前世と今世
「幸子…これを、」
小さな蕾のついた梅の枝を彼は持ってきた。
「〇〇、、これはいい蕾ですね。お忙しいのに…」
彼は耳まで真っ赤になりながら、
「時間があったんだよ」
と優しく呟きいていた。
慌てて来たのだろう、汗も流さず、仕事着のままできてくれた。優しい彼。
たまに、前世の夢を見る。私は、婚約者らしき人がいた。彼の名も、顔も、出てこない。思い出なのか何なのか…。うっすらでしか記憶がなく、何も調べようがないのである。
「お嬢様、旦那様がお待ちです。」
「わかったわ、下に降りるわ」
私はミラベル家の娘である。ミラベル家は子爵家である。
「イリィ、結婚が決まった。」
イリアだが、お父様からはイリィと愛称で呼ばれている。
「私のですか?まだ18ですが、」
「はぁ、これは仕方ないんだ」
父の様子を見る限り、きっとこれは譲れないものようだ。
「お相手は?」
「ベルベット家だ、」
魔法騎士団で有名なベルベット家…とお父様がどうお知り合いに…
「珍しい相手ですね」
お父様は慌てて顎髭を触る
ベルベット家は格上の公爵家、私達がどう足掻いても縁談は断れない。
「わかりました。」
お父様は苦い顔をしながら、ありがとうと何度も言われた。
「シェイエス・ベルベット…か」
噂では髪が明るめのオレンジで魔法と剣術が上手いと聞く。女性からの人気も多いとか…
なぜ私に縁談が…
私もお父様に似て苦い顔になる。




