日常から非日常へ
香西朋華。もと言い、創造されし者12,498体目は、娘の復活を願う母親によって創り出された、簡単に言えば死体から作られたロボットだ。
脳の部分に当たる機械の『核』のデータに、『感情』が入れられていないらしい。
だが、奴は一度だけ笑った事がある。
何故だかは分からない。しかし、それ以来香西朋華は一度も笑うどころか感情を表に出した事はなかった。
そして、先に言った目的を隠すために作られた別の目的は『最強の小型兵器を作る』事だった。
死人を蘇れせる為、そして、最強の兵器を作りだす為に作られた唯一の成功品がこの香西朋華だ。
「どうぞ」
そう言い、音も立てずに目の前に朝飯を置く。期待とか、そう言う感情はやはり一切ない。
「さ、サンキュー。……い、いただきます」
小さく呟いた。そして、気まずいがチビチビと飯を食う。
香西朋華はまばたきもせずに、こちらをまじまじと見てくる。香西朋華は飯を食べる必要がない。
機械だから当然なのだが、まわりの皮とかはただの人間のそれと何ら変わりない。
腐らせないように機械で調整をしているようで、時々、サプリメントを一気に5粒ほど飲んで、香西朋華の飯は終了する。
「ごちそうさま。上手かったぜ」
「有難うございます」
皿がキッチンに運ばれると同時に、香西朋華は皿洗いを開始する。
ただの家政婦みたいになっているが、これでも立派な地雷よりも正確でしかも、危険な機械だ。
なんでそんなのが、うちにいるかと言うと、もうすぐ8月ってころに拾ってきた。
まぁ色々あったんだけど、それを話すと長いし説明しづらいので中略。
「そういやぁさぁ」
「はい。なんですか」
「あの創造されし者の量産計画ってどうなんったんだ?」
ふっと、香西朋華の動きが止まった。そして、カクカクとロボットのような(ロボットだけど)動きでこちらを向いた。
「まさか、またそれを止める為に無茶なさるおつもりですか」
「いや。何となぁく聞いただけ。別に何にも考えてないけどさ」
「左様ですか」
それでも回答しようとはしなかった。が、こう言っていた。
「楠城様、そして十河島様により、崎守研究所は継続中です」
多分二人とも創造されし者の研究員だ。少なくとも楠城はそうだ。
俺の長期休暇はこの陰謀によりまた潰されてしまった。
「第一次創造されし者とその所有者の確保を、お前ら第二次創造されし者に命じる。よいな?」
「かしこまりましたのぉ。でも、ひとつお聞きしても良くって?」
「なんだ」
「今更第一次に何の必要性があると言いますのぉ? 彼女の全てを遥かに凌駕する第二次が出来上がっておりますのにぃ。それに、所有者まで」
「あの二人には実験する価値がある。ただそれだけだ」
「……釈然としませんわぁ。ですが、了解いたしましたのぉ。行きますわよ。聖華」
「……」
全ては、我が主の為に……。