I hate the world━あたしは決して救われない
この世が憎い…
あたしは自分が好きだった。
家族が好きだった。
聖天使のママのことも誇りに思っていた。
色は違うけど、あたしもママの娘だ。
それなりに強い力を持っていた。
友達からは頼られて、家族にも恵まれて、そんな幸せな日々だった。
なのに、あの日神様はあたしから全てを奪ったんだ。
ママの知り合いに「夢野さん」というとてつもなく綺麗な女性がいた。
夢野さんの髪は黒かった。
夢野さんは「人間」だったのだ。
夢野さんはずっと病院にいて、ママは時々彼女の病室へあたしを連れて行った。
彼女はとても綺麗でどこか儚げな印象をもっていた。
「こんにちは水脈ちゃん」
彼女はいつもそうやって笑顔であいさつをしてくれた。
だけど、あたしが小4ぐらいのときだろうか、急に夢野さんが笑わなくなった。
━いや、笑えなくなったのだ。
ママが風(魔術)で調べた結果、それは治療と言って国が彼女に投与していた薬のせいだった。
ママはそのことを訴えた。
すると、ママは「人間なんかに味方するのか?」と問われ「人間を見下すなんておかしい、天使だって人間なのだから」と言った。
それから間もなくしてママは聖天使を降ろされた。
それでもママは夢野さんの薬の件を訴え続けた。
ママが言うには、夢野さんにはあたしと同い年の優秀な子供がいて、その子たちを国に縛り付けるために夢野さんを人質にしているらしい。
そのことをママは必死に皆に分かってもらおうとした。
だけど、理解してくれる天使は現れなかった。
その後も訴え続けたママはついに「国への反逆」として指名手配された。
ママがあたしの前から姿を消す寸前、こう言った。
「ママは間違ったことをしたと思ってないの。だけどそのことで水脈を傷つけてしまうかもしれない。だから、こういいなさい。あたしのママはろくでなしだ、と。
それとね、ママはお友達の家にいるから。
そのお友達の子供ね、あなたと同い年で人間なの。
もしも、どうしてもママに会いたくなったら、その子を探しなさい。
いい?どうしてもだからね。
あなたはきっとママを嫌いになるでしょう。
だけどね、ママは水脈を愛しているから。
愛しているから…。」
そういってママは風のちからで消えた…
愛しているならあたしも連れて行け!!!
間違ったことしてないならろくでなしとか言うな!!!
人間で同い年なんてたくさんいるだろ!!!
そうよ!ママなんて、だいっきらいよ!!!
それからあたしの人生は狂った。
母親が犯罪者、それでいじめられ、今まで友達だった子たちも離れて行った。
あたしは独りになった。
アイツ(ママ)のせいだ!
いや、夢野さん(にんげん)のせいでママが変になったんだ!
人間も天使も━この世界がだいっきらい!!!!
それでもあたしは頑張った。
成績だけでも見下されないように頑張った。
そんなおもしろくない生活をしているとき、ある噂を耳にした。
「緑の聖天使の後任が決まったって。」
「私たちと同い年の女の子なんだって。」
「この学校にいるらしいぞ。」
別にママの後任だからって訳じゃない、単純に気になったのだ。
その女の子(聖天使)がどんな子なのかと。
結構離れたクラスにその子はいた。
五月雨樹理華、いつも人間の男子とつるんでる緑天使。
その様子をあたしも何度か見たことがあった。
人間とつるんでるやつなんて嫌いだと思っていたけど、その後対面した彼女は変わっていた。
「じゅり」とかわいらしい愛称で呼ばれていた彼女は「樹理華様」とよばれ、いつも一緒にいた「ちーくん」はクラスから浮いていた。
樹理華様の周りには人がいっぱいいたけど、彼女は誰にも心を開いてはいなかった。
樹理華様はあたしと同じ…独りなんだ。
それから、あたしは彼女を追いかけるようになった。
彼女はあたしにも話しかけてくれるけど、やっぱり壁を感じた。
あたしは樹理華様なら仲良くできるかもしれない、と思った。
だけど、樹理華様は誰とも仲良くしようとせず、そのまま皆と違う中学に行った。
その後樹理華様と再会したのが高校。
偶然同じクラスになって、あたしはたくさん話しかけた。
入学して少しの間、ずっと一緒にいた。
だけど、樹理華様は隣のクラスで「ちーくん」を見つけた。
そこから、またあたしは独りになった。
神様はどうやらあたしを独りにしたいらしい。
皆きらい!だいっきらい!!!!
魔術試験もあたしは独りで受けた。
別に良かった。
だけど、人間たちと仲良くする樹理華様をみてあたしは壊れた。
ムカついた。
嫉妬した。
勝負を挑んだ。
結果はどうなったのだろうか…
ハッ!
目が覚めるとあたしは地面の上で寝ていた。
あたりはすっかり暗くなっている。
「目が覚めた?」
そう言ってきたのは樹理華様の親友だった人間「ちーくん」
「まあ、覚めたわ。」
あたしはそっけなく返事をした。
「なぁ、お前母親に会いたいとか思ってるの?」
「なんで!!!?」
声が裏返ってしまった。
「いや、寝言でママって言ってたから。」
恥ずかしくて死にそう…
「…会いたいよ。」
ここで嘘ついてもしょうがないと思った。
「そっか…風音さんなんだけど、俺の家にいるんだよね…」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?」
声にならない声が出た。
あたしは声が出なくて口をパクパクさせた。
「ちーくん」は笑って言った。
「風音さんもねお前の事気になってるみたいだから、試験が終わったら俺の家に来てくれないか?」
「いく!!!!!」
あたしは自分でもびっくりするぐらいの早さで答えた。
『そのお友達の子供ね、あなたと同い年で人間なの。』
こんなに近くにいたのか…
あたしは今、どうしてもママに会いたい。
どうしても…
どうしても言ってやりたい言葉がある。
「ふざけんな!」
そう言いたい。