な景色を眺めながら、思わず文句言っちゃった。


気だるいけど、近くに村があるとあれが言ったから、探すことにした。

そうしたら思ったより早く、ギリギリ見えるような場所で村っぽいものを見つけた。

早足で向かうことにした、のはいいけど、

今更すぎるけど、靴も靴下も制服も、微妙に濡れたままで、

テンションが更に下がったのは言うまでもない。


*************************



その村は、まるで小説に出てきたような、辺境あたりで、入浴設備すらなさそうな、

食べ物は硬いパンと適当なスープしか作れないような、とても古典的な主人公が生まれ育ちそうな田舎の村で、百人いるかどうかも微妙かな。

けどこんなのどかな雰囲気は嫌いじゃないから、とにかく村の外に警備している、話しかけやすそうな感じの中年男性に話しかけてみようかな。


もちろん、言葉が通じなかったら、ソク脱出するつもりではいる。足だけは並以上の自信はある。


「こんにちは。」勇気出して真正面に出て、あいさつしてみる。


「おや?こんにちは。」男性は少し姿勢を変わって、手を腰につけている武器にかけながら、じっと視線を投げてきた。「見かけない顔だな。」


言葉が通じるのが嬉しい。これなら少し話し聞いても良さそうな感じ、かな?


「あの、私、誰かに拉致されてたけど逃げ出して来ました、ここはどこなのか教えてもらえますか?」

この世界では明らかに異常である制服を着て、違う国から来たしか言い訳できなさそうと思うよね。なんなら記憶喪失もあとで場合によって追加しようかな。異世界知識が役に立ってよかったと言える日が来るとは…。


「え、まさか?」動揺を隠そうとしてた男性がチラッと村のある方角を見た。

「お嬢さん、あいつの連れだったのか!?」


あいつってどいつだよ。

「えーと?意味がわかりませんが…」

ここは礼儀正しくするのが正解かな。


「実は昨日、お嬢さんと似たような服を着た人を一人保護したが…連れてくるからちょっと待ってくれるか?」

言いながら走り去っていた男性の後ろ姿を見て、嫌な予感しかしないのはなぜでしょうね。


似たような服で、

私に巻き込まれてこの世界に来てそう人といえば…

もう、アイツしかいなくない?!


逃げたい、もう何もかもから逃げたいと思ってるけど、

ここから逃げ出せば行くあてなどもう無いだろうし、

この逃げ出したい衝動に従ったろ、何か思わぬ事故をまた起こすような気がして、

力いっぱい耐えてみた。

あと何分で戻ってくるだろうとドキドキしながら、落ち着かず男性が向かった方向だけを見ないで村を観察してみた。


やはりすごく標準的な、冒険の最初の村みたいな場所で、

そんなのが三次元にまるごと出てきた感じで、

将来のVRゲームはきっとこういう風になるなとか考えているうちに、あの方向から何やらすごい気配がこっちに来てるのが感じた。

全身に蕁麻疹が起こるような拒否感。


「やはりお前だったのか…」

真正面から伝わってきた声。確認するまでもない、間違いなく、鷹嶺翔司(あいつ)だ!


「ひ、人違いです…」俯くまま思わず思ってもいないことで返事した。


「あれ?探している子じゃなかったのか?」


「いいえ、この子で間違いありません。ただ別れる前にケンカしたので、まだ許してくれないでしょう。」

いつもの優等生ぶり。

「連れてきてくれてありがとうございます。話したいので、あとで戻ってきますね。」

と言いながら私の手を引っばった。


うをををおおおおおおおおおおおおぉぉおお

とアイツに付いていながら心の中で叫んでいます。同時に心のどこかで、理性が、まずは状況把握しなくては、と何度も何度も言いつけてくる。


「ここなら誰にも聞かれないだろう。おい、聞いてるか?」

いつの間にか薄暗い倉庫みたいな建物の中にいる。

顔を上がることがとてもできないから、よくわからない。


「もーしもーし?」いきなりアイツの顔が視界に入った。

しゃがんだとは…!これは目を潰さなきゃだめな感じ?

あ、いや、ここは冷静に話してみよう。話によってはもう二度と会わないで済むかもしれないから!


「な、なんでこ、ここにいるの?」やはりトラウマの原因と話すのが難しい。死にたい。あ、もう死ねないか。


「ホームでお前を助けようと思ったら、次の瞬間この村の外にいたよ。」


いつもの優等生の口調がこうなったのは、ちゃんとしなくていい相手だとわかってるから、とは知ってる。けど、敬語で話されてはきっともっと気持ち悪いはず。うん。


「そうしたらクロエという自称死神が、色々と詳しく教えてくれては、帰りたければお前についていけ、だ。」

アイツが立ち上がって、両手を私の両肩に乗せてきた。もちろんこっちは顔を上がるつもりないし、目も開けるつもりはない。

「さっさと始めようじゃないか、人助けて生活。お前だって帰りたいだろ。」


もう、これ以上我慢できない。


「ちょっと待って、エネルギー集めのための人助けはちゃんするから、付いてこ…」


あ。ついつい言っちゃった、と思った瞬間。


「言質、ちゃんと取れたな?」なんか声がこっちじゃない方向へ向かってるけど。


「うふふ、さすが生徒会長くん♪これで契約成立、ちゃんと集めてくれるなら色々と力与えるよ!」

クロエの声がさっきあったより楽しそうなのがわかる。どこにいるのかはわからないけど。


*************************



「と言う訳で、これからもよろしくな。」と微笑む悪魔。


クロエと契約成立した。

この世界で人助けで生命エネルギーを集めるため、

力を与えてくれました。


まずはアイツ。

私のための行動であれば、あらゆる経験がいつも多めに貯まるって。

この世界はRPGみたいにできてるらしく、経験積もればちゃんと強くなる仕組みで、

そして人助けと言ってもこの世界は力で物を言う状況も多いから、護衛たるアイツは早めに強くなった方がいいらしい。

それとこの世界らしい服と革の防具に何かの金属製の長剣。


私は。

私に付いてくれる人には何らかの力が与えることができるようになった。

以上。


はい、以上でした。それだけでした。

装備はおろか、着替えもないの、まだ微妙に濡れているのに!


そしてどうやらアイツへの拒否感が穏やかになってる。

クロエ曰く、仲間の顔も見れないでなんかさみしくない?と魔法みたいなものをかけてくれた。

まあ、気持ちまでは変わらないけど。いいか。


がんばってアイツを見てみたが、

初めてちゃんと目合わしたら、


やばい。


イケメンすぎで目と口が大きく開いてぼーとしちゃった…


柔らかそうな、染めてもいないのに少し栗色が入ってる髪。

時には優しそうで時には悪魔のような目。

背高くて、乙女ゲームキャラみたいな低くて魅力的な声。


そう、

この鷹嶺翔司こそ、あまりにも美形で周りの学区までも魅了した、

我が校の生徒会長で、二次元キャラのような人で、

私のあの不本意な告白を、何故か、

はい、と返事した人である…。

無気力なヒロインなので、仲間がいなきゃそのまま最初の村で引きこもりそうでした。

さて、これからどうすればいいかな…

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