消えた物が戻る日は来るの?
10:06。正気に戻ったような声を出した。
「シリアルナンバー。12498号は無関係者の処理を開始致します」
まっすぐに俺の目を見て、そう言った。
「なんで……?」
俺はそう呟いて香西朋華を見てすぐ視界を下に落とした。
すると、赤いコードを持った例の白衣の女がこちらに向かってウィンクしている図を見た。
俺がそれを見た瞬間、香西朋華が一気にこちらに向かって攻撃を始めてきた。
俺は避けるのが精一杯で……なにも出来なかった。
彼女は本物のロボットに成り下がってしまった。
10:28。体力の限界を迎え、俺は香西朋華に殺されかかっていた。
「ハァ……。ハァ……。おま……えの。もく、てきは……なんだ?」
「目的とは」
「何の。ために……人を……殺す?」
「……機密情報の報告の許可を申請します」
3秒後。後ろで白衣の女の口が動いた直後、回答が返ってきた。
「申請が受理されました。では、報告します。我々、創造されし者は
あるひとつの目的達成のために作られてきました」
香西朋華はそのロボット喋りを続けた。
「それは、『世界最強の人間の創造』です」
「人間……創造?」
「絶対侵せぬ、神の領域を侵したのがこの創造されし者です」
「……は?」
疑問の単語を出しているが実際は、そんな疑問とかよりも寒気がした。
「神の領域――――――。それは、人間の蘇生。この世界の科学者たちは求めたのです。
『死んだものを蘇らせる』ことを。
ですが、只作るだけではいけません。使用目的がないと。そこで、科学者は考えました。
『この世で最も最強の兵器として使用すればよいのだ』と……」
「なんでだよ! ただの、愛玩用のロボットとして使用すればよかったのに……」
それもどうかとは思いつつ俺は言った。だが
「核兵器よりも安全に。地雷よりも正確に。
大砲よりも小さく。隕石よりも威力のある攻撃ができるのは、何ですか」
冷静にそう突き返した香西朋華はゆっくりと着実にこちらに向かってきた。
「!」
「それは、小型機械の直接攻撃です」
俺の目の前に来るのと同時にそう言い、思いっきり足を俺の体に乗っけた。
「ァグゥ……!」
「この実験もその『最強の道具』になる為に、より確実に、より早く仕留められるようにする為の実験なんですよ」
そう言う彼女はいつもの香西朋華だった。
「ホント……、なんで来たのですか。私だって、本当は鷹也様は殺したくなかった」
そう言って勢いつけて腕を振りかざした。その行先は俺の胸だった。
10:34。
(俺は……、死んだのか? 世界が真っ暗だ)
(……なんで、アイツは殺人機械になんか)
俺が意識を戻すと、香西朋華が俺の耳元でこう呟いた。
「動かないで下さい。全てが終わるまでは……」
「!!」
俺には奴がしようとしている事が何故だか一瞬で分かった。
止めにかかろうとしたけど、俺の体は理由もなしに動かなかった。
と言うか、俺は何故だか胸を貫かれたと思ったはずなのにその胸には何も傷が残っていなかった。
その代わりと言わんばかりに香西朋華の足は血にまみれていて
穴が空いているらしく、ドバドバと血を出しながらゆっくりと歩いていた。
香西朋華は白衣3人組に近づいて2m位の所まで行ったら何も言わず
空を切り、あの3人に襲いかかった。
善戦はするも、いつも止めの所で香西朋華の体の動きが鈍った。
理由は見てれば分かる。明らかに七三わけがコンピュータをいじってる。
なんで、暴走してるのか分かっていないようだ。顔がそう言ってる。
でも、動きを制御することは出来るらしく機械で動きをコントロールしてるらしい。
(ざけやがって……)
俺は、ポケットの中にあったスタンガン
(いや、誰かに止められた時用に持ってきただけです。別に問題を起こすこと大前提じゃないからね)
を持って、ゆっくり移動を始めた。