香西由音と所有者の裏
「鷹也……様」
「朋華!?」
「!」
急に意識を取り戻した香西朋華がとぎれとぎれに話しだした。でもそれは明らかに喋るのはほぼ不可能な状態で、無理矢理にでも声を出しているような声だった。
「鷹也様…、その方が……話している。事は…すべて、事実です。香西由音様…、お母さんは。私……。朋華様を。旦那様を……、復活させて…。もう一度…幸せな、、、か。てい…を」
その時、ガシャンと音を立てて、手首と足首に嵌められてた枷が突然外れた。
意識を保つこともままならないその体は、見る見るうちに地面に吸い込まれるように、倒れて行こうとする。
それを見て、無意識に体が動く。ふっと我に返ると、涙が頬を伝い、華奢な少女の体を抱えている自分がそこにいた。
「鷹也様……」
「大丈夫。大丈夫だから……もう喋るな」
手が震えて、憎しみが段々表に出てくる。折れるくらい、歯を食いしばる。
勢いよく振りかえる。優しく微笑みかけるあのクソジジイ。
アイツのせいで、コイツは。コイツの家族は。この計画に加担させられた全ての実験台は……。
「お前のせいかっ!!!? 全部、全部!!! お前のせいか!!!」
「ふ……。何が悪い?」
急に、悪者の様なセリフを吐き捨てる奴。
「許可を貰った下での行為。治外法権の世界。何もかもが、許されているんだよっ! この実験が成功した暁には、ワタシがこの世界の戦争を自由に動かせる!! その為に誰が傷つこうが、誰が泣こうが知った事かっ!! ワタシは、世界一の技術開発者に……」
「……れよ」
「なにか、言ったかね?」
「黙れよ…。黙れよ。黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」
「君の言う事を聞く権利などワタシには無いんだがね」
「黙れってんだよ!!!!」
壁に立てかけてある矛を勢いよく掴もうとしたら、
「辞めて…下さいませ。ココは、私が……全部」
必死こいて、足首を掴んでくる香西朋華。そして、ゆらりゆらりと立ち上がった。息を切らしながら、腹を抱えて立った。
「鷹也様、お気遣いありがとうございました……。私はもう大丈夫です。必要最低限まで、回復致しました…」
そう言ってこそいるが、客観的に見てもどう考えても回復なんてものはしてなかった。
「おい……」
「いいから。早く逃げるんだよ! ここから」
そう言った香西朋華の顔には、怒りと焦りが入り交ざった何とも言えない表情をしていた。
それを見て俺は驚き、ジジイは目を見開いて、笑った。