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人形になった人間  作者: 妹明
桝井鷹也 香西朋華
9/28

終わりの笑顔

 10:39。2mを3分かけて移動したのち、俺は七三の様子を伺った。

しかし、七三はコンピュータから目を離さない。

(チッ……。しゃぁない。あんまり、やりたかなかったけど)

俺は、七三の足に電撃を流し込んだ。

「……ッ」

そうして、足を押さえた一瞬の隙に、首にもう一度電撃を御見舞してやり、

奴が気絶し倒れ音を立てる前にコンピュータを奪い取った。

俺は、七三の上に座ってコンピュータを使いだした。


楠城クスノキ!! おい、楠城!! 

 貴様、聞いているのか!!! 早く、こいつのスピードデータを……」

『ガンッ!! シュー。プシュー』

「ざぁんねぇーん。コンピュータとその周辺機器は壊しました」

「貴……様ぁ。何をしてくれているんだ!!」

「殺させるんだろ? アイツの意志とは無関係に。だったら、その縁を切れさせるだけだよ」

「桝……井、鷹也……様」



 10:42。俺はあることに気がついて叫んだ。

「おい! 朋華!! お前、今すぐコンピュータと内蔵されている無線の接続を切れ!!!」

そうだ、香西朋華は体とこのコンピュータが繋がっているんだ。

それを壊したということはこいつも死……。それに、さっきの女が口を動かした直後に

喋り出した件を見て、こいつには無線があると察した。

「何故……それを。コンピュータとの接続が分かっても、無線の事まで分かるはず……」

流石に無線の事はバレない自信があったらしく若干驚いた様子の香西朋華がそこにいた。

「それより、はやくしねぇとお前も一緒に死んじまうから切れ! これは、俺からの命令だ!」

「命……」


その時、白衣の女が突然後ろの木を思いっきり殴った。

「ふざけるな!! この子はワタシ以外の命令など聞かぬ!! 朋華、惑わされるな。

 こいつもお前を狙って信じ込ませようとしているただの裏切り者だ!!!」

「でも……」

「お母さんの言う事が聞けないって言うの!?」

「お母……さん?」

「しまっ……」

女は慌てて口を軽く押さえた。

「その通りです」

香西朋華は白衣の女を指差して後にこう続けた。

「崎守研究所所長。もと言い香西由音(カサイユキネ)、39歳は私の元となった香西朋華の実の母親です」

「え……!?」

俺が何より驚いたのは、実の母親が我が子の死体を使って実験を行ったことだった。

「たしかに私は所長には逆らえません。ですが今回のその命令を聞くことはできません」

「どういうこと? また電撃を受けたいの?」

そう言いながら、キレる母親(香西由音)

お前がした事の方がよっぽどお仕置きが必要の様な気がするんだが、俺は何も言わずその話を聞く。

「所長、分かって下さいよ」

一歩一歩じりじりと母親に近づく香西朋華。

それに応じて香西由音は一歩一歩退いて行く。

「朋華、命令よ。止まりなさい……」

「所長」

悲しそうな香西朋華の声。恐怖からか、こける香西由音。

「所長……」

「落ち着きなさい。止まりなさい。朋……」

「もう、私も……。親離れしなきゃいけないんだよ……。御母さん」

「やめ……!!!」

今更になって、命乞いを始めた。

だがその声が聞こえていないように香西朋華の手はすさまじいスピードで香西由音の胸を捉えた。

『グサッ……。ピチャピチャ』

どこか、悲しそうな顔をしながらいつもの真顔でさっきと同じように血縁者を殺ってしまった。

残りは10秒も経たないうちに始末した。

そんな奴に俺は何も声をかける事が出来なくなった。


「さ……。帰りましょうか」

血まみれで、血縁者を殺してしまって、苦しいはずなのに俺に心配させたくないのか微笑んで、香西朋華は言った。



それが香西朋華が初めて顔に出した感情だった。




「あ、ああ……」



その笑顔はとても綺麗で優しい。暖かい笑顔だった。

でもその笑顔を前にしても、















俺の心には安心と言う2文字が出てこなかった。


挿絵(By みてみん)


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