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光刃  作者: 〜優〜
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第五刃 旅立ち

 目の前の景色が揺れた。そして空間が裂け、そこから二人の男が現れた。


『ビリビリッ』


空気が魔力で震えている。


息が苦しい。体中が重い。押しつぶされそうだ。震えが止まらない。立っているだけで精一杯だ。怖い…怖い…


「君がレンと言う者か?」

男の声がした。


「私達の魔力を受けて体が上手く動かないか。まあいい。」


逃げないとヤバい。どうすればいいんだ。ヨウやレイラも動けないか。もし動けたとしても、逃げ切れはしないだろうが。


「先ほどの男に何を言われたか知らないが、忘れた方がいい。そのかわり面白い事を教えてやろう。」


そいつは続けた。


「お前の持っている剣には龍が封印されている。それもそこの二人の継ぎし水龍や風龍などとは比べものにならない力を秘めたな。それにお前は魔法が上手く発動できないだろう。魔力もそこの二人の足元にも及ばないはずだ。なぜか…それはお前が無力だからではない。一部の者が剣に、そしてお前に封印を施したからだ。」


何を言っているんだ?こいつは…封印…だと?確かに雷の魔法を使うなと言われた事があるが、封印したというなら完全に使えないはず。


その男が右手をレンに向けた。


何をする気だ、こいつ…

目を閉じて訳の分からない呪文のようなのを呟いたあと、男は再び目を開き、


「君を呪縛から解き放ってあげよう。」


そう言った瞬間、手から出たどす黒い光がレンの体を包んだ。


「ああああああああああああああああああっ!」


レンの体中に激痛がはしる。


「今は分からないだろうが、だんだん君は本来のあるべき姿に戻っていくだろう。」


光が消えるとともに、レンに向けてた手を下ろした。体中をはしる激痛も同時に消えた。


「君は本来、こちら側にいるべき者だ………来たか。」



『烈爪。』


《ザザザザンッ!!》

一瞬で先ほどまで男達がいたところの地面が真っ二つに裂けている。

男達はいつの間にか後ろにさがっていた。


「お前たちはさがっていろ。」


男達と俺らの間に突然現れたのはシュナイザ様だった。


こんなシュナイザ様見たことない。なんて魔力だ。体中から魔力が溢れ出るのがわかる。しかしそれはとても温かい気がした。


「コイツ、殺していいか?」男の一人が口を開いた。


「その必要はない。

それにお前では今は無理だ。例の者たちの一人だぞ。すべき事は終えた。帰るぞ。」


「逃げる気か?」


シュナイザが問う。


「ガキを三人守りながら、俺らの相手をして勝てるとでも思っているのか?」


そういって手を上にあげると、手のひらの中に黒い塊ができた。


「待て!」


シュナイザがそう言い終わる前に二人は黒い光に包まれて消えていった。




奴らは去ったが、レンもヨウもレイラも固まっていた。




…白い服を着た男

…二人の男

…剣の封印


訳が分からない事ばかりだった。

俺は何者だ?レンは自分の正体から今まで逃げ回っていた。知ることが怖かった。踏み出す勇気がなかった。答えてくれないならそれでいい、その方がいいと、心の中で思っていたのかもしれない。



今度は自分から踏み出してみよう。レンは口を開いた。


「シュナイザ様。あの…」


その言葉を遮るように、


「あとで話そう、レン。みんな疲れたろ。ひとまず城に戻ろう。」


そこにはいつもの優しそうなシュナイザがいた。


4人は城に向かって歩き出した。










4人は風の国の城に帰ってきた。


「…レン君。後悔するかもしれないが、それでも聞きたいか?」


最初に口を開いたのはシュナイザだった。


「はい。逃げないって決めましたから。」


「わかった。………………君は今は無き、雷の国の一族の王族の者だ。」


シュナイザは続けた。


「雷の国は昔、千年前の大戦より前にはまだ存在していた。とてつもない力を持った国だった。そのために、自分自身の力に呑まれやすかったのかもしれない。


…そして闇に堕ちた。ある者…魔帝と呼ばれた者を指導者とし、世界を壊そうとしたのだ。しかし闇に堕ちなかった者が一人だけいた。その者の名はティーガ。後の大戦で、人類を勝利に導いた者だ。その命と引き替えに…。」

「彼と他の国々によって雷の国はこの世から消え去った。雷の国の民は皆殺しにされた。一度完全に闇に堕ちた者はもとに戻ることができないからだ。しかし雷の国の者がもう一人生き残っていたんだ。そいつはのちの大戦を引き起こした者だ。多くの者達が死んだ。子供も、大人も、老人も、みんなだ。」


「よって雷の国はすべての人々の心に深い傷を負わせて、記憶の隅に封印された。書物にもかかれることのないものとなったのだ。」



 …僕の体にはそんな一族の血が流れている。人々を苦しめ、殺した者達と同じ血が。


レンは唖然とした。無理もない。事実がそうさせるものであるのだから。

そんなレンを見てシュナイザが言った。


「確かに君は雷の一族の者だが、その体には父である英雄ティーガの血が流れている。だが、そんな君を危険だと言う者たちがいた。父親は英雄であるがまた一族の血がその子を悪魔に戻すかもしれない。だから殺せと。

もちろんそれを私は止めた。親友であるティーガの頼みでもあったから。剣と君への封印、そして私が見ているのを条件として、なんとか君を守れた。」


ヨウやレイラは必死にレンに何か話そうと考えていたが、かけてあげられる言葉はなかった。


「僕の存在がいつか周りを傷つけるかもしれないのか…」


レンが震えた声で言った。


するとシュナイザがレンの頭を撫でながらニコッと笑って、


君はそんなこと一度もしなかったし、これからもそんなことしないのはわかっている。だからヨウのレイラちゃんの友達になってそばにいてもらった。」


頭を撫でていると、レンの手の平に目がいった。


「レン君!その印をどこで!?」


急に大声になって聞いた。


「さっきの奴らの一人に何かされたのですが。」


シュナイザは急に険しい顔になり、


「その呪いはね、雷族に伝わる禁術なんだ。過去に数人が使った呪いでね、

放っておくといずれ君が君でなくなってしまう。」


レイラが驚いた顔をして口を開いた。


「レンがレンでなくなるって、どういうことですか?」


「心の闇を解放する呪いでね。心を強くもっていないと闇に呑まれてしま。」


「どうしたら解けるの?」


ヨウが聞く。


「術をかけた者を殺さなくてはその呪いは解けない。しかし先ほどの二人のうちの一人ではない、

どんな魔法を使ったかは知らないが、その者を媒介とし呪いをかけた奴がいる。」


「誰なんですか?」


今度はレイラが聞いた。


「魔帝だ。その魔法を使えるのは現在魔帝しかいない…はずだ。」


「殺したはずでは?」


「そうだ。葬り去ったはずだ。しかしそれが葬り去った気がしてただけで何らかの方法で生き長らえ、禁術を使い、蘇ったか… 最近世界各地で悪魔が増えてきているのはもしかしたら奴のせいかもしれぬ。」


「僕が死ねば誰も傷つく心配もないんだね。」


レンが重い口を開いた。


「何言ってんだよ。俺の親友は人を傷つけるような奴じゃない。俺が一番わかってる。」


「そうよ。例えレン君が雷の一族だとしても、レン君はレン君よ。」


「もし二人を傷つけるようなことがあったら…俺…」


「大丈夫だって。殴ってでも、

目を覚まさせてやるさ。」


「殴らなくてもいいじゃない。」


「例えばの話だよ。」


………しばらく黙ってからレンが言った。


「ありがとう。…………俺は雷の一族の一人として、魔帝を倒してくる。完全に復活してまた世界を壊しにくる前に。自分を流れる血の束縛から逃れるために。」


「さーて、そうと決まれば、行くか。魔帝退治に。」


と、ヨウが言った。


「何言ってんだよ。俺のためにお前が命を懸ける理由はない。お前まで危険にさらすわけにはいかない。」


レイラも一度目を閉じて、またゆっくりと開き、


「そうね、行きましょうか。」


「レイラも何言ってんだよ。」


「言ったでしょ。三人で、ずっと…………一緒にって。あなたが何と言おうと、離れないんだから!」


ヨウがニヤつきながら、言った。


「何それ?告白?良かったなレン、一生あなたについて行きますだって。結婚式は帰ってきてから挙げるか?」


「な…ち、ちがっ、ばか!」


顔が真っ赤になり頭から湯気が出ている。


レンも赤面する。


「そういうわけだ、レン君。君は一人じゃない。仲間がいる。何よりも代え難い仲間が。ヨウもレイラちゃんも君の苦しみを背負ってあげようとしている。一人で背負い込むもんじゃない。君はそんなに丈夫じゃない。人は誰しも一人で生きていけるほど丈夫じゃないんだ。だから仲間が、友がいる。無理をする必要なんかないんだ。君は幸せなんだ。君のことをこんなにも大切に想ってくれている友がいる。二人を信じてみてはどうだい。」


「…はい。ヨウ。レイラ。…………ありがとう…。」


レンの目から涙が一粒頬を伝ってながれた。


「俺ら、親友だろう?一緒にレイラに苦しめられてきた。」


ヨウがレンに笑いかけた。


「失礼ね。二人がぉ…をの…こうとしたからじゃない。……………レン君。私たち、仲間だよ。」


シュナイザは二人の言葉を聞いて笑っていたが、真面目な顔にもどり、


「では、魔帝がいるであろう場所までの道を教えよう。 奴の居場所に行くには、いくつかね封印を解かねばならない。封印を完全に解き、解放できるようになった白刀を使わないと奴の居場所への道は開かれない。白刀に宿る龍の力は五つの強力な玉に分けて封じてある。君の力もその玉の中だ。」


「その玉はどこにあるのですか?」


ヨウが聞いた。


「風、水の国を除いた、世界の五つの国にある。しかし私が取りに行くことは出来ない。君を助けるためにした約束を破る事になるからだ。頼んでも渡してくれないだろう。それに今はあまり交流がない国々だから、どうなっているのかもよく分からない。道のりが書かれた地図を渡そう。」


「ありがとうございます。」


「すまない、私が今できるのはこのくらいしかないんだ。」


「十分です。」


「あと、一つ言っておくが、もし魔帝が本当に生きていたら、知らせてくれ。さすがに奴が相手では無理だろう。」


「分かりました。では行ってきます!」


「待つんだ。今出ては外は危険だ。明日の早朝に出発しなさい。」


「最後に、一つ。重要な事だ。」


そういってシュナイザはレンの手に白い布を巻いた。


「この印は決して見られるな。それと人前で雷の術を使うな。」


「何でそれを?」


「君が封印を施された、使うなと私が言った翌日に使った時から知っていた。」


レンは下を向いた。


「バレてたんですか…」


「そんなことはいい。城の外では極力使うなよ。人には絶対に見られるな。雷の力を利用しようと考えてる者は世界中にいる。いや、いたというべきだな。雷は恐怖の象徴であると同時に、力の象徴だからな。それに君の存在は隠されている。公にはなっていない。知られたら必ず狙われる事になる。全ての封印を解き、力を自分のものに出来るまで封印するんだ。そうすれば君は自分を、友を、そして世界を傷つけようとする者から護ることが出来るようになる。それまでは…。それに君を城。それと人前で雷の術を使うな。」


「何でそれを?」


「君が封印を施された、使うなと私が言った翌日に使った時から知っていた。」


レンは下を向いた。


「バレてたんですか…」


「そんなことはいい。城の外では極力使うなよ。人には絶対に見られるな。雷の力を利用しようと考えてる者は世界中にいる。いや、いたというべきだな。雷は恐怖の象徴であると同時に、力の象徴だからな。それに君の存在は隠されている。公にはなっていない。知られたら必ず狙われる事になる。全ての封印を解き、力を自分のものに出来るまで封印するんだ。そうすれば君は自分を、友を、そして世界を傷つけようとする者から護ることが出来るようになる。それまでは…。それに君を城の外に出したとバレたら国としてマズいことになる。」


「力を封印…か。」


たとえ僕が狙われ、殺されようがヨウとレイラは必ず護る。


そう誓ったんだ。必ず護ると。でもその時はまだ知らなかったんだ。世界の闇を。己の無力さを。そして、運命を。












翌朝 出発の日


まだ太陽も出ていない時間にレンとヨウとレイラは国を背に歩き始めた。

城の最上階で窓から三人を見つめる男が一人。


「ティーガ。あの頃を思い出すな。」


空に向かってそう言った後、彼らの方を見て言った。


「必ず帰って来いよ。」






 三人の旅が始まった



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