第12話 赤目の魔人?
「姫様ー! 姫様どこですかー!」
遠くのほうでライラが私を呼ぶ声が聞こえてきます。
はぁ、休みの日ぐらいゆっくりと惰眠を貪っても……バサリと本が落ちる音が聞こえました。
長椅子に横になっていた私は、手を伸ばして本を拾い上げます。
ん? 本? 私は何をしていたのでしょう?
視線を上げると、大きな本棚があります。
辺りを見渡すと、二階にいるのでしょうか?
本棚と本が存在する巨大な空間を見下ろす場所にいるではないですか!
……あ、確か使われていなさそうな書庫に閉じ込められたのでした。
それで、この空間全体を明るくして綺麗にして、本を読んでいたのでした。
どうやら、私がいないとライラが探しにきてくれたようですが、よくここがわかりましたよね。
取り敢えず、手に持っていた本を棚に戻します。まだ途中までしか読めていませんが、仕方がありません。
長椅子から足を下ろそうとしたところで、ふわりと風を感じました。
締め切った空間に風?
不思議に思っていますと、近くにある床の魔法陣が光り、転移してくる者がいるではないですか!
そして、転移してきた者の金色の瞳と視線が合ってしまいました。
「ティア姫! ご無事ですか!」
はい。リヒトでした。
「問題ありません。とても有意義に本を沢山堪能できました。あと、なぜここに私がいると?」
「魔力探知では探せないティア姫を探すのに、上からのほうが早いかと思っただけです」
あ……私はなぜ、書庫にいるとわかったのかと思っただけなのですけど。
あと、なぜにお姫様抱っこされているのですか? 私は自分で歩けますよ?
「セレスティア様を閉じ込めたものは始末しておきましたので、ご安心ください。今後はこのようなことが起きないように私が案内させていただきますね」
そして笑顔で言うリヒトの言葉が、全く安心できない内容でした。
私を閉じ込めた人が突き止められていて、それも何かしらの処分が既に行われているではないですか!
それから、皇帝自ら案内とかは、ないです。絶対にないです。
リヒトは私を抱えたまま歩き、二階から一階を見渡せる手すりのところまできました。
あの? 私、靴を履いていないのですが?
「セレスティア様はご無事だ。今後の処分は追って伝える」
……処分? え? 今、誰に話しかけたのですか?
「あの? どういうことなのですか?」
「申し訳ございません。ティア姫の要望に応えるようにと命じていたのですが、一部の者が勝手な行動をしたようです。今後はこのようなことはないようにしますので、どうかお許しください」
……多分、皇帝がこういう態度だからじゃないのですか?
きっと、お前は何様だという感じなのだと思います。
「皇帝陛下が……」
「リヒトです」
「はぁ〜リヒト様が、私にへりくだるから悪いのだと思います。私は敗戦国の第六王女でしかありません」
「それはティア姫が本物の聖女だと理解できない愚か者が悪いのです。事前に通達をしていたにも関わらず、申し訳ございません」
あの……だから、私は聖女だと一言も言ったことはないのですけど?
あと、聖女ではないです。
「見ればわかるではないですか。もう古すぎて、起動することもなかった書庫の転移装置をいとも簡単に復活させるなど、誰ができるというのです」
「え? 壊れていたのですか?」
「壊れていたというよりも、どうやって動いていたのかすらわからない代物でした。ただ、広い書庫内を移動できる転移装置があるという古い記述が残るのみでしたね」
壊れていたなんて知らなかったよ。
ただ空気を綺麗にしたら、部屋全体が明るくなっただけ。
どうやら、私はやりすぎてしまったようです。
「姫様!」
「あ、ライラ」
「この城を壊しましょう。姫様ならできますよね!」
ライラが一階に繋がる階段を足早に上って来ながら叫んでいます。
「壊さないよ。ライラは何もされていない?」
「はい。姫様の悪口を言っていた者たちの顔を覚えましたので、あとは名前を聞き出そうと思います」
ライラ。名前を聞き出してどうしようとしているの?
何か仕返しを考えているとか、言わないわよね。
「侍女殿。後でその者たちを教えてください。因みに悪口とはどのようなものだったのかも記載しておいてください」
リヒトまで、そんなことを言うのですか?
私の悪口ね。まぁ、帝国からすれば、私は厄介者でしょうね。
でも、あれは悪口なのでしょうか?
「そう言えば、なぜ私は魔人だなんて呼ばれているのかしら?」
侍女長に案内されているときに、よく耳にした単語が『魔人』です。
こそこそと話しているようで、私に聞こえるように堂々と言っていたのです。
『あれが、テターニアの魔人か』
『気持ち悪い。あの血の色の瞳は人を食ったからだろう。流石、魔人ということか』
『あの魔人は、いったいどれほどの人の血肉を食らってきたのだろう』
とかですわね。最初、ホラーの話でもしているのかと思ってしまいました。
ですが、どうも同じような話を通り過ぎる人から聞き取れましたので、そういう噂が出回っているということなのでしょう。
「それは、貴女が最新兵器の魔導砲を破壊したからですよ」
あ、クオンも私を探す人員に混じっていたのですか。
階段を上ってくる姿が見えました。
しかし、最新兵器とは何のことでしょうか?
「私は何かを破壊したことはないと思うのですが?」
全く以て記憶にありません。そもそも私の中で戦場で、敵兵は殺さないと決めていましたもの。あくまでも支援をするために戦場にいたのですから。
だから、何かを壊したとかありえませんわ。
読んでいただきまして、ありがとうございます。




