逆上
驚いて後ろを振り返ると、次の瞬間には非常階段と一般通路の境界線となっていた分厚い壁と鉄のドアが、一瞬にして吹き飛んでいた。
「……。エリナお姉様」
「ハァー。ハァー……。聖華。どういうつもりですのぉ?」
怒った顔、声。それはまるで人間のそれの様なものだった。それ以上に俺は別のものに目が向いた。
「お前……、その手に握ってるもの。なんだよ」
その問いに、神上エリナは睨みつける様に目を細めてこちらに視線を寄せて答えた。体力を削られたのか、肩で息をしている。
その後に言葉をこう添えた。
「何を言ってますのぉ? 貴方はこれを見て何だか分かんないですかぁ?」
「違う。俺が聞きたいのは、どういう経路でお前の手にそれが握られているのかって聞いてんだよ」
「ああ、そっちですのぉ。倒したから、握っていますのぉ。それ以外に理由が必要ですかぁ?」
そう言って、神上エリナは手を肩の高さまで持っていく。それと同時に握られていたものも上に登っていく。
確信がなかったから、それ。なんて表現してたけど。今なら堂々と言える。
「おい、お前。朋華に何したんだ……?」
「言う事を聞かない子供に、躾をして何が悪いんですのぉ? 貴方もやられますぅ?」
そう言って神上エリナは笑ってるけど息切れしていて立っているのもままならないと言った状態だった。
「お姉様……」
「あたくしは、こんな……男に、折れませんわっ!!!」
神上エリナが何か攻撃を仕掛けようと足を動かそうとした時だった。
急に神上エリナがこけたのだ。機械なんだ。本来こけるなどと言うのは有り得ない。それを現実のものにしたのは香西朋華だった。
「誰が、許可したんですか……」
「なっ……!」
「私の許可なしに、そんな血まみれの汚れた手で……私の大切な人に触んなっ!!!」