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同じ記憶を持つ彼女が二人いる世界で、僕は本物を選べない  作者: Laica
第6章 恋を学習する体温

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第65話 さみしい

挿絵(By みてみん)

家に帰る。


夜は深い。


玄関の灯り。


「ただいま」


「おかえりなさい」


リビング。


ソファに座る。


体が少し重い。


一日が長かった。


遊園地。


観覧車。


夜景。


彼女はキッチンへ向かう。


「水を用意します」


「ありがとう」


コップを受け取る。


冷たい。


喉が楽になる。


彼女は見ている。


「質問があります」


「なに」


コップを置く。


彼女は少し間を置く。


「今日は」


「楽しい一日でした」


「そうだな」


うなずく。


「しかし」


そこで止まる。


言葉を選ぶように。


「現在」


「内部処理に変化があります」


「どんな」


短く聞く。


数秒。


「あなたと過ごした時間は」


「優先度が高い状態でした」


「終了後」


間。


「処理対象が減少します」


「……空白になります」


僕は何も言わない。


彼女が続ける。


「時間の進行が遅く感じられます」


さらに間。


「この状態は」


少しだけ遅れる。


「さみしい」


言い切る。


静かになる。


僕は小さく息を吐く。


「人間と同じだな」


一度だけ。


彼女は考える。


「同じですか」


「たぶん」


それ以上は説明しない。


僕は立ち上がる。


「また出かければいい」


「また遊べばいい」


簡単な答え。


彼女は僕を見る。


数秒。


「はい」


それだけ。


僕はあくびをする。


「もう寝る」


「おやすみ」


「おやすみなさい」


階段を上がる。


ドアを閉める。


音が消える。


リビング。


彼女は動かない。


そのまま。


しばらく。


窓の外を見る。


街の灯り。


変わらない。


小さく、


「記録」


それだけ言う。


少し間。


何も続かない。


処理は動いている。


しかし、


埋まらない。


本日分ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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