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ルナファルシアカオスティックドメスティックアスホール

作者: 弐屋 中二

「立山君、わたし、君のことが……」

いつもの高校の帰り道、

カリナが俯いて俺に何かを言おうとしてきた。

俺ももしかして……という期待に胸がドキドキしている。

「君のことが好……きゃあああああああああああ」

「うおおおおおおおおおおかりなああああああああああ」

上空から伸びてきた大きなタコの手に

カリナは連れ去られていった。


それから二十年後


人類は巨大タコ人の侵攻によって滅亡の危機にあった。

「みんな、準備はいいか」

「やつらに一発かますんだ」

俺たちは銃火器で武装して塹壕の中

やつらへの反攻の機会を待っている。


ヒュルルルルルルルル


「何の音だ!?」

「みんな逃げろおおおおおおおおお」


ドガアアアアアアアアアア


タコ人たちの磁界爆弾が炸裂して

俺は死んだ。


俺の魂は、仲間が大量のタコと戦ってるのを見ながら

空に上っていった。

ああ、カリナはどうしているのかな……

今頃天国で……


起きろ……起きろ館山

起きるのだ立川

「すいません僕、立山なんすけど……」

すまなかった中川……

勇者中山田よ……

「ええ、まあ名前はどうでもいいっすわ。

 で、どちらさまですか」

神だ。私は神だ。

「上田さんがなんの御用ですか」

お前にこれから、蟹として転生する機会を与える。

「かに?人間じゃなくて蟹?」

蟹だ。蟹としてこの世を救うのだ。

行け、勇者ミスボアンヌよ


「それ、面白くないっすよ……うわわわわわわ」

俺は次の瞬間の蟹の幼生として生まれ変わっていた。

ゾエアという動物プランクトンだ。

そして川を流れていく途中で

大きな魚の口に入ってしまい

俺の蟹としての生は早くも終わった。


気付いたら俺は地獄に居た。

身体はプランクトンのままである。

小さな水槽に入れられて木の椅子の上におかれた。


目の前には大きな裁判官の席がある。

「勇者ミスボアンヌよ!

 お前は期待されていたにも関わらず失敗した!」

そこに座っている巨大な鬼が大きな声で俺を責める。

「つうてプランクトンっすよ?何ができるんですか」

一応抗弁を試みてみたが、発声器官がないので言葉がでない。

「お前を女子高生言葉攻めの刑に処する!」

「まじで!」

俺はなんだか嬉しくなった。


プランクトンとかキモイよねー。マジ終わってるわー

まじうざくない?プランクトンだよ

元人間だってーぜったい元もキモイよこいつ


三人のピチピチ(死語)女子高生に囲まれて

木の机の上に置かれた小さな俺は水槽の中で

至福の時間を味わっていた。

だが残念ながら生殖器官は未発達なのだ。

魂で俺は楽しむしかない。


またくるからなっ!あーちょーキモかったわ


向こうに去っていく、女子高生達の罵りを魂で感じながら

うっとりとしている。俺の至福の二時間十分は終わってしまった。

そしてまた裁判官の前に引き出される。


「どうだ反省したか、勇者ミスボアンヌよ。

 プライドの高いものが発狂することもある地獄の責めだ」

「たのし……いや反省しました!おかわりくだ

 ……いやでもまだ罪が贖えていません!

 ワンモアプリーズ!」

「そうか、反省したのか。よし再び現世に生まれるが良い」

俺の魂の叫びは、発声器官のない身体を

乗り越えるには至らなかったようだ。


「ではミスボアンヌをタコ人として生まれ変わらせる」


目が覚めたとき、俺はタコ人の赤ん坊だった。

タコクラス幼稚園に通い、タコ小学校、ドンタコス中学、

タコ山高校、そしてセンターユニバーシティオブグランオクトパスを卒業した俺は

一流の企業に勤めて銀行のATMなどを作り管理するシステムエンジニアとして

それなりの生活をしていた。


そんなある日のことだ。

「ミスボアンヌくんもそろそろ結婚する時期じゃないのかね」

飲みに誘ってきた会社の部長から、急に提案される。

俺は一流大を出ているので将来の幹部候補なのだ。

「ええ、まあ、考えては居ますけど」

「うちの娘なんてどうかね」

「部長、娘さんがいたんすか」

「親ばかだとは思うが美人だぞー」

「まじっすか。ははっ」

半年後、俺は部長の娘と結婚していた。


だが俺がそんな人並みの幸せを味合う間

世界は確実に変わっていったのだ。


人間を殲滅し、地球の覇権を握ったタコ人だが

俺の住む大日本タコ国からかなり遠くにある国の

ドタコイツ第三帝国を率いる

タコラー総統は地球支配を早々にあきらめたが

代わりに宇宙支配を目論み、大宇宙艦隊を木星のエウロパに派遣した。

そこには見たことも無いような巨大生物が海の中を回遊していた。

ドタコイツ宇宙艦隊はその生き物を

"もぐらーにゃ"

と名づけ接近を試みた。

ここからは生き残った隊員が語った話だ。


やつはとても大きくて、最初はただの岩かと思ったんだ。

で、でもやつは俺たちの前で変形して

人型になった。そしてそのもぐらーにゃは言ったんだ。

「タコ焼き食べたい」

それからのやつは俺たちを艦隊から引きずり出して

ちぎっては食べ、ちぎって食べだった。

「それ生タコや、タコ焼きちゃう」と誰かが言う間もなかった。

53万人居たわれらの艦隊で生き残ったのは

1072人だけだ。あそこには悪魔がすんでいる……。


そして俺たちのタコ人はもぐらーにゃとの

数十年にわたる長い戦いに巻き込まれていくのだった。


「おじいちゃん、続きはー?」

その四十年後、俺は孫にこの話を読み聞かせていた。

「おじいちゃん、話が長くてちょっと疲れたよ」

「もぐらーにゃさんはどうなったの?」

「ん、何か色々あって今はグレているらしいよ。

 ガニメデに引っ越したいんだって」

「なんでー」

「核ミサイル飲み込まされたり、エウロパ全域を

 放射能とか色んな毒で汚染されたりしたからかな」

「ひどいねー」

「そうだねー。我々タコ人もそれを反省して、

 今はもぐらーにゃと休戦協定を結んでいるよ」

「よかったねー」

「そうだね平和が一番だね」

そういって俺は電気を消して、孫が寝たのを見届けると

一服をしに外に出た。


ここスペースコロニーに我々タコ人が移住してきて

もう三十年になる。地球を牛耳る地球連合との小競り合いは耐えない。

我々ヌルイズムを信奉するヌルイストたちの集まりにより

ヌオン共和国をここコロニーナンバースリーに設立しようと今は画策している。


タバコに火をつけるとわき腹に激しい痛みがはしる。

「うっ」

見ると出血している、撃たれたの……か?たぶんサイレンサー付きの銃だ。

「ヌルイストに死を!」

くっ、ぬかった。家の庭にまで地球連合が刺客を送り込んでくるとは……。

刺客からもう一発銃弾が放たれ、

俺は庭の中で血まみれになり意識が遠のいていく。


気付くと俺はまたあの裁判官の前に居た。

今度はプランクトンではなく、年老いたタコ人だ。

「うむ。勇者ミスボアンヌよ。お前の魂は輪廻の輪を解かれた」

「あれ、今回は女子高生の言葉責めはないんですか?」

「最近は女子中学生になっておる。それはともかく

 お前は還るべきときがきたのだ……ライフストリームの中へ」

「ちょ……そんなんどうでもいいんで、もかい言葉責めをし……

 うわわわわわわわわわわわわわわわ」


俺の身体は緑色の光を帯び、ゆっくりと消えていく。

そして消えるごとに何かを理解していく。

そうかアカシックレコードに

書かれていた意味とはこれだったのか……。

宇宙の真理とは……おおおお、すべてが……流れ込んでくる……

女子高生の言葉責めより……きもちが……い…い


そして俺は宇宙の一部であり全てになり

宇宙を覆いそして流れ続けるライフストリームの中で

みなと繋がっていくことになった。


ん?カリナはどうなったかって?

んー

んー

うーん

うーむ

ライフストリームの中には居ないから

どっかで昆虫にでもなって

楽しく過ごしてるんじゃないかな

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