少女の正体
「婆ちゃぁん。いるー?」
「はいはい。いるよ」
「あのさ、あの子は?」
「あー。いるよ。今茶の間でテレビ見てる」
「あっそ。元気そうだった?」
「それがねー。昨日ご飯何がいいかって聞いたら『食事を摂らないので大丈夫』って言って
本当に食べないんだよ。でも、それ以外は至って普通だよ」
そう言いながら心配そうにリビングの方を婆ちゃんは見た。
「そう……なんだ」
それを聞いた瞬間、俺は思った。
アイツ、もしかして……人造人間じゃないか? と。
でも、流石にもう小学生は卒業した俺だ。そんな現実味のない話、すぐに有り得ないと消去された。
「あー。そうだ、タカチャン。わたしこれから、ちょっと用事があって
家留守にしなきゃいけないのよー。だから、あの子のお世話一時的に任せていい?」
「え゛? 俺がぁ?」
「そう。でも、夕方には帰ってくるからそれまで頼むね」
「わ……分かった」
元はと言えば俺が婆ちゃんに無理矢理頼んだんだしな。仕方ないかも。
と、言う訳で俺はあの子と一緒にいることになったわけだが。
『今日は、大変蒸し暑くなる予報で○○では32度まで―――――――』
「……」「……」
と、言った具合にテレビの音とたまに聞こえる風鈴の音。それと蝉の音とエアコンの音が
上手いぐらいに重なって謎のオーケストラを開いている状態だった。
互いに何も喋れない状況から口を開いたのは、意外にもあの子の方だった。
「有難うございます」
「え? 何が?」
「私をここに連れてきてくれた事です」
そう淡々と言うこの子の名前を聞いていなかったことに気がついて聞いてみた。
「別に礼なんていらないよ。それより、お前って名前ある?」
「名前……ですか」
「そ。ない?」
「それは、シリアルナンバーですか。それとも、この肉体自体の元の名ですか」
そう聞いてくる彼女の言ってる意味が俺には分からなかった。
シリアルナンバーって言ってる時点でこいつは人間と言う理から離れている奴だろうと理解した。
しかし、肉体の元の名とは一体どういう意味か。元? 今ついてる名前とは別なのか?
そう疑問に思い、俺は聞いてみた。
「なぁ、肉体の元の名ってどういう意味だ?」
「それは、まず、この肉体がどういうものかを知る所から始めなければいけませんが、よろしいですか」
「ああ。気になるから早く教えてくれ」
「では、お答えします」
「まずこの肉体は人工物ではありません。自然物です。中身は人工物ですけどね。
この肉体は言わば元・死体です。そこに、第三者が手を加えて新たな命として我々が生まれます。
簡単に言いますと、改造人間ですね」
「改造……」
予想が、当たってしまい正直戸惑った。その様子を無視して彼女はさらに説明を加える。
「ちなみに、本人と身内の許可を得ておりますので、そこは御心配なさらずに」
心配なさらずって、それを聞いてもあんまいい気はしないんだけど……。
「そして、我々の様な存在を科学者は創造されし者と呼んでおります」
それに関して彼女は何も思わないらしく、淡々と説明した。
「では、もう一度御伺いします。シリアルナンバーですか。それともこの肉体自体の元の名ですか」
「……元の名で」
なんか、シリアルナンバーを聞いたら今の話を全て信じなければならないような気がして、
それは怖くてとてもじゃないけど、聞けなかった。
「そうですか。では、申し上げます。
自己紹介、遅れて誠に申し訳ございません。私の名前は香西朋華と、申します」
そう言って軽く会釈をしてきた香西朋華は笑うこともなく相変わらずの無表情だった。
「あ、俺も名前聞いたんだし名乗っとかなくっちゃな。俺は桝井鷹也。よろしくな」
「桝井……鷹也様」
そう、本当のロボットのように呟くとそれっきり一切喋らなくなった。
また、沈黙。こいつ、本当に必要最低限の事しか喋らねぇな。
(言わば元・死体です)
(簡単に言いますと、改造人間ですね)
(そして、我々の様な存在を科学者たちは創造されし者と呼んでおります)
さっきの香西朋華の話が頭を何度もグルグル回ってる。
あんな話。信じられるか? ってか、あれは本当の情報なのか?
だとしたら、あいつはどうして産みだされたんだ?
今度は疑問が頭の中を旋回する。
その、頭のモヤモヤを消すために俺は香西朋華に質問した。
「なぁ。お前みたいな奴って他にも何体か存在するのか?」
「……」
――――しない。と、言ってくれ! なんとなくそう祈っていた。
そしたら、回答はそれどころの問題ではなかった。
「成功したのは、私一体だけです」
「……じゃぁ、成功しなかったに部類分けされる奴は何人いるんだ?」
「12,497体になります」
いちまん……? じゃぁ、この人形が出来るまで日本の一割の人間が犠牲になったのか?
本当に、それは許可のもとでやられた行為か? 冗談抜きでか?
だとしたら、世の中には何人物好きがいる計算になるんだ??
俺は何故だか若干の恐怖を抱いていた。
それに追い打ちをかけるように、香西朋華はこう続けた。
「ですが、それはあくまで私が生まれるまでの数ですので今現在の正確な情報とは大分
異なっているでしょうけど」
一体成功させただけじゃ飽き足らず、まだ作り続けてる。そう言う表現まで使いだしてきた。
だけどそう冷静に言った香西朋華の無表情がどことなく、怖く見えた。
「なぁ、そんなにも大量の犠牲を払ってまでお前の所の親玉は一体何を……?」
「犠牲ではありません。あくまでも、死体を使用した実験ですので」
そう言って言い逃れをしようとする奴に俺は食い下がった。
「いや。だから、質問に……!!」
「その質問は私の方からお答えすることはできません」
「なんで……だよ」
冷や汗が首筋を通って下へまっすぐに落ちていく。なんでだか、鳥肌が全身に立つ。
その全ての原因は俺の真向かいに座っている少女だった。
「……その質問には、答えられません」
ただ、そう一言言っただけなのに、俺には何と表現すればいいのか分からないが
兎に角、寒気のするオーラを彼女は出し続けてた。
何にも事情を知らない風が風鈴を揺らした。
こんにちはぁ~☆妹明ですヽ(´∇`*)/
なんか、話が大分変な方向へ向かって行ってるような……?
ちょっと、いや、かなり分かりづらくなっているようにも……??
まぁ、それはそれとして。
気まぐれって言ってる割に結構統一感があるのですが、
もう面倒になってきたので、このまま統一性のある感じで進めていきます!
(宣言文になってるのも気にしちゃいけないw)
ま、そーいう訳でこれからも話は続いて行くのでよろしくお願いします♪