第四刃 迫り来る闇
「ご…ごめんなさい」
苦しい。まだ怒っているらしい。いい加減許してくれてもいいだろう。
風呂からあがった俺らはレイラに会わないように風の国の宮殿から抜け出そうとした。風の国と水の国はとても近く、いつもどちらかの国に集まってあそんでいたのだ。二人の逃走劇に話を戻すが、ヨウの力で少しなら空も飛べたが、それではすぐに見つかってしまう可能性があったため、城の抜け道を通ったのだが、レイラのやつが魔法をすでに仕掛けてて、見事にそれにはまってしまった。
それは箱のような水の塊であった。あいつ俺らの逃げ道を把握しているらしい、最近は逃げ切れた試しがない。これも水以外の魔法を封じる魔法封じが施されており逃げようがない。二人とも泳ぎは得意だが、魔法のせいで体がうまく動かせない。酸素が…ヤバい…死ぬと思っていたら、レイラが水の檻の前に来て、どうしたの?って笑顔で言った。…この女…マジで殺す気だ…
「がぼっがぼがぼがぼがぼ!(本当にすいませんでした!)」
ヨウが水の中でなんとか土下座しながら言った。
「がぼがぼがぼがっぼが。(もう二度としないので許してください。)がぼがぼがぼがぼがぼがぼ。(マジで死んじゃうって。お願いだから助けて。)」レンも謝る。
「なんて言ってるか全然分かんないよぉ。ちゃんと言わなきゃ。
…《ごめんなさい、とってもかわいいレイラ様。レイラ様の美貌を見たくてついやってしまいました。もう二度とこのようなことは致しません。お詫びに一生あなた様のしもべにさせてください。》ってね。」
この女ぁ!調子にのりやがって!とは思いつつもさすがに苦しい。二人とも必死に、
「がぼがぼがぼがぼがぼがぼがぼ…」ヤバいマジで息が…
「そろそろ許してやるか。」そういってレイラは指を鳴らした。
『パチン』という音と共に水の檻の形がくずれ、あたりは水浸しになった。
「どう?少しは懲りた?」
「はい…………な訳ねーだろ!」レンはそう言ってレイラと反対の方にヨウと一緒に駆け出した。
「隙あり!」
ヨウがレイラのスカートを風の魔法で完全にめくりあげた。
「キャー!何すんのよ!」急いで手で押さえたが遅かった。
「ピンクのパンツが見ーえた!」ヨウが走りながらガッツポーズをする。
「レイラちゃん、かわいいー。」レンも走りながら言う。
「もう絶対に許さないんだから!」
この時すでに始まっていたんだ。
同時刻 ある国の山中
黒い影が2つ…
「あーあ、だりーなぁ。」 人らしからぬ形をした者が最初に口を開いた。
「まあそういうな。」 もう一人は人のような形をしている。
「風の国だっけ?」
「ああ、そうだ。」
「即行で殺して、奪い取れば良いじゃないか? …なあ、レルガ?」
「それでは意味がないんだよ。
「なんでだよ。」
「まあ直にわかるさ。」
「ったくムカつくな〜お前は。」
『ガアアアアアアッ』。突然木々をなぎ倒し、体長10メートルはあろうかという恐竜のような怪物が現れた。背中から巨大な人の腕のようなものが生えている。
「うっせんだよ。」そう言い終わる前に、目の前にいたはずのそれは肉片になっていた。
「もう少しで着く。」
「はぁー疲れた。」
ここは風の国の北西にある平原。三人は並んで平原に寝そべっていた。やわらかな日差しが彼らを照らしていた。心地よい風が彼らを頬をなでる。
「いつまでもこうしていられたらいいのにな。」
「そうだな。三人でずっと…」
「何、年寄りみたいな事言ってんのよ。いつだって来れるじゃないの。」
「でも老けたレイラは見たくないな。…な、ヨウ。」
「そうだな。いつまでもかわい……って何言わすんだよ!」ヨウの顔が赤くなる。
「いつまでもかわい………何?」レイラも少し顔が赤くなっている。
「か、かわいくねー女のままだろ。って言おうとしたんだよ。」
「おやおや、ヨウ君。顔が赤いよ。ホントはなんて言おうとしたのかな?」レンは楽しそうにからかっている。
「そう照れるなって。 …………………………誰だ?」そういって上半身を起こし、腰にさげていた愛刀[白刀]の柄に手をかけた。
「何言ってんだよ?」ヨウが不思議そうに聞く。
急に目の前が光り、突然男が現れた。見たこともないような白い服を着ており杖を右手に持っていた。
「驚かしてすまない。訳あってこうして来なければならなかったんだ。」
「何者ですか?」レンが鋭い目で睨みながら聞く。
「怪しい者じゃないといっても信じてくれないだろうから、怪しい者でいいよ。伝えなければならないことがあってね。」
よく見るとその男、ところどころに傷を負っている。
「レン君…というのかな君は。腰にさしている剣、白刀を完全に解放できるようになってはいけない。」
「なぜ知っている?それになぜ解放を止める?」
「理由を言ってる時間はない。あと、王に伝えてくれ。闇が…迫る…と。」
「今すぐに王宮に向かって走れ。」
「は?」
「早く!やつらが来る前に。」
「分かった。行くぞ!早く!」レンは二人を連れて走り出した。」
「オイ!どうなってんだよ。なんでよく分からないあいつの言うことを聞く?」
「ヨウ君感じなかった?妙な力が二つだんだんと近づいてくるの。かなり力を抑えていたみたいだけど、重く、どす黒い魔力が溢れ出てた。あの人は、よく分からないけど悪い人には見えないの。」
平原をぬけた時に、三人の足が止まった。まったというより止められたという方が正しいのかもしれない。なぜか足だけでなく体がピクリとも動かない。
「そんなに急いでどこに行くんだ?」