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始まる戦い
「それだよ! ワタシが欲しかったのは……! 自然な感情だっ!!」
「こっち」
俺の腕を掴んで、走り出した。そんなに速くない。俺の走るスピードくらいだった。
「逃がすんじゃない! 追え!!」
男の叫び。醜い声が響き渡る。
非常階段を駆け下り、香西朋華はとある階で俺だけを外に閉め出した。
「おい! 何してんだっ! 開けろっ!!」
ガンガンと分厚い鉄のドアを叩き続ける。
香西朋華の回答は一向に帰って来ない。
そんな時だった。
ドアの向こうから、声がした。香西朋華の声じゃない。別の声が。
「もう無駄ですのぉー。大人しくしないと、所有者が痺れを切らしちゃうじゃないですかぁ~」
思わずドアに耳を当てて聞いてしまう。あいつら、もう追いついたのか……?
その時後ろから、カツンと靴と地面の当たり合う音がする。背中が一気にヒヤっとする。全身の血がサーっと引いて行く。後ろを振り返ることすらできない。
俺は怯えきっていた。