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僕が総理大臣になったら

作者: だいちゃん

「ねぇ、君は総理大臣になったら何をしたい?」

教室の片隅にあるテレビを見ながら隣の席に座っていた女子が問いかけてきた。

別にテレビに総理大臣に関するニュースが流れているわけではない。

だから僕はその急に飛び出てきた妙に小難しい質問にポカンと口を開けることしかできなかった。

すると彼女は笑いながらこっちを向いた。

「え?、じゃないよ君が総理大臣になったら何をしたい?って聞いてんの。」

そしてはやく答えなさいよ、と言わんばかりにグイッとこちらに乗り出してくる。

(いや…そんな質問されても…)

いきなりの無茶振りな質問、しかも少女の真面目な眼差しに僕は微妙な表情を浮かべる。

そもそも僕と彼女はほとんどと言っていいほど話したことがない。

性格はまったく逆で僕は根暗、彼女は仕切り屋といった感じで住む世界がまったく違う。

それがいきなり突拍子のない質問を問いかけてくるのだから、もう僕の頭はパニック寸前だ。

仕方なしに僕は答えに困ったときときの定石を使うことにした。

その名も秘技「質問返し」

同じ質問を返すことで相手の意見を聞き、

「あー僕も、そう思う☆」

と便乗することで会話を乗り切る一般的な受け流し方だ。

よしこれだ!と僕は口を開く。

「え、えっと君は何をしたいの?」

少し吃ったがまぁいいだろう、これであとは相手の答えを待つのみと僕は彼女の返答をまつが

「そんなのいいから、君はどうしたいのって聞いてるの?」

その言葉で僕の目論見は一瞬で崩れ去った。

(なんじゃそりゃぁ!なんなんだよこの女は!)と数秒で僕は原稿用紙が2、3枚埋まるほどの愚痴を心の中で叫びまくる。

しかし口には出さない、その理由はただ一つ

怖いから。

その間も彼女ははやくはやくとこちらを急かしてくる。

あぁ!もう!とパニック寸前の僕は仕方なく口を開く

「ぼ、僕は、な、何もしたくない」

瞬間に汗がぶわっと吹き出す

彼女が次に言い出す言葉がすぐにわかった。

「そんなことをっ!」

「だから!僕は辞退したい」

そんなことを聞きたいわけじゃない。

彼女はきっとそう言うだろう

だから僕は被さるように大きく声を出した。

彼女に言葉を途切られないように、

一度途切れたら僕はきっと怖くて何も言えなくなるから。

「僕は辞退したい、したいことは色々思いつくけど、それをやりきる自信がないから、それが正しいっていう自信がないから」

僕は以前政治のニュースを見ながら考えたことがある。

もしかしたら総理大臣になった人は総理大臣になりたいと思ってなかったのかも知れないと。

本当は政治家になりたかっただけで国のトップになんかなりたくなかったかも知れないと。

「きっと総理大臣だって自分から望んでなる人だけじゃないと思うんだ、成り行きで仕方なくなっちゃう人だっていると思うんだ

僕もなったとしたらそれだと思う」

だって僕なら日本を良くしたいって思ってもトップになってあんな晒し者になりながら、あんなプレッシャーに耐えながら、

政治をしたいなんて思わない。

結局は自分の方が大事だから。

政治家だってそうだと思う。

他人のために自分を犠牲になんて所詮は綺麗事だろう。

じゃないとあんな不倫やら押領やらが年がら年中ニュースに乗るわけがないだろう。

そんなことを思いながら僕ならと考えたことを脳裏に思い出しながら僕は続ける。

「でも、すぐには辞めない、僕が政治家を目指したとしたら少しくらいは見栄があるから、だから僕は2つ3つと案を出す。あげれば景気の回復とか、福祉系の改善とかね

である程度のところで辞退する。

僕は幾つかの選択肢を残すだけであとは人任せにして辞退する。」

ふと彼女を見る。視線が痛い。

人任せだよなぁと自分でも思う彼女もきっとそう思ってるだろうなと思った。

「人任せだね、でも面白いね君」

えっ?と顔を上げた。

「君は自分が総理大臣になったつもりで言うんだね、そんな意見聞いたことなかった。

みんなもしなったらっていう意見しかないから」

そりゃそういう質問だもんね。

と彼女は笑い、僕もつられて笑った。

「最後にさ、君のいう見栄ってなんなの?男のプライド?」

彼女は席を立ち上がりながら言った。

その答えは驚くくらいすっと出てきた。

「日本を良くしたいっていう見栄かな」

僕が答えると

「やっぱり面白いね」

と彼女は笑いながら立ち去った

最後に「でも声がちょっと大き過ぎたけどね」と言い残しながら。

僕は興奮していたのだろう

その言葉で教室中の視線がこちらに向いていることに気づいた。

音量調節が狂っていた。

僕は今日初めて自分のコミュニケーション能力の低さを呪った。


総理大臣になったら何をしたいってなんだかんだ一回は考えたことがあると思います。

そこでいきなり辞めたい!ってなったら面白いなと思って書いたのがこの作品です。

ただただ辞めたいじゃ話にならないのでなぜ辞めたいのかというのを必死に考えたらこんな話になりました。



最後に、書きながら思ったけど総理大臣ってすごくね⁉︎

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