誘拐された少女
「ふぁ…? あれ、今何時?」
携帯電話をパカッと開ける。すると、時刻は12:15を回っていた。いつもなら、首を締めながら叩き起こす香西朋華の顔が見えるはずなのに、今日はそれは見えない。
不信に思いながらリビングに降りていく。リビングには誰もいない…。メモ書きが一枚置いてあるだけ。これは、王道手口来たなと思いつつ、二つ折りにされたその紙を広げる。
『香西朋華は貰いましたのぉ。早くしないと廃棄処分しちゃいますわよぉ? 崎守研究所でお待ちしてますのぉ』
丸い字でそう書いてあった。この喋り方、神上エリナのものだと見て間違いないだろう。
俺は、また取り返しに行かないといけないらしい。
弱く役に立たない俺が、そこへ行ってどうこうなるとは思わないが、行かないで部屋の隅で震えて泣くほど、俺は弱くなりたくなくって。俺は家を出て行った。
「桝井鷹也が動きましたのぉ」
「そうか」
「鷹也様……どうして」
「残念だったな。12,948号。どうやらお前の所有者はお前を助けに来るようだ」
「……」
「まぁ、結局二人とも殺されるんだがな!」
部屋中に中年男性の醜い笑い声が響き渡る――――――――――――。