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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: Laica
第6章 恋を学習する体温

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第67話 守る

挿絵(By みてみん)

夕方の帰り道。


空は曇っている。


風が冷たい。


並んで歩く。


「気温が低下しています」


「体調管理を推奨します」


「もう平気だって」


軽く返す。


彼女は数秒こちらを見る。


それ以上は言わない。


前から声。


「おい」


足が止まる。


三人。


制服じゃない。


距離が近い。


「金、持ってる?」


「ないよ」


「少しくらいあるだろ」


笑っている。


そのとき。


彼女が一歩前に出る。


僕との位置が入れ替わる。


「彼に接近しないでください」


静か。


男が近づく。


「なにそれ」


手が伸びる。


次の瞬間。


彼女が動く。


速い。


手首を払う。


強くない。


だが止まる。


男が顔をしかめる。


「……は?」


空気が変わる。


彼女はそのまま動かない。


距離を保つ。


「警告します」


短い。


「これ以上の接近は危険です」


沈黙。


男たちは顔を見合わせる。


「めんどくせ」


「行こうぜ」


足音が遠ざかる。


静かになる。


風の音。


僕は息を吐く。


「……びっくりした」


彼女は周囲を見る。


「危険はありません」


それだけ。


僕は言う。


「今の」


少し間。


「守ったのか」


彼女はすぐには答えない。


数秒。


「はい」


短い。


僕は笑う。


「そんなことできたんだな」


「対応は可能です」


簡潔。


間が落ちる。


僕は続ける。


「なんでだよ」


彼女がこちらを見る。


「優先度が上昇しました」


それだけ言う。


理由は言わない。


沈黙。


僕は頷く。


「……そっか」


歩き出す。


彼女も並ぶ。


少しして。


彼女が言う。


「あなたを守ることは」


一瞬、止まる。


「優先度が高い状態です」


言い切らない。


そのまま前を見る。


夕方の道。


雲の隙間から光が落ちる。


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