表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人形になった人間  作者: 妹明
神上エリナ 室式聖華
18/28

世間話と神妙な話

 「あっちの……ロボットの朋華の生まれた理由はもうきいたよね?」

「ああ。本人の口から直接」

「ん。そう、あの子はわたしの生まれ変わりとして生み出された。でも、あの子はわたしじゃない。感情も性格も何もない。サイボークみたいな存在として生まれてきた」

劇の役者の様な語り(身振りとかは特にない)で、香西朋華は続ける。

「……あ、少し誤りがあったね。感情がないって言うのは、合ってるけど、間違ってる。感情の大元のデータは彼女の中に入ってるからさ。だけど、あの子にはその感情表現の仕方がデータに入ってないから」

「!」

「だって、そうじゃなきゃ。あの時みたいに、笑わないでしょ?」

「そ、れは……」

香西朋華はにっこりと笑い話を続けた。

「話を戻すね。わたしとは全く別の存在になってしまった事が、あの子にとってはとても辛かったみたい。自分の作られた目的にそぐわない事が……とっても嫌だったみたいなんだ。そんなこと。気に病むことないのにね。でもあの子たちにとって一番大切なのは、創った者の期待にそう物になる事みたいなんだ」

(私は香西朋華様の代わり。なのに、私は香西朋華様にはなれなかった。まるで別の……。香西朋華様を元に作った、ただの人形(ロボット)になっただけでした)

そう呟く、悲しそうな香西朋華の顔が一瞬頭の中をよぎっていった。

「思い当たる節。あるんだね。やっぱり」

「あ、ああ……」

「きっと、あのまま放っておいたら、あの子、自分から処分(スクラップ)を申し出ると思う。崎守研究所に行って、やってもらうと思うんだ。それが無理でも、自分の中枢を壊すことぐらい出来ると思う。そんなの、絶対にダメだよ! そう思うでしょ?」

目に涙を浮かばせながら、香西朋華は聞いてくる。そんな顔、されなくっても答えは決まってる。

「思う」

すると、安心したような顔をして香西朋華はもう一度口を開いた。

「よかった。そう思ってくれるなら、君に頼める」

「なにを?」

「あの子に……、名前をつけて。『香西朋華』じゃない名前を」

「え……?」

「きっと、香西朋華のままだったら、いつまでもわたしやお母さんに縛られ続けちゃう。その必要はもうないんだよって。貴方は、貴方の道を自由に歩み続けていいんだよって。分かって欲しいの。だから!」

「……分かったよ。考えておく」

「うん!」

その顔は、まるで幼い子供のようだった。


 「ところでさ」

「なに?」

俺が声をかけるとキョトンとした顔でこちらを見てきた。人間っぽい。正直可愛かった。

「お前って、ずっと朋華の傍にいるの?」

「ん。そうだよ」

「守護霊みたいに?」

「そーんなもんかなぁ?」

うーん、と頭にハテナを浮かべながら言った。

「でも、いつまでも成仏しねぇとお前のかーちゃん心配すんじゃねぇの?」

「簡単に言ってくれるよ。わたしの体とこころ。常に一つだったものなんだよ? ひとつのものをふたつに分けるのって結構大変なんだからねぇ!?」

怒ったように怒鳴りつけてくる。と言っても怒気の入ってない、悪戯っぽい感じの声だけど。

「そりゃわるい」

「鷹也君さぁ、私の事小さい子供とでも勘違いしてない?」

「し、してないよっ!?」

「ホントにぃ?」

「本当だってば」

「……。信じらんない」

「えー…」

「冗談だよ。冗談♪」

悪戯っぽく笑うと、香西朋華は立ち上がって大きく背伸びをした。

「さってと! もう時間かな?」

「時間?」

「朝だよ。早く起きないと、朋華に首絞められちゃうよ♪」

「なんで知ってるの?」

「トーゼンじゃん! ずっと見てたってさっき言ったでしょ?」

「あ…。そか」

「そう言う事! じゃ、まったねー♪ 鷹也君!!」

勢いよくブンブンと手を左右に振りながら、香西朋華はどんどん遠くなっていく。

そして、米粒くらいの大きさに見えるくらいになって、手を振るのをやめた香西朋華は悲しそうな顔をして、何かを呟いた。なんて言っていたのかは聞こえなかった。

「また……?」

その言葉に引っかかりを覚えた瞬間に、目が覚めた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ