What will change─壊れだした日常
─パパなの?本当にパパなの?僕が誰だかわかるの?」
『星野だろ?いつも月野を守ってくれてありがとな。』
─うん。うちは男が僕だけだから、僕がママも月野も守るんだ。
『そうか…大きくなったな…じゃあ、もう行くね。』
─待って!
「待って!行かないで!!パパ!!」
「え…息子?」
俺が飛び起きると隣では誓が寝ていて、ドアの近くに知らない男の人が立っていた。
「だれ…?」
とりあえず誰だか聞いておいたほうがいいだろう。
「え?パパ?」
その人はまじめそうな顔で言った。
ていうか俺、知らない人にパパとか言っちゃったよ。
どうしよ、地味にイタイ。
「あ…あのぅ…」
俺がキョドっているのを見てその人は笑った。
「冗談だよ。はじめまして、パパの友達の五十嵐東です。」
俺のパパ…父さんの友達の東さんってことは、
「あっ、誓のお父さんでしたか…」
「そうだよ。似てるだろ!?」
東さんはニコニコしながら自分の頬を指でつつく。
正直にいたほうがいいんだろうか。
でも、ここまで言っているしお世辞くらいは言った方がいいんだろうか。
少し悩んで東さんの顔を見ると、さっきまでの笑顔が嘘みたいに沈んでいた。
「知ってるよ…俺がちかくんと似てないことなんて知ってるもん!ちかくんは絆に似ちゃったんだもん!似て無くても僕のかわいい息子だもん!」
沈んでいたと思ったら急に大声を上げてちかくんを語りだした。
「ちかくんはね、こう見えても努力家でね、こう思いやりみたいなのがねあってモフ!」
「うるせぇ…」
何かが東さんの顔に当たったと思ったら枕だった。
寝起きの誓が投げた…
「ちっかくーん!おはよう!パパだよ!!」
東さんは頭から花を飛ばして誓に近寄る。
「こっちくんなきしょくわりぃ!」
それを誓が俺の使っていた枕で振り払う。
親子っていいな…。
そんな目で二人を見ていたのが、二人にはわかったのだろう。
誓の察しがいいのは父親似か。
「星野もやるか?」
「ちかくん!パパねさっき星くんにねモギュ」
あ、いけない反射的にさっき誓が投げた枕を投げてしまった。
「星野…」
誓がなんともいえない顔で俺をみる。
父親に暴力をふるわれるのはやはり嫌なものなんだろう。
どうやって謝ったらいいんだろうか。
「あの…誓…」
「星野!大丈夫か?」
「え?」
「東になんかされたんじゃないのか?」
ああ、さっきの誓の顔は心配だったのか…
覚えておかなくては。
「なんにもされてないよ。」
俺はできる限りの笑顔で笑った。
「ちかくん…俺の心配は?」
「うるせ!帰れ!」
「ここ俺の家…」
「母さんの家にお前が居候してるんだよ!」
「うわぁーーん!きずなーーーー!!」
東さんは走って部屋を出て行った。
遠くで絆さんの「うるさい!」という声が聞こえたが、知らないフリをしよう。
「父親っていいな。」
「あれを見てそう思ったのか?」
誓は心底いやそうな顔をした。
「クスッ。思った。」
例えば、俺の父親が帰ってきたとしよう。
俺は向かえいれられるだろうか?
多分答えはノー。
拒絶をしてしまう。
宙のせいで母さんが狂ってしまったのなら許せない。
だけど…
一度でいいから会って話して、こうやってケンカをしてみたい。
「教授、そろそろタイムリミットです。」
白衣を着た若い女が、同じように白衣を着た中年の男に声をかける。
「では、始めようか。」
「はい。」
「天使だけの世界を創るんだ。」