無情の決意
目を見開いて息を切らしながら、肩を抱き小さく震えながら自分に起きていることを理解しようとしているのか、その感情に対する物をリセットさせようとしているのか。兎に角、暫くそのばに彼女はひれ伏していた。
「ひとつ。聞く」
ぽつりと室式聖華は呟く。
「何だ」
「わたし。今から、やり直す。できる」
多分、『今からでも、わたしはやり直すことが出来るの?』と言っているんだろう。感情が一切入っていないから、分かりづらかったけど。
「できるよ。きっと」
「本当」
「ホント」
「わたし、知る。たい…。言葉、もっと。貴方……喋るたい」
明確な意思表示。それがなんでだか、嬉しかった。
「わたし……貴方。側…、つく」
「! いいのか。それで」
「構う。ない」
「お前は、ここを抜け出す必要があるんだぞ?」
「……」
「お前は、大切な所有者を裏切らなければならないんだぞ。それでもか」
「……」
暫く悩んで、最終的に重々しく首を縦にゆっくり動かした。
「そんなことっ! 許しませんわっ!!!」
急に後ろの方から怒気の混ざった叫び声が聞こえた。
驚いて後ろを振り返ると、次の瞬間には非常階段と一般通路の境界線となっていた分厚い壁と鉄のドアが、一瞬にして吹き飛んでいた。
「……。エリナお姉様」
「ハァー。ハァー……。聖華。どういうつもりですのぉ?」
怒った顔、声。それはまるで人間のそれの様なものだった。