第二刃 のぞき
「オイ?見えたか?」
「もいちょっと高くしてくれ、おまけに湯気で見にくくてさ。」
「早くしろよ、俺も見たいんだから。」
一人の少年がもう一人の少年を肩に乗せている。全面大理石で出来ている巨大な風呂であった。男子風呂にはこの少年二人以外にはだれもいない。なんとかギリギリ壁の高さを目の高さが超えた。
「おっ、見えたぜ!…………………………」
「オイ!何してんだよ。早く降りろよ。俺にも見せろって!」
…返事がない。上のやつの足が震えている。
「どうしたんだよ?」すると壁の向こうから声が聞こえた。
「…………レン君…………とヨウ君…。何をしているのかな?」
上の少年と壁を挟んで少女がスゴい剣幕でこちらをにらんでいる。壁から顔を出せるだけの高さにいれたのは水で足場を形成していたからである。
「いや………これは………その………」
少女の後ろに竜のような形をした水が出来始めた。
「レ…レイラ様が貧血や湯あたりで倒れていないか心配で………………」
「何言ってんの!このスケベ!!」
そう言うのと同時に巨大になった水の竜がレンやヨウに向かって突っ込んだ。巨大な水の固まりが津波となって押し寄せ、それに飲み込まれつつも必死に風呂場の出口に向かって泳いだ。苦しい状況下で二人は同じ事を考えていた。殺される。なんとか脱出し入口の扉を閉めた。。助かった。
気管に水が入ったと言ってむせてるヨウにレンが言った。
「あとちょっとだったんだけどな」
「コレで今年に入って4回目だぜ。」
「今まで何回覗こうと命を賭けたっけ?」
「ゆうに五十は超えるな。一番最初はヤバかったな。レイラのやつ加減ていうもんを知らなかったし。」
「そうそう、水に沈めた挙げ句に、水圧を上げやがった。」
「あの時は死ぬかと思ったね。…こんだけ苦しんだ事だし、覗かしてくれたっていいのにな。」
「フッフッフ。」
「なんだよ?」
「水に飲まれる直前、レイラの水で宙にとばされた時に、見えたんだよ、胸までね。」
「テメー裏切り者!」
「まあまあ、てかそろそろ新しい方法考えねえとやべぇよ。」
「そうだな。」
「だんだん水量が増してるし。いい加減マジで殺されかねないぜ。」
「なんで男子風呂だけ魔法封じかかってんだよな。」
「俺らみたいなやつがいるからだよ、それに魔法で上手く見れたとしてもレイラの奴に見つかったら………間違いなく消される」
「それもそうだな。」
アハハハハハハハハと二人顔を見合わせて笑っていた。