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Green Wind━透き通る緑髪

入学してから2週間、俺と神崎兄妹は常に一緒にいるようになった。


クラスのやつらもグループを作っていて、俺たちを見ながら陰口を言ったりしているようだった。


俺は小さいころから言われてきたので悪口を言われるのが当たり前だと思っていたが、星野ほしの月野つきのにとってはそうではなかったらしく、二人は傷ついていた。


特に月野は、かなり陰険な嫌がらせを女子から受けていたらしく教室にいることを拒み、休み時間の度に3人で屋上まで行った。



「あ、やべっ。ハチマキ忘れたぁ。」


男女別の体育で俺は星野と移動をしていたのだが、途中でハチマキを教室に忘れたのを思い出した。


「ちょっと取ってくるわ。」


「俺も付いていこうか?」


「いや、先行っといて。遅刻しかけたら先生に言い訳しといてー。」


「了解、いそげよ。」


「あぁ。」


俺は星野と別れ来た道を走る。


やっと教室についた。


扉を開けようと手をかけると、教室に人がいるようで話し声が聞こえた。


「………だよ。」


少し怒っているような声が聞こえた。


どうやら女子が数人残っているようだ。


入るタイミングをはかっていると、机やいすが倒れる大きな音が教室から響いてきた。


「なんだ…?」


扉の隙間から教室をのぞくと、赤髪の女子が怒り狂ったように詠唱えいしょうを始めた。


「我、欲するは全てを焼き尽くす炎、かたどるは球…」


その「天使」の睨む先にいたのは月野だった。


おそらく月野に嫌がらせをしている連中だろう。


赤髪ってことは炎だよな…


やばい!やばいって!


何とかしなくちゃ…


そう、なんとかしなくちゃならない。


だが…


「俺は魔術が使えない…」


友人の一人も守れないなんて、やっぱり俺は無能な「人間」なんだ。


「我の怒りを買いし者に戒めを…」


そんなこと考えている時間は無い!


なんとかしなくちゃ!


「五十嵐くん?何をしているの?」


急に後ろから声がした。


振り返るとそこには…


樹理華じゅりか…?」


透き通るような髪の色、透明勝りな緑色。


「久しぶりね、って言っている場合じゃないわね。」


樹理華は教室の様子に気づいたみたいで、扉をガラッと開け入って行った。


「炎よ舞え!!!!!!」


「風よ炎を消し去れ!!!」


一瞬炎が出たかと思うと、次の瞬間には突風で目を開けられなくなっていた。


「すげー…」


少しの間呆然と立っていたがハッと我にかえり、月野のところまで走っていく。


「月野!大丈夫か??」


「誓!どうしたの?」


月野は冷静にそう言った。


炎を目の前にしてこの反応はどうなのだろうか。


「どうしたの?じゃねぇよ。平気か?怪我とかしてないか?」


「うん、平気だけど。」


「なんなの!!!?なんなんだよ!!!?」


炎をだした赤髪の「天使」と周りにいた女子は何が起こったのかわからない様子だった。


「あなたたち何してたの?まさか能力をつかって嫌がらせしてたなんてないわよね?」


「樹理華様!!」


彼女たちは樹理華の存在に気づいていなかったようだ。


「今すぐにこの場から立ち去りなさい!それから二度と彼女に関わらないと約束しなさい。」


「はい!失礼しました。」


彼女たちは逃げるように教室から去って行った。


「大丈夫?」


樹理華は月野に声をかけた。


「えっと…確か神崎月野さんよね。」


「え、うん?」


「あなた有名だから。」


心底不思議そうな顔をした月野に樹理華は答えた。


「それは嫌味なの?」


月野は不機嫌そうな顔になった。


「なんで?」


「私は人間だから目立つって言いたいんでしょ?」


「そうね、でも目立つ理由もあなたが嫌がらせされるのも人間だからってだけじゃないでしょ?」


「は?」


「同じ女からみればあなたの容姿が気に入らないんでしょ?」


「…?」


月野は?を浮かべていた。


「樹理華が言うには、月野が可愛いから女子に嫉妬されてるらしい。」


「じゃあ、あなたも私の容姿が嫌なの?」


「?あたしは自分の容姿に不満はないからそうは思わないけど…。」


「お前は変わらないな…」


「そう?」


「あぁ。」


あぁ、変わっていない。昔から。


「樹理華さんは誓とどんな関係なの?」


月野が少し不機嫌そうに尋ねた。


「どんな関係だと思う?」


いたずらっぽく樹理華が尋ね返した。


「…恋人とか?」


「っはは、ははは。あたしとちーくんが恋人?あははおかしい。」


樹理華は笑い転げた。


「…幼馴染ってやつだよ。」


いまだに笑っている樹理華の代わりに俺が答えた。


「幼馴染か、そっか…」


「あーおかしい、あっそうだ。あたし授業始まっても来ない生徒を呼んで来いって言われてたんだ。ホラ、立って!」


樹理華は月野の手をひくと、


「行こう、月野。」


と笑顔で言った。


「うん。」


樹理かと月野は手をつなぎながら走って行った。


…あ。


俺、遅刻だ…。


…まぁいいか。


そのあと俺は教師にコッテリ絞られ、星野に事情を話しながら授業を受けた。


体育館から校庭を見ると黒い髪と透き通った緑の髪が並んで走っているのが見えた。


まぁ、月野に女友達ができたってことでいいか…。






「今日は一段と数が多いね…」


「まあ、雑魚ばっかりだけどな。」


「30秒で終わらせるわ。」


昼間黒い髪は、色が落ちて白━いや白より透き通った「透明」の髪となっている。


倒した「敵」の血を浴びて今日もところどころ赤黒くなっている。


そう、兄妹は「人間」ではない━

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