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Past the end of━「悪魔」は「天使」

「この放送って、桜泉全体で流してるってことよね?」


「なんで?」


「高等部のときも思ったけど、大学部だけで流すなら学部の名前でいいじゃない。」


「たしかに」


そんなやり取りを聞いた。


確かにこの放送には不可解な点がいくつかあると思う。


第一、なんで麻理華はこんなに頻繁に呼び出されているんだろうか?


そんな当たり前なことになんで早く気づけなかったんだろう…


それを私は15年以上後悔することになる。


気づいたのが遅すぎた。


私が気づいたとき…


大学に入って半年がたったある日のこと。



「ねえ麻理華?先生の話ってなんだったの?」


私はそれとなく聞いてみた。


「特になんでもなかったよ。」


それが彼女のいつもの答え。


だけど今回は違った。


「絆には関係ないじゃない!!!」


いつもの彼女では想像もできないくらいの大声で怒鳴られてしまった。


いつもは温和で幼い彼女が、何もなくてこんなことを言うわけがないと思った私は、後をつけてみることにした。




「やあ五月雨さみだれくん、調子はどうかね?」


いかにも博士っぽい緑天使が麻理華に尋ねた。


「平気です。」


麻理華から笑顔が消えていた。


「やっ!」


博士のような格好をしている中年のおじさんは、急に麻理華のおなかを撫で始めた。


「やめてください!」


「いいじゃないか、自分の子を感じたいんだよ。」


…自分の子?


「この子はあなたの子なんかじゃない!私だけの子です!!」


麻理華は男性の手を払って叫んだ。


麻理華は妊娠しているの…?


「だが、生まれてくる子は私の特徴を受け持った緑天使だ。」


男性はニヤリと笑いながら言った。


気持ち悪い。


「私と一緒に最強の天使を創ろうじゃないか。」


「私の子供は物じゃない!!」


麻理華は妊娠している。


それは確かなようだ。


この男との間の子供なんだろうか…


「私は悪魔・・に対抗できる能力の開発の手伝いをするって言っただけなのに…」


麻理華はないているようだった。


「悪魔は天使あなたたちよ!天使なんて言ってやることは悪魔のようだわ。」


悪魔…?


「あなたもその天使・・ではないですか。」


「そうよ、私も天使あくまよ。悪魔に勝てるって聞いて何も聞かずに承諾した。私は悪魔よ。天使わたしたちは結局みんな悪魔なのよ!!」


「あながち間違ってはいないですね。」


「“悪魔”は“天使”ですから。」






私はその場から立ち去った。


いや、その場から逃げ出した。


その後、胃液が出るまでもどしてしまった。


最初は麻理華のことがショックなんだろうと思い、特に何もしなかったが、嘔吐は何日も続いた。


東に言われ医者に言ったら産婦人科を紹介され少し気まずい雰囲気になった。


そう、私も妊娠していた。


麻理華と同じように妊娠していた。


その後1ヶ月おきに風音、夢野も妊娠した。


麻理華は最初こそ私達に隠していたが、おなかが膨らみ始めると「遊びまくったら子供できちゃった。」とふざけて妊娠を告げてきた。


目だけはまだ笑っていなかった。


麻理華のことは深く言及はしなかった。


隠したいこともあるだろうから。


だけど話してきてくれたら思う存分聞いてあげようと思っていた。




なのに…


麻理華は死んだ。


表面上は病死とされている。


麻理華は娘、樹理華を残して死んだ。


樹理華を姉に預けて…



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