Darkness━漆黒の出会い
五十嵐誓、それが俺の名前。
だが、他人は決まって俺をこう呼ぶ。
「人間」
と。
俺の家は代々続く名家だ。
そんな家の人間が新しいことを取り入れようとはせず、俺は「天使」にはならなかった。なれなかった。
家の古い考えのせいで、俺も俺の親も「人間」と呼ばれ周囲になじめずにいた。
道を歩けば、俺の真っ黒の髪を目にした天使共が
「人間だ。」
「人間がいる。」
と指をさしておもしろがる。
元は同じ人間だろうに…
真っ黒な髪に生まれて16年、俺は今日から高校生になる。
「入学おめでとうございます━。」
教師の話が終わると教室に案内された。
教室の扉をあけると、注目の的になった。
よほど「人間」が珍しいのだろう…
だが、教室を見渡して普通ならあり得ない色を見つけた…
「人間・・・?」
教室に黒い髪の人間が二人いた。
しかも、ものすっごい美少女と美少年。
見とれていると、美少年の方に話しかけられた。
「はじめまして、俺は神崎星野。よろしく。」
「俺は五十嵐誓。仲間がいるとは思わなかった、超嬉しい。」
俺がそういうと、二人は一瞬顔をこわばらせたがすぐに笑顔に戻った。
「私は、神崎月野。よろしくね。」
「神崎?」
「あ、うん。私たち兄妹なの。」
「なるほど。」
俺たちは担任が来るまで3人でずっと喋っていた。
2人とも、とてもいい奴ですぐ仲良くなれた。
「じゃあ、また明日な~」
「「うん、また明日。」」
俺は、初日から「人間」の友達ができてこれからの高校生活が楽しみになった。
「ねぇ、星野?」
「なに月野。」
「誓、いい人だったね…」
「あぁ…」
「私たちはあんなにいい人を騙してるんだね…」
「そうだな…」
綺麗に色がついてない髪に返り血をつけながら、美しい兄妹は家路につくのだった。